プラチナバンド争奪戦決着、スマホ選びは“つながること”がカギの時代に
読売新聞(ヨミウリオンライン) 7月5日(木)10時27分配信


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スマートフォンのつながりやすさ・切れにくさに関する実測調査結果(ICT総研による)
 多機能携帯電話「スマートフォン」をストレスなく、快適に使うための条件は何か? これまでは端末の基本性能ばかり注目されてきたが、今夏以降はそれに加え、“通信サービスの品質”を重視する流れも広がりそうだ。

 携帯端末の基本性能向上で、いまやどの機種も機敏に動くようになり、“高性能=最良”とは必ずしもいえなくなってきた。そのため今夏発売されるスマートフォンは、おサイフケータイやワンセグ機能といった国内仕様を追加したり、個性的デザインをウリにするなど選択の幅を広げている。その一方、スマートフォンの急激な普及により、携帯キャリア各社では慢性的な電波の混雑状態が続いている。

 この現状を踏まえ、キャリア各社は通信サービスを改善する様々な取り組みを実施している。中でも最近の話題といえば、700~900MHz帯、俗に「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯の争奪戦だろう。2月29日に、キャリア3社の中で唯一プラチナバンドを持っていなかったソフトバンクモバイルが、念願の900MHz帯を獲得。6月27日には、700MHz帯をNTTドコモ、KDDI(au)、イー・アクセス(イー・モバイル)の3社で分け合う形で決着した。

 この結果、すでに800MHz帯での通信サービスを運用するNTTドコモとKDDIは、次世代高速通信サービス用にさらに700MHzの周波通帯域を確保したことになり、通信サービスの向上や次世代高速通信サービスへの取り組みを加速させる見込みだ。

 なぜ、携帯電話のキャリアは、プラチナバンドの獲得にこだわるのか。2つの理由がある。1つはプラチナバンド特有の電波特性。700MHzから900MHz帯は、1.7GHz/2GHz帯などの周波数帯域と比べ、遠くまで電波が届きやすい。このため、1つの基地局ごとのカバーエリアが広く、室内での通信状況も改善される。

 また障害物に強いのも、この周波数帯の特徴だ。ビルなどの高い建物(障害物)にぶつかっても、障害物を回り込む特性があり、ビルの影でも電波が届きやすいとされる。広く死角の少ないエリアを得て、より安定した通信サービスを目指そうというわけだ。

■混雑緩和の取り組みがキャリアの急務

 もう1つの理由は、増加するデータ通信量への対応。総務省では「我が国の移動通信トラヒックの現状(平成24年3月分)」において、わずか1年間で国内のデータ通信量が2.2倍に増加したと発表している。急増するデータ通信需要に応えるためにも、利用できる電波の周波数帯域を獲得していく必要がある。

 プラチナバンドの獲得競争を繰り広げる中で、キャリア各社は切迫しつつある現状の通信サービスへの対策にも力を入れている。NTTドコモでは、販売するスマートフォンの大半を、次世代高速通信LTE=Xi(クロッシィ)対応とした。ソフトバンクモバイルは、7月25日から900MHz帯の通信サービスをスタートさせる予定で、主力となるiPhone 4Sなどへの通信サービス向上を図る。

 KDDI(au)の動きも活発だ。自ら「つながる自由。au」というキャッチコピーを掲げ、生活圏の通信品質強化に取り組んでいる。その1つが、新800MHz帯への移行だろう。auでは5年前から取り組んできたが、基地局の整備がほぼ整い、7月中に新800MHz帯への完全移行を目指している。これで同社の通信サービス(3G)は、新800MHzと2GHz帯を併用するマルチバンド体制となる。

 同社によると、新800MHz帯では基地局数を大幅に増やし、旧800MHz帯運用時よりカバーエリアを2割拡大させたという。さらに移動時の通信品質に大きく影響するハンドオーバー性能(接続する基地局を切り替える技術のこと)も最適化。今年4月からは基地局の混雑緩和、分散利用を促進する新技術「EV-DO Advanced」も導入している。

 この技術により、混雑している基地局ではなく、比較的空いている基地局へとユーザーの接続先を振り分けられるようになる。同社では電波の分散利用によって、通信速度が体感で2倍程度速くなると説明している。

■通信サービスの品質に優れるキャリアは?

 各キャリアが目指している、つながりやすく、切れにくい高品質の通信サービス。今後の対策はさておき、現状ではどのキャリアに分があるのか。ICT総研が5月28日に発表した「スマートフォン つながりやすさ・切れにくさ実測調査」によると、auがNTTドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルを抑えて、12の調査項目の内、8つで1位の接続率を獲得している(内3つは同率1位)。

 この実測調査は、都内やその近郊でスマートフォンの音声通話とデータ通信に絞り、実際に近い利用状況をチェックしたもの。スマートフォンを利用することが多い、移動中や喫茶店内などの場所に絞り、キャリア各社のカバーエリアと電波状況について、音声通話とデータ通信の両面から調査している。

 調査結果の中で、auは電車移動中の音声通話テスト全てで1位を獲得。データ通信のテストでは、山手線内のみ3位となったが、近郊3路線では2位、新幹線では1位。高速道路移動中のテストは、データ通信のテストで首都高速と東北道/中央道/東名で1位に。またビル地下の喫茶店でも、音声通話とデータ通信ともに1位となるなど、安定した結果を示した。通信サービスの品質向上には、状況に応じたきめ細かい対策が必要とされる。現状では、auの取り組みが功を奏し、好結果につながったようだ。

 もっとも、“つながりやすさ”を巡る争いには終わりはない。700MHz帯の運用が始まり、次世代高速通信サービスが本格化するのは2015年になる。それまでには、データ通信量は20倍以上になるという予測がある。足下はもちろん、将来にわたって安定した通信サービスを提供する姿勢が、キャリア各社に一層求められていきそうだ。

最終更新:7月5日(木)10時27分

そりゃ繋がらなければ何の為の携帯電話なのという気がするんだけど…・。

暗黒の稲妻