男のオフィスはバクテリアだらけ
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 6月4日(月)19時52分配信
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電話機はオフィスの中でもバクテリアが多い場所だ(資料写真)。 (Photograph by Lynn Johnson National Geographic)
 アメリカのオフィスは500種以上のバクテリアであふれている。この数字は、以前に行われた浴室や飛行機のバクテリア調査の結果とほぼ同じという。ただし、すべてのオフィスが同じ状況ではない。男性が主体のオフィスは、女性の場合よりも多くのバクテリア種が生息していると明らかになった。

 今回の研究によると、先進国では1日の90%を室内で過ごしているケースが多い。しかも大半は外出することなく8時間以上働いているという。

 研究チームの一員でサンディエゴ州立大学の生物学者スコット・ケリー氏は、「このようなライフスタイルが人間の“生息環境”となって定着し始めている。そこに何が存在しているのか、どこからやって来るのかを知ることは重要だ」と話す。

「オフィスにいるバクテリアの主な供給源は人間であり、環境汚染を絶えず広めているのは私たち自身なのだ」。

 ケリー氏は、「多いといっても、通常は問題にならない」と述べる。「ただし、病院や介護施設などでは、無害なバクテリアでも問題になり得る」。

 研究チームは、ニューヨーク市、カリフォルニア州サンフランシスコ、アリゾナ州ツーソンという気候が異なる3都市を対象に、それぞれ30カ所のオフィスを選出。調査用の綿棒(スワブ)を使ってオフィス内のさまざまな表面からバクテリアを採取した。さらにその種類を調べるため、実験室で培養、DNA分析を行った。

 分析の結果、ニューヨークとサンフランシスコのバクテリア集団はほとんど同じで、「広く人体に生息する一般的な種だった」とケリー氏は説明する。

 バクテリアは、定期的に人の皮膚から落ちて、オフィスの表面に定着する。「種類の多さと私たちの“貢献度”に少々驚いた。外からほこりにまぎれて来るのではない。体から自然に落ちていたのだ」。

 ツーソンでは、ニューヨークやサンフランシスコとは異なる種が発見された。この地の砂漠土壌に適応したためだと考えられる。

◆男性のオフィスにバクテリアが多い理由

 また、最も集中している場所が電話機と椅子であることも判明した。

 口が近づく電話機は予想されていた結果だった。他方、「椅子については説明が難しい」とケリー氏は話す。調査に使用した綿棒が、でこぼこしたキーボードなどの表層よりも、椅子のバクテリアを採取するのに適していた可能性があるという。

 男性のオフィスにバクテリアが多かった理由について、ケリー氏は2つの仮説を提示している。

 まず「男性不潔説」だ。「一般的に、男性は女性よりもだらしがないと考えられている。過去の研究でも、男性の方が手洗いや歯磨きの回数が少ないと出ている」。

 2つ目は、単に「男性の方が体が大きいから」という説。研究チームはこちらの方が妥当性があると考えている。「男性の口や手は女性よりも大きい。したがって、バクテリアが成長する表面積も増える」。

 注意点として、ケリー氏は次のように話す。「風邪がはやっている時期でもなければ、オフィスのバクテリアを恐れる必要はない。自分のオフィスを過剰に怖がらないでほしい」。

 今回の研究成果は、オンラインジャーナル「PLoS ONE」に5月30日付けで掲載されている。

Christine Dell'Amore for National Geographic News

最終更新:6月4日(月)19時52分

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