<ヒッグス粒子>宇宙の進化、解明に期待
毎日新聞 7月5日(木)1時23分配信


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標準理論が示す質量誕生の仕組み
 ヒッグス粒子の存在確認は、どんな意味を持つのだろうか。

 現代の素粒子物理学は、18種類の素粒子の存在を前提として考案された「標準理論」が基本になっており、60年代に構築された。ヒッグス粒子もその一つだが、これらの素粒子の中で唯一、実験で見つかっていなかった。ヒッグス粒子が見つかれば標準理論は完全なものとなる。

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 素粒子の数を予測した「小林・益川理論」で08年のノーベル物理学賞を受賞した名古屋大素粒子宇宙起源研究機構長の益川敏英・京都産業大教授(72)は「ヒッグス粒子周辺の現象やその振る舞いなどについて、科学者の予想を超える部分があるはずだ。そうした検証を続けて、今回の発見を一つのステップに新しい素粒子物理学が切り開かれることを期待したい」と話した。

 宇宙の誕生や進化の解明の手がかりになると期待を寄せる研究者もいる。東大で誕生初期の宇宙の様子を研究している村山斉(ひとし)・カブリ数物連携宇宙研究機構長は「何もないと思われていた宇宙空間が、ヒッグス粒子をはじめとするいろいろなもので満ちているということがこれではっきりしてきた。ヒッグス粒子は宇宙の始まりと関係していると同時に、実は宇宙の終わりや宇宙の運命にも関係している」と指摘する。これまでの研究で、宇宙の96%は正体不明の暗黒エネルギーと暗黒物質で占められていることが分かっている。一方、宇宙が加速しながら膨張していることが判明し、この成果は11年のノーベル物理学賞に輝いた。

 村山さんは「膨張を加速させている正体は、真空のエネルギーとされている。ヒッグス粒子は真空のエネルギーの一部になっているため、ヒッグス粒子を理解することが、宇宙の膨張が加速する謎にせまる手がかりとなる。宇宙は膨張の加速が進むと終わるのか。宇宙の運命を考える重要な鍵だ」と夢を膨らませた。

最終更新:7月5日(木)1時43分

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