晴天から突然の雷雨、これってなぜ?
日経ウーマンオンライン(日経ウーマン) 5月24日(木)9時50分配信

朝は晴れていたのに、昼からいきなりヒョウ…
5月上旬は気象に関するニュースが相次ぎました。5月6日には茨城や栃木、福島で竜巻が発生。5月9日~10日は関東地方で激しい雷雨となりヒョウが降ったところもありました。
【詳細画像または表】
竜巻は気象庁のHP内でも「人の一生のうちほとんど経験しない極めて稀な現象」と記されているほど局地的に短時間で起こる現象。また、発生頻度が竜巻より高い激しい雷雨やヒョウも、短時間で天気をがらりと変えて大きな災害に繋がる危険な現象です。例えば、東京都心の5月10日の天気は、朝は非常に晴れていたにも関わらず、昼を過ぎると一気に雨が降り出しました。横浜や千葉ではヒョウが降ったほどです。5~6月は、激しい雷雨に伴ってヒョウの発生が多くなる時期。真夏はカミナリ雲の中で成長した氷粒が地面に落ちるまでに大粒の雨に変わってしまいますが、初夏は融けずに氷のまま落ちてくるのです。
こういった突然の激しい天気の変化はなぜ起こるのでしょうか。これは「上空に寒気が流れ込んで大気の状態が不安定」になることが原因です。
「大気の状態が不安定になる」とは?
大気の状態が不安定になることは、どの季節でも起こります。春や秋は「寒冷前線」、夏は「暑くなった日の夕立」、冬は「強い冬型の気圧配置」など、それぞれの季節に特徴があり、これらは大抵の場合、天気図からあらかじめ読み取れます。
一方、5月ごろの不安定は天気図に現れないことがあるため注意が必要です。天気図上では高気圧に覆われていて、実際の天気も晴れているのに、空模様が急に変化して突然の雨や雷雨に見舞われる…というパターンを皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。これは初夏の「姿無く忍び寄る(天気図上に現れない)不安定」です。
皆さんもテレビやラジオでよく聞くこの「不安定」。聞き慣れてはいるけれど、なぜ「上空に寒気が流れ込む」→「大気の状態が不安定になる」→「天気が急変する」のかと聞かれたら、「?」となる人も多いかもしれません。
まず、ここでいう「上空」とはどこをさしているのでしょうか。空はどこまでも高く広がって見えますが、実は色々な性質の空気がサンドイッチのように重なり合っています。その様子を知るために、気象庁は全国16地点で、地面から約30kmの高さまでいくつかの地点で温度・湿度・風などを観測しています。季節によってポイントになる高さがあり、春から夏によく登場する「上空の高さ」は5500m付近(500ヘクトパスカルの高さ)です。この高さに、平年よりかなり低い気温の空気が流れ込むと、注意が必要な「不安定」になります。
「不安定」は、下の方の空気が周りよりも暖かく(軽く)て、上の方の空気が周りよりも冷たい(重い)状態。そのため、文字通り空気の状態が不安定なのです。例えば、高いピンヒールの靴を履き、他人よりも重いリュックを背負って歩いたら、足もとがフラつきますよね。空もそれと同じで、下の方に安定感がないため、上下の空気が入れ替かわって落ち着きたがっている状態のことをいいます。
上下の空気が入れ替わるきっかけは上昇気流です。風が山にぶつかったり、風と風がぶつかり合ったりすることで上昇気流が起こると、下の方の空気は安定を求めてどんどん上昇します。すると、「上空の寒気」や「不安定な状態」が“カミナリ雲”という姿で現れます。このカミナリ雲が天気の急変をもたらし、場合によっては竜巻やヒョウ、突風などの災害を引き起こすのです。
突然の天気の変化を見分けるには
気象庁では上空の空気の流れと地上の気温や風の予想をして、「この日は危ないな」という日が事前に分かるので、前日から情報を出して注意を呼びかけることがあります。当日も、晴れているのに「雷注意報」が発表されることがあります。早すぎると感じるかもしれませんが、カミナリ雲は発生から雷雨までがあっという間。短時間に激しい雨が降って一気に道路が冠水したり、落雷で停電が起きたりします。雲が出てからでは遅いので、「カミナリ雲が発生しそうなので気をつけて」と早めに発表するのです。
問題は、カミナリ雲の発生が局地的なことです。同じ市内・区内でも雷雨に遭う所と遭わない所があるほど範囲が狭いため、ズバリ予想するのは困難です。このため雷雨や竜巻などの可能性を知り、早くサインを察知することが大切です。
まず、事前に得られるのは「雷に関する情報」「雷注意報」そして「降水確率」です。私は毎朝、ラジオで天気予報を伝えていますが、近年の降水確率はかなり精度が上がってきているように感じます。降水確率が50%以上なら、かなりの注意が必要です。同じ関東地方でも30%~60%などと差があったりするので、周りと比べて高い地域・高い時間帯は特に用心しておきましょう。
実際に体感できるサインは、「空が急に暗くなること」と「ヒンヤリした風が吹くこと」です。すでにカミナリ雲が近くまで迫ってきています。特に、昼間でも照明が必要なほど暗くなったり、ムシムシしていた空気が急に冷たくなった時は要注意です。それだけカミナリ雲が発達している証拠で、大雷雨やヒョウ、突風、竜巻の恐れがあります。
辺りの視界が悪くなるような雨が数10分続くと、大きな災害が起こる危険が増します。地下や高架下(アンダーパス)は浸水・冠水に巻き込まれることがあり、木の下も落雷の恐れがあり危険です。
16日は日差しと雨上がりの暖かい空気で夏のような暑さになりました。ところが翌日からは上空に寒気が流れ込むと予想されたため、5月18日も、6日や9~10日のように天気の急変が懸念されています。
この先もまだ、「不安定」というキーワードは出てきます。遭ってからでは遅い天気の変化に対処するには早めの察知と用心が大切です。
伊藤みゆき(いとう・みゆき)
証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動
最終更新:5月24日(木)9時50分
?雷注意予報ってこういうなんだね。
暗黒の稲妻
日経ウーマンオンライン(日経ウーマン) 5月24日(木)9時50分配信

朝は晴れていたのに、昼からいきなりヒョウ…
5月上旬は気象に関するニュースが相次ぎました。5月6日には茨城や栃木、福島で竜巻が発生。5月9日~10日は関東地方で激しい雷雨となりヒョウが降ったところもありました。
【詳細画像または表】
竜巻は気象庁のHP内でも「人の一生のうちほとんど経験しない極めて稀な現象」と記されているほど局地的に短時間で起こる現象。また、発生頻度が竜巻より高い激しい雷雨やヒョウも、短時間で天気をがらりと変えて大きな災害に繋がる危険な現象です。例えば、東京都心の5月10日の天気は、朝は非常に晴れていたにも関わらず、昼を過ぎると一気に雨が降り出しました。横浜や千葉ではヒョウが降ったほどです。5~6月は、激しい雷雨に伴ってヒョウの発生が多くなる時期。真夏はカミナリ雲の中で成長した氷粒が地面に落ちるまでに大粒の雨に変わってしまいますが、初夏は融けずに氷のまま落ちてくるのです。
こういった突然の激しい天気の変化はなぜ起こるのでしょうか。これは「上空に寒気が流れ込んで大気の状態が不安定」になることが原因です。
「大気の状態が不安定になる」とは?
大気の状態が不安定になることは、どの季節でも起こります。春や秋は「寒冷前線」、夏は「暑くなった日の夕立」、冬は「強い冬型の気圧配置」など、それぞれの季節に特徴があり、これらは大抵の場合、天気図からあらかじめ読み取れます。
一方、5月ごろの不安定は天気図に現れないことがあるため注意が必要です。天気図上では高気圧に覆われていて、実際の天気も晴れているのに、空模様が急に変化して突然の雨や雷雨に見舞われる…というパターンを皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか。これは初夏の「姿無く忍び寄る(天気図上に現れない)不安定」です。
皆さんもテレビやラジオでよく聞くこの「不安定」。聞き慣れてはいるけれど、なぜ「上空に寒気が流れ込む」→「大気の状態が不安定になる」→「天気が急変する」のかと聞かれたら、「?」となる人も多いかもしれません。
まず、ここでいう「上空」とはどこをさしているのでしょうか。空はどこまでも高く広がって見えますが、実は色々な性質の空気がサンドイッチのように重なり合っています。その様子を知るために、気象庁は全国16地点で、地面から約30kmの高さまでいくつかの地点で温度・湿度・風などを観測しています。季節によってポイントになる高さがあり、春から夏によく登場する「上空の高さ」は5500m付近(500ヘクトパスカルの高さ)です。この高さに、平年よりかなり低い気温の空気が流れ込むと、注意が必要な「不安定」になります。
「不安定」は、下の方の空気が周りよりも暖かく(軽く)て、上の方の空気が周りよりも冷たい(重い)状態。そのため、文字通り空気の状態が不安定なのです。例えば、高いピンヒールの靴を履き、他人よりも重いリュックを背負って歩いたら、足もとがフラつきますよね。空もそれと同じで、下の方に安定感がないため、上下の空気が入れ替かわって落ち着きたがっている状態のことをいいます。
上下の空気が入れ替わるきっかけは上昇気流です。風が山にぶつかったり、風と風がぶつかり合ったりすることで上昇気流が起こると、下の方の空気は安定を求めてどんどん上昇します。すると、「上空の寒気」や「不安定な状態」が“カミナリ雲”という姿で現れます。このカミナリ雲が天気の急変をもたらし、場合によっては竜巻やヒョウ、突風などの災害を引き起こすのです。
突然の天気の変化を見分けるには
気象庁では上空の空気の流れと地上の気温や風の予想をして、「この日は危ないな」という日が事前に分かるので、前日から情報を出して注意を呼びかけることがあります。当日も、晴れているのに「雷注意報」が発表されることがあります。早すぎると感じるかもしれませんが、カミナリ雲は発生から雷雨までがあっという間。短時間に激しい雨が降って一気に道路が冠水したり、落雷で停電が起きたりします。雲が出てからでは遅いので、「カミナリ雲が発生しそうなので気をつけて」と早めに発表するのです。
問題は、カミナリ雲の発生が局地的なことです。同じ市内・区内でも雷雨に遭う所と遭わない所があるほど範囲が狭いため、ズバリ予想するのは困難です。このため雷雨や竜巻などの可能性を知り、早くサインを察知することが大切です。
まず、事前に得られるのは「雷に関する情報」「雷注意報」そして「降水確率」です。私は毎朝、ラジオで天気予報を伝えていますが、近年の降水確率はかなり精度が上がってきているように感じます。降水確率が50%以上なら、かなりの注意が必要です。同じ関東地方でも30%~60%などと差があったりするので、周りと比べて高い地域・高い時間帯は特に用心しておきましょう。
実際に体感できるサインは、「空が急に暗くなること」と「ヒンヤリした風が吹くこと」です。すでにカミナリ雲が近くまで迫ってきています。特に、昼間でも照明が必要なほど暗くなったり、ムシムシしていた空気が急に冷たくなった時は要注意です。それだけカミナリ雲が発達している証拠で、大雷雨やヒョウ、突風、竜巻の恐れがあります。
辺りの視界が悪くなるような雨が数10分続くと、大きな災害が起こる危険が増します。地下や高架下(アンダーパス)は浸水・冠水に巻き込まれることがあり、木の下も落雷の恐れがあり危険です。
16日は日差しと雨上がりの暖かい空気で夏のような暑さになりました。ところが翌日からは上空に寒気が流れ込むと予想されたため、5月18日も、6日や9~10日のように天気の急変が懸念されています。
この先もまだ、「不安定」というキーワードは出てきます。遭ってからでは遅い天気の変化に対処するには早めの察知と用心が大切です。
伊藤みゆき(いとう・みゆき)
証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動
最終更新:5月24日(木)9時50分
?雷注意予報ってこういうなんだね。
暗黒の稲妻