中国、北と広く軍事取引 ミサイル製造物質や発射台車両、輸出
産経新聞 6月14日(木)7時55分配信

拡大写真
中国と朝鮮(写真:産経新聞)
 ■国連制裁決議、骨抜き

 中国が昨年、長距離弾道ミサイルの発射台車両や、ミサイル製造に使われる物質バナジウム2トンを北朝鮮に輸出するなど広範囲な軍用物資取引に関わっていたことが13日、産経新聞が入手した6カ国協議参加国当局作成の報告書で分かった。北朝鮮への大量破壊兵器関連物資の輸出などを禁じた国連安全保障理事会制裁決議が、中国の関与で骨抜きになっている実態が裏付けられた。

 報告書によると、北朝鮮でミサイル開発を担う第2経済委員会に所属し、平壌に本社のある企業「朝鮮鉱業開発貿易会社」がダミー会社を通じて昨年8月、長距離弾道ミサイルの発射台に転用可能な特殊大型車両4台を中国から輸入した。

 また、複数の日本政府関係者によると、特殊車両は中国国有企業「中国航天科工集団」の子会社が開発したもので、第5管区海上保安本部が昨年10月3日、北朝鮮から大阪港に入港したカンボジア船籍の貨物船を立ち入り検査したところ、中国側からの輸出を示す記録が見つかったという。

 特殊車両の輸出以外にも報告書によれば、同じく平壌に本社のある北朝鮮企業「朝鮮嶺峰総合会社」が同年5月、ミサイル製造に利用できるバナジウム約2トンを中国から輸入。バナジウムはミサイルの合金などを製造する際、強度を高めるために加えられるレアメタル。同社は中東への兵器輸出も指摘されている。

 ◆シリア輸出も介在

 報告書は、大量破壊兵器の開発を担う北朝鮮第2自然科学院傘下の企業「朝鮮檀君(タングン)貿易会社」が2009年11月、軍用防護服約1万4千着を中国・大連港経由でシリアに輸出しようとしていたことも明らかにしている。輸送途中のギリシャで押収され、発覚した。

 北朝鮮の3社はいずれも北朝鮮による09年4月のミサイル発射や同年5月の核実験を受け、国連安保理の北朝鮮制裁委員会が資産凍結対象に指定した団体だ。

 金融取引でも、制裁対象の北朝鮮の金融機関「端川商業銀行」が中国の主要都市にダミー会社を設立し、同社名義で口座を開設。北朝鮮の軍需企業の資金決済に充てているという。同行のダミー会社の一つで制裁対象でもある「香港エレクトロニクス」は、過去にイランへの武器輸出代金の入金に海外の偽装口座を用いていた実態が判明している。

 いずれも、中国当局の黙認や中国企業の関与なしには難しく、報告書は中国が北朝鮮の制裁逃れの温床になっている点を強調している。

 さらに、中朝の貿易実態に詳しい韓国当局筋によれば、北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射を強行した今年4月13日には、中国丹東市の保税地域から北朝鮮に向け四輪駆動車約100台が輸出されていた。

 四駆車は民生用を装っていたが、北朝鮮の国防委員会傘下とされる「朝鮮黎明貿易」など軍需関連企業が関与していたことから中国当局は軍需物資と認識、書類処理上も特別扱いだったという。北朝鮮側で後部を銃座などに改造し部隊に送られたとみられる。

 ◆日米韓、公表せず

 一方、中国による北朝鮮へのミサイル発射台車両の輸出を昨年10月に把握していた日本政府は、米国、韓国とも情報を共有していながら、公表していなかった。

 外務省幹部は13日、「ただちに安保理決議違反とはいえないと判断した。トラックを輸出しても北朝鮮が改造した可能性もある」と釈明。別の政府高官は「この事実を国連にすぐ報告しても意味がない。いかにカードとして使うかが問題だ」と述べた。

 発射台車両は4月15日に行われた北朝鮮の軍事パレードで公開されたが、パネッタ米国防長官が同月19日の下院公聴会で「中国の協力があったと確信している」と証言していた。

 弾道ミサイル物資の対北輸出は国連安保理制裁決議に違反している。ただ、決議は国連の全加盟国に履行を義務づけているものの、各国の自主性に委ねられ、不履行国に対する罰則規定がないため、実効性を疑問視する声が上がっていた。

 【用語解説 北朝鮮制裁決議】 北朝鮮の弾道ミサイル発射と核実験を受け、国連安保理で2006年10月と09年6月に採択された。06年に大量破壊兵器関連物資と大型通常兵器、09年に小型武器を除く「すべての武器および関連物資」の輸出入を禁止。09年の決議で設置が決まった専門家パネルが制裁の履行状況について報告書を作成するが、初回10年の違反実態部分は中国が反対し未公表。11年分の報告書は今年5月に作成され、取り扱いが協議されている。

最終更新:6月14日(木)10時5分

ズブズブの関係なんだね。

暗黒の稲妻