天安門事件 あす23年 次世代指導部の対応注目
産経新聞 6月3日(日)7時55分配信

 ■「再評価期待、いつも失望」活動家

 【北京=山本勲】秋に開催予定の共産党大会で指導部の世代交代が行われることや、温家宝首相が天安門事件の再評価を求める発言を繰り返したとのネット情報が流れる中で、天安門事件をめぐる共産党政権の対応に関心が高まっている。政権安定を最優先する胡錦濤国家主席が今から抜本的見直しに踏み切るとは思えないが、習近平国家副主席・李克強副首相らの次世代指導部に実権が移行するにつれ、段階的に再評価が進む可能性を期待する声もある。

 変化の兆しは出始めている。温家宝首相が3月14日の全国人民代表大会後の会見で、重慶市で文革再来を思わせる急進左翼路線を推進した薄煕来同市党委書記(翌15日に解任)を厳しく批判。「文革の過ちを繰り返さないためにも政治改革を推進すべきだ」と力説した。

 1989年春、天安門に集まった人々は、政治改革を進めようとして総書記辞任に追い込まれ“憤死”した胡耀邦氏を悼むことから、抗議行動を始めた。

 胡耀邦氏や事件で失脚した趙紫陽の両総書記に仕えた温首相の発言は、改革を進められなかったことへの遺憾表明と同時に、次期指導部への注文という、2つの狙いがあったとみられる。

 10年前に発足した胡錦濤・温家宝政権には、政治改革を通じた民主化、腐敗撲滅、格差是正などの実現への期待が大きかった。しかし江沢民前主席が党と軍の実権を離さず、最後まで独自色を打ち出せなかった。

 その江氏や李鵬元首相らは、トウ小平氏の指示で事件の弾圧や事後処理に深く関わった。彼らが大きな影響力を保持している間に、胡・温指導部が事件の再評価を進めることは困難だった。

 江氏の衰えもあり、胡主席は今年に入りようやく軍の実権をほぼ掌握した段階だ。次世代指導部への権力移行の微妙な過渡期だけに、事件の大胆な再評価に踏み切る可能性は低い。

 しかし先月末に「貴州省貴陽市や福建省南平市などで行われた小規模集会が当局の弾圧に遭わなかった」(香港紙報道)などの小さな変化がみられる。

 次世代の最高指導部、政治局常務委員会には、胡耀邦総書記時代に育成された共産主義青年団人脈から汪洋氏ら改革派の人材登用が有力視されている。習近平副主席の父、仲勲氏は胡耀邦氏と政治改革路線を共にした。次世代が真の実権を握る数年後には、「政治改革と天安門事件の再評価が本格化するのでは」(北京の西側外交筋)との見方も出てきている。

最終更新:6月4日(月)2時7分

秋に開催予定の共産党大会で指導部の世代交代が行われることや、温家宝首相が天安門事件の再評価を求める発言を繰り返したとのネット情報が流れる中で、天安門事件をめぐる共産党政権の対応に関心が高まっている様だ。

暗黒の稲妻