訂正:任天堂が新型Wii公開へ、試される「ゲーム専用機」の復権
ロイター 6月1日(金)18時48分配信


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6月1日、任天堂は近く、次世代機「Wii U」最終形を公表する。「ゲーム専用機不要論」が広がる中、老舗ゲームメーカーが復権を果たせるかどうかが試される。写真は昨年6月撮影(2012年 ロイター/Danny Moloshok)
[東京 1日 ロイター] 任天堂<7974.OS>は、米ロサンゼルスで開幕する世界最大のゲーム見本市「E3」で、年末商戦に発売を控える据置型ゲームの次世代機「Wii U」最終形を公表する。業績悪化と株価低迷に苦しむ同社が、新型ゲーム機で息を吹き返すことができるのか。

スマートフォンやソーシャルゲームの攻勢を受けて「ゲーム専用機不要論」が広がる中、老舗ゲームメーカーが「復権」を果たせるかどうかが試される。

任天堂のプレスイベントは5日午前9時(日本時間6日午前1時)から開催。Wii Uの実機で実際にどんな遊びができるのか、実演を交えて提案が行われる。昨年2月に発売の携帯ゲーム機「3DS」はスタート時にソフトの投入が足りず、キラーソフトの「マリオシリーズ」の発売も遅れた。3DSでスタートダッシュにつまづいた「苦い経験」(岩田社長)があることから「Wii Uでは自社ソフトを含めてかなりの品ぞろえを用意して臨んでくる」(野村証券の桜井雄太アナリスト)との見方が多い。

Wii U本体の仕様については、昨年6月のE3で、6.2型のタッチパネル液晶画面を搭載したタブレット型のコントローラー端末が付くことを明らかにしただけで、その後、詳細はほとんど発信されていない。戦略は未知数の部分が多く、情報が不足していることから「プレイステーションにiPad(アイパッド)がついたようなもの」(市場関係者)と揶揄(やゆ)する声もある。

06年発売の「Wii」は、これまでのボタン操作に代わって「コントローラーを振り回す」という革新的なゲームの遊び方を提唱して市場に「驚き」を与えた。しかし、昨年のE3でWii Uの概要を発表した後の市場の反応は鈍く、翌日(11年6月8日)の株価は06年5月以来となる1万7000円を割り込んだ。

足元の株価は、一段の下げで03年11月以来8年半ぶりに一時9000円を割り込んだ。みずほ証券の小山武史アナリストは「今年のE3発表後に現状をさらに悪化させる可能性を株式市場が織り込み始めている」との懸念を示す。次世代機として命運をかける Wii Uへの期待感が高まっているとは言い難い状況で、任天堂は市場でのマイナス評価を跳ね返すだけの「驚き」をE3で打ち出すことが求められている。

<Wii Uのネットワーク戦略に注目>

E3で用意する「驚き」について岩田社長は「こうやって驚かせますと前から言ってしまっては、実際に驚いてもらえるかは難しい」――と煙に巻く。一方で、1月27日の経営方針説明会で岩田社長は、Wii Uでネットワークサービスを強化する方針を示し、同社のゲーム機でインターネットを利用するすべてのサービスを「ニンテンドーネットワーク」と総称すると発表した。

E3の目玉は、ニンテンドーネットワークの強化策になる見込みで、Wii Uのタブレット型コントローラーを利用することで(1)ソフトや動画のダウンロード販売の充実、(2)「対戦」などネットワークゲーム、(3)交流サイト(SNS)――などのネット分野で、どのようなサービスが打ち出されるかが焦点になる。ネットワービスでは使い勝手のいい課金モデルの構築も課題。

野村証券の桜井アナリストは「いかに人を集めて交流させるかが重要。ネットワークゲームでは『対戦』を超えるような遊び方があってもいいし、米フェイスブック<FB.O>のようなソーシャルコミュニティサービスを打ち出すことができるかどうかもみたい」と述べている。みずほ証券の小山アナリストも「Wii Uでネットワークサービスは避けては通れない。皆が常に使うようなサービスを作って、クラウド時代に競争力をつけておく必要がある」と指摘している。

ただネットワーク戦略は、ゲーム市場で競合するソニー<6758.T>が「ソニーエンタテインメントネットワーク(SEN)」を立ち上げて先行している。映画・音楽・ゲームの配信が受けられるサービスで登録ベースの会員数は1億件を超えた。携帯ゲーム機「プレイステーションVITA」にも音楽配信を始めるなどサービスの幅を広げており、E3に出展するゲーム子会社のソニー・コンピュータエンタテインメントが、一段のネットサービスの充実を打ち出してくる可能性もある。

世界的には、米アップル<AAPL.O>が、ゲームやアプリケーション配信の「App Store(アップストア)」や、音楽・映画を配信する「iTunes(アイチューンズ)」で圧倒的な存在感を示しており、ソニーの遥か先を行っている。米グーグル<GOOG.O>も、アプリ配信と音楽配信を「グーグルプレイ」に統合し、ネットサービスを強化している。

任天堂の宮本茂専務は「Wii Uのネットワークはいろいろな興味を持って準備を整えている。驚きを持って理解してもらえるようにしたい」との意気込みを示す。ただ、ネットワークの分野で著しく出遅れたポジションにいる同社が、アップルやグーグルにどこまで対抗できるサービスを構築できるかは未知数。E3で「驚き」を提供するには、「Wiiの次世代機」というよりも「Wii Uでしかできない新しいものをどれだけ作ることができるか」(宮本専務)が勝負になりそうだ。

<ソニーはVITAの対応ソフト充実へ>

一方、ソニー・コンピュータエンタテインメントはE3で、据置型ゲーム機「プレイステーション3」の後継機の発表は行わず、昨年12月に発売したVITAの強化を発表する見通しだ。VITAの今期の販売計画は、プレイステーション・ポータブル(PSP)と合わせて1600万台(前年同期は680万台)。このうちVITAの内訳は非開示だが1000万台程度とみられており「相当に高いハードル」(業界関係者)との見方が大勢。ハード普及の起爆剤はソフトに他ならないが、E3で発表する追加ソフトでVITAの販売にどこまで勢いを付けることが出来るかが問われる。

ソーシャルゲームのグリー<3632.T>はE3に初出展する。昨年買収した米国のSNS事業を「GREE」に統一したばかりで、世界展開の本格化のスタートを切る。ただ、日本国内で「コンプリードガチャ」と呼ばれる商法が違法との見解が示されたばかり。足元でソーシャルゲーム健全化の対応に追われる中で、海外展開に活路を見出す。

<ゲーム専用機「不要論」で低迷>

任天堂の株価下落の背景は、市場にくすぶる「ゲーム専用機不要論」がある。調査会社シード・プランニングが、スマホでゲームをするユーザー500人を対象に行ったアンケート調査によると、スマホ購入後に家庭用ゲーム機の「利用時間が減った」もしくは「利用しなくなった」と回答したのは全体の44%にのぼり「変化はない」と回答した36%を上回った。

すでに、カプコン<9697.T>、スクウェア・エニックス・ホールディングス<9684.T>、コナミ<9766.T>などゲームソフトメーカーは、これまでゲーム専用機に提供してきた人気ソフトをスマホ向けに配信を始めた。また、交流サイト(SNS)の世界でソーシャルゲームも勢力を拡大しており、グリー<3632.T>の会員数は3月末で2億3400万人に達した。

米IDCの調査によると、2011年の世界スマホの出荷台数は4億9140万台。このうち、首位のサムスン電子<005930.KS>が9400万台(訂正)、2位の米アップル<AAPL.O>が9320万台。これに対して任天堂のハードは、11年度のニンテンドー3DSの出荷台数が1353万台、DSが510万台、Wiiが984万台で、同社のゲーム機すべてを合計してもスマホ強豪メーカーの実績には遠く及ばない。

スマホユーザーは、女性や高齢者などゲームに関心の薄い層でも手元のタッチパネルですぐにゲームユーザーになる。それは任天堂が「ゲーム人口拡大戦略」のもとでWiiやDSを通じて拡大してきた「ライトユーザー」層と重なりあう。岩田社長は、スマホやソーシャルゲームの普及と任天堂の低迷に「因果関係はない」と強調しているが、Wii Uの最終形を発表するE3で、ゲーム専用機の真価が問われる。

(ロイターニュース 村井令二  編集 宮崎大)

*本文中のサムスン電子の2011年スマホ出荷台数を訂正しました。

最終更新:6月2日(土)11時50分

ゲーム専用機不要論?
聽いた事無いけどね。
ゲームはゲーム専用機でしかやらんからね。
PCでやろうとは思わんよ。
ユーザーが求めているのは新ハードでは無い。
現行ハードで最高に楽しめるソフトだ。

暗黒の稲妻