<自治体アンテナショップ>東京郊外に相次ぎ誕生 経費減で
毎日新聞 6月4日(月)12時46分配信


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5月オープンした佐賀市のアンテナショップ。子どものいる家族が主なお客さんだ=東京都杉並区で5月21日午前11時45分、平元英治撮影
 地元の名産品をPRする地方自治体のアンテナショップが、東京都の郊外で相次ぎ誕生している。これまで一般的だった都心などでは年間の維持費が億単位に達するケースもあり、「コストが安い郊外で、定住者をターゲットに」という狙いだ。開業したばかりの東京スカイツリー効果に期待して、周辺商業施設「東京ソラマチ」にもお目見えした。【平元英治】

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 杉並区のJR阿佐ケ谷駅と東京メトロ南阿佐ケ谷駅からそれぞれ徒歩数分。区役所前の加工食品販売店「竹八」内に5月、佐賀市のアンテナショップがオープンした。佐賀市にルーツがある同店が、約15平方メートルのスペースを無料提供し、運営も受託。市の負担は企画広報費などの年間約100万円で済む。

 竹八東京営業部の江口哲人次長は「九州で人気のアイスクリーム『ブラックモンブラン』など首都圏で手に入れにくい商品60~70点を並べている」と話す。佐賀県出身者が懐かしい味を求めて各地から訪れるという。

 金属洋食器製造会社が集積する新潟県燕市は09年に墨田区、10年に町田市に、農業が盛んな茨城県下妻市は11年に足立区でオープンさせた。ともに郊外立地のメリットに挙げるのは、定住人口の多さと賃料の安さだ。燕市は「フォークやナイフなど単価数百円の品物を売っている。徒歩で買いに来る住民が多いところほどいい」。下妻市も「地域に溶け込み、農産物や名物の納豆などの食料品を売ることを目指している」と説明する。

 こうした郊外出店のはしりと言われるのが福島県だ。江戸川区のイトーヨーカドー葛西店内の約60平方メートルで06年に開業。賃料を含めた年間経費は約2600万円。県産米や野菜など日用食品が並ぶ。東京電力福島第1原発事故による風評被害が懸念されたが、昨年度の売上額は前年同期比約2割増の1億4000万円に。桜田武店長は「安全性を厳格にチェックしている。常連の地域住民が『福島県産を買って応援しよう』と思ってくれたようだ」との見方を示す。

 東京ソラマチに共同で出店したのは栃木県と県内26市町。県観光交流課は「都心に劣らないほど大勢の人々が訪れる。栃木と墨田区は東武線でつながっており、観光客を呼び込める」と鼻息が荒い。

 財団法人・地域活性化センターによると、都内のアンテナショップ54店中41店はPR効果が高い有楽町や銀座などの都心や、新宿などJR山手線の徒歩圏内にある。有楽町にある鹿児島県の「かごしま遊楽館」の場合、近接する県施設を含め賃貸料は年間約1億3900万円。施設維持費の高さが都心出店のネックになっている。

 センターの畠田千鶴参事は「郊外でも交通機関の利用者数は地方都市をしのぐ場所が多く、今後も郊外にアンテナショップが増えるのではないか」とみる。

最終更新:6月4日(月)13時25分

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