<エジプト>大統領選、決選投票へ
毎日新聞 5月25日(金)20時41分配信
【カイロ前田英司】民主化要求運動「アラブの春」で独裁崩壊後、初のエジプト大統領選は23~24日の投票で過半数を獲得した候補者がなく、穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党のムハンマド・モルシ党首(60)と、空軍出身のアフマド・シャフィク元首相(70)による決選投票の可能性が濃厚になった。同胞団が25日、毎日新聞の取材に答えた。大統領選は「民主化」の総仕上げだが、旧体制下からの既存勢力が勝ち残り、変革を求めた若者世代の声は埋没した形になる。
選挙管理委員会によると、投票率は約50%。政府系紙アルアハラム(電子版)によると、全国27県のうち25県の開票終了時点で、モルシ氏が1位、小差でシャフィク氏が2位。変革を求めるリベラルな有権者の支持を集めた左派のハムディン・サバヒ氏(57)が3位で猛追した。
公式結果は発表されておらず、同胞団以外の陣営は開票動向に「ノーコメント」とした。
モルシ氏は、同胞団の本命候補が出馬要件を満たさず失格したことを受けて選挙戦を本格化したため、当初は出遅れ感があった。しかし、医療や福祉などの草の根活動で庶民に浸透する同胞団が組織力を総動員し、激しく追い上げた。
同胞団は長年、非合法組織として弾圧を受けてきたが「春」の後、正式に政治活動が認められ、先の人民議会選で第1党に躍進した。モルシ氏が勝利すれば、同胞団が権力の中枢を「独占」することになり、「イスラム化」を懸念する世論が高まるのは必至だ。
一方、シャフィク氏はムバラク前政権末期の首相で、閣僚経験も長く、旧体制の「残党」と批判が根強い。しかし、エジプトは52年の軍事クーデターで王制を打倒して以来、歴代の大統領4人は全員が軍出身者で「体制候補」としての基盤があった。豊富な行政経験を強調して混乱した治安や経済の再生を訴え、安定を優先したい有権者を取り込んだ。
サバヒ氏は、既存勢力による「世俗対イスラム」の構図を嫌った浮動票を取り込み、有力候補とされたアムル・ムーサ前アラブ連盟事務局長(75)や、改革派の元同胞団幹部アブドルメナム・アブルフトゥーハ氏(60)の支持層に食い込んだ。
◇エジプト大統領選◇
総勢12人の候補者で争った初の民主的な大統領選挙。エジプトでは05年、当時のブッシュ米政権の民主化圧力で複数候補制が導入されたが、ムバラク前大統領が得票率88.6%の圧勝で5選。それ以前は信任投票。昨年2月の前政権崩壊から国の暫定統治を続ける軍最高評議会は6月末までの民政移管を約束し、大統領選はその最終段階と位置づけられている。
最終更新:5月26日(土)1時10分
例えどういう結果が出たとしても国民が選挙結果をちゃんと受け入れないとまた混乱しそうな気がするんだが。
暗黒の稲妻
毎日新聞 5月25日(金)20時41分配信
【カイロ前田英司】民主化要求運動「アラブの春」で独裁崩壊後、初のエジプト大統領選は23~24日の投票で過半数を獲得した候補者がなく、穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党のムハンマド・モルシ党首(60)と、空軍出身のアフマド・シャフィク元首相(70)による決選投票の可能性が濃厚になった。同胞団が25日、毎日新聞の取材に答えた。大統領選は「民主化」の総仕上げだが、旧体制下からの既存勢力が勝ち残り、変革を求めた若者世代の声は埋没した形になる。
選挙管理委員会によると、投票率は約50%。政府系紙アルアハラム(電子版)によると、全国27県のうち25県の開票終了時点で、モルシ氏が1位、小差でシャフィク氏が2位。変革を求めるリベラルな有権者の支持を集めた左派のハムディン・サバヒ氏(57)が3位で猛追した。
公式結果は発表されておらず、同胞団以外の陣営は開票動向に「ノーコメント」とした。
モルシ氏は、同胞団の本命候補が出馬要件を満たさず失格したことを受けて選挙戦を本格化したため、当初は出遅れ感があった。しかし、医療や福祉などの草の根活動で庶民に浸透する同胞団が組織力を総動員し、激しく追い上げた。
同胞団は長年、非合法組織として弾圧を受けてきたが「春」の後、正式に政治活動が認められ、先の人民議会選で第1党に躍進した。モルシ氏が勝利すれば、同胞団が権力の中枢を「独占」することになり、「イスラム化」を懸念する世論が高まるのは必至だ。
一方、シャフィク氏はムバラク前政権末期の首相で、閣僚経験も長く、旧体制の「残党」と批判が根強い。しかし、エジプトは52年の軍事クーデターで王制を打倒して以来、歴代の大統領4人は全員が軍出身者で「体制候補」としての基盤があった。豊富な行政経験を強調して混乱した治安や経済の再生を訴え、安定を優先したい有権者を取り込んだ。
サバヒ氏は、既存勢力による「世俗対イスラム」の構図を嫌った浮動票を取り込み、有力候補とされたアムル・ムーサ前アラブ連盟事務局長(75)や、改革派の元同胞団幹部アブドルメナム・アブルフトゥーハ氏(60)の支持層に食い込んだ。
◇エジプト大統領選◇
総勢12人の候補者で争った初の民主的な大統領選挙。エジプトでは05年、当時のブッシュ米政権の民主化圧力で複数候補制が導入されたが、ムバラク前大統領が得票率88.6%の圧勝で5選。それ以前は信任投票。昨年2月の前政権崩壊から国の暫定統治を続ける軍最高評議会は6月末までの民政移管を約束し、大統領選はその最終段階と位置づけられている。
最終更新:5月26日(土)1時10分
例えどういう結果が出たとしても国民が選挙結果をちゃんと受け入れないとまた混乱しそうな気がするんだが。
暗黒の稲妻