EV充電「名を捨て実を取る」 欧米式と互換性、規格争い混乱収束を
フジサンケイ ビジネスアイ 5月23日(水)8時15分配信

拡大写真日本と米独の充電方式の比較(写真:フジサンケイビジネスアイ)
日本の電気自動車(EV)向け急速充電規格の普及団体「CHAdeMO(チャデモ)協議会」が22日開いた総会で、志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は、米独8社が独自の充電規格を立ち上げたことに対して、「顧客の利便のため、技術的に互換性を持たせる働きかけを強めていく」と譲歩とも取れる発言をした。規格争いの混乱を収束させ、EV普及を優先させる「名を捨てて実を取る戦略」への転換だ。
[フォト] スマホと携帯は電池切れが心配 充電器市場で争奪戦激化
日本の急速充電機の規格「チャデモ」は2010年、日産自動車やトヨタ自動車など主要メーカーが中心となって設立した同協議会で決めた。急速充電設備は現在、国内で1000カ所を超え、世界でも1400カ所超に広がっている。同協議会では、「EVの普及に急速充電インフラの普及は不可欠」(志賀会長)として、欧米メーカーに世界標準化を働きかけてきた。
これに対し、米ゼネラル・モーターズや独フォルクスワーゲンなど米独8社は今月、家庭電源を使う普通充電と急速充電の両方のプラグを持つ「コンボ」と呼ぶ新たな規格を13年にも実用化し、採用する方針を表明。急速充電専用のプラグしか持たないチャデモへの対抗姿勢をあらわにしたとみられる。この日の志賀会長の発言は、当初の世界標準化に向けた動きから柔軟姿勢に転換したもの。「両方の規格で技術的な互換性を確保することは可能」として米独勢への説得を強める。
ただ、コンボ方式の充電機は製品化されていないうえ、米独8社の足並みは必ずしもそろっていない。「技術的な側面からの切り崩しもまだ可能」(チャデモ協議会幹事)との考えもあり、チャデモ内での意思統一も図れたわけではない。また、日本のチャデモ採用の再三の申し入れにもかかわらず、中国は結果的に独自の急速充電規格の採用に踏み切った。「規格の主導権争いで揺れ動いている」(自動車大手)状態は当分続きそうだ。
一方、IT(情報技術)分野にみられるように、規格争いに勝てば少しは競争に有利になるものの、結局は商品化のスピードとコスト競争力で勝敗が決まるケースが増えている。第3世代携帯電話では規格の「ガラパゴス化」を脱したが、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」上陸を機に、海外製スマートフォン(高機能携帯電話)に、市場を席巻された。また、テレビの地上デジタル方式では、欧米より後発だった日本方式だが、海外展開では総務省が先兵となり中南米市場などの開拓に成功。しかし、店頭には日本方式の地デジに対応した韓国製品が幅をきかす。規格競争に勝っても、速さと安さで勝てなければ市場を取れない体力勝負の時代を印象づけている。
最終更新:5月23日(水)9時21分
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暗黒の稲妻
フジサンケイ ビジネスアイ 5月23日(水)8時15分配信

拡大写真日本と米独の充電方式の比較(写真:フジサンケイビジネスアイ)
日本の電気自動車(EV)向け急速充電規格の普及団体「CHAdeMO(チャデモ)協議会」が22日開いた総会で、志賀俊之会長(日産自動車最高執行責任者)は、米独8社が独自の充電規格を立ち上げたことに対して、「顧客の利便のため、技術的に互換性を持たせる働きかけを強めていく」と譲歩とも取れる発言をした。規格争いの混乱を収束させ、EV普及を優先させる「名を捨てて実を取る戦略」への転換だ。
[フォト] スマホと携帯は電池切れが心配 充電器市場で争奪戦激化
日本の急速充電機の規格「チャデモ」は2010年、日産自動車やトヨタ自動車など主要メーカーが中心となって設立した同協議会で決めた。急速充電設備は現在、国内で1000カ所を超え、世界でも1400カ所超に広がっている。同協議会では、「EVの普及に急速充電インフラの普及は不可欠」(志賀会長)として、欧米メーカーに世界標準化を働きかけてきた。
これに対し、米ゼネラル・モーターズや独フォルクスワーゲンなど米独8社は今月、家庭電源を使う普通充電と急速充電の両方のプラグを持つ「コンボ」と呼ぶ新たな規格を13年にも実用化し、採用する方針を表明。急速充電専用のプラグしか持たないチャデモへの対抗姿勢をあらわにしたとみられる。この日の志賀会長の発言は、当初の世界標準化に向けた動きから柔軟姿勢に転換したもの。「両方の規格で技術的な互換性を確保することは可能」として米独勢への説得を強める。
ただ、コンボ方式の充電機は製品化されていないうえ、米独8社の足並みは必ずしもそろっていない。「技術的な側面からの切り崩しもまだ可能」(チャデモ協議会幹事)との考えもあり、チャデモ内での意思統一も図れたわけではない。また、日本のチャデモ採用の再三の申し入れにもかかわらず、中国は結果的に独自の急速充電規格の採用に踏み切った。「規格の主導権争いで揺れ動いている」(自動車大手)状態は当分続きそうだ。
一方、IT(情報技術)分野にみられるように、規格争いに勝てば少しは競争に有利になるものの、結局は商品化のスピードとコスト競争力で勝敗が決まるケースが増えている。第3世代携帯電話では規格の「ガラパゴス化」を脱したが、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」上陸を機に、海外製スマートフォン(高機能携帯電話)に、市場を席巻された。また、テレビの地上デジタル方式では、欧米より後発だった日本方式だが、海外展開では総務省が先兵となり中南米市場などの開拓に成功。しかし、店頭には日本方式の地デジに対応した韓国製品が幅をきかす。規格競争に勝っても、速さと安さで勝てなければ市場を取れない体力勝負の時代を印象づけている。
最終更新:5月23日(水)9時21分
記事のみ紹介。
暗黒の稲妻