下河辺会長・広瀬社長、新体制 東電再生、3つの壁
産経新聞 5月9日(水)7時55分配信

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東京電力の新社長に内定し、会見する広瀬直己常務=8日午後、東京都千代田区の東電本店(古厩正樹撮影)(写真:産経新聞)
東京電力は8日、臨時取締役会を開き、西沢俊夫社長(61)の後任に広瀬直己常務(59)を昇格させる人事を内定した。勝俣恒久会長(72)の後任に原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長(64)が就任、両首脳が連携して福島第1原発事故で失墜した信頼回復と被害者への賠償を急ぐ。6月下旬に開く株主総会後の取締役会で正式決定する。
【表で確認】会社が持たないは本当か? 東電原価5.4兆うち8%が人件費
広瀬氏は内定後、東電本店で会見し、「被災された方々への賠償や原子力の廃止措置、電気の安定供給という3つの大きな柱に取り組みたい」と抱負を述べた。一方、下河辺氏は8日午後、枝野幸男経済産業相を訪ね、新体制が固まったことを報告、枝野経産相も了承した。新体制が固まったことを受け、枝野経産相は9日にも、1兆円の公的資金による資本注入などを盛り込んだ東電の「総合特別事業計画」を認定する。
東京電力の新社長に広瀬直己常務の内部昇格が決まった。福島第1原発事故後、難しい賠償対応を陣頭指揮してきた広瀬氏。新会長に就任する原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長は、その手腕が東電の再生にも発揮されるとの期待を込め、白羽の矢を立てた。ただ、その前途には、終わりが見えない賠償に加え、財務改善、社内改革という3つの“壁”が立ちはだかる。
「社長としても賠償をしっかり進めていく」
広瀬氏は8日の会見で、これまで担当役員として進めてきた原発事故の被害者対応の決意をこう語った。農協、漁協、自治体の首長や議員…。事故後、広瀬氏は、賠償を求め連日のように東電本店を訪れる被害者らの対応を一手に担ってきた。賠償をめぐっては、分厚く難解な説明書を被害者に送りつけるなど、東電は批判を浴び続けた。広瀬氏は1万人超に賠償対応人員を増やすなど手探りで賠償体制の構築に努め、その手腕は支援機構からも高く評価されている。
ただ、東電が総合特別事業計画で示した現時点の見積もり可能賠償額は2兆5462億円。これに対して実際の支払額はまだ8412億円にすぎない。「次から次へと賠償項目は広がっていて追いついていない」(広瀬氏)のが現状で、賠償が軌道に乗ったとはとてもいえない。国から資金支援を受ける賠償費用は、最終的に東電が毎年の利益から返済する必要がある。東電と支援機構は、平成26年3月期の黒字転換を計画しているが、その源泉は電気料金値上げと柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働だ。
しかし、4月から実施している平均17%の企業向け電気料金値上げでも、3月31日で契約が切れた5万件のうち3分の1が同意していない。家庭向け値上げはさらに厳しい反発を招くのは確実で、思い通りに収益を改善できる保証はない。25年度を想定している柏崎刈羽原発の再稼働も見通しは立っていない。国内の稼働原発は42年ぶりにゼロとなり、政府が安全を確認した関西電力大飯原発3、4号機(福井県)ですら再稼働は難航しており、大手銀行幹部は「東電の財務健全計画は絵に描いた餅」と切り捨てる。
一方、下河辺氏と広瀬氏が優先課題に掲げる社内改革については、早くも実現を危ぶむ声が出ている。社内基盤を持たない下河辺氏は、社内に経営改革本部を立ち上げ、自身は本部長に、広瀬氏を副本部長に、グループ社員5万人超の意識改革を進めていく方針だ。だが、東電社内では、社外の弁護士や会計士も取り込んだ経営トップ直轄チームによる組織改革強行への警戒感が強く、広瀬氏の求心力に疑問を投げかける向きもある。内向き、官僚的とも指摘される社内改革を進められなければ、原発事故で失った信頼を取り戻すことは難しく、値上げや原発再稼働も遠のく。広瀬氏が社内をどうまとめ、下河辺氏が進める改革を軌道に乗せるのか。それが果たせなければ、東電の再建計画はすぐにも崩壊する。
最終更新:5月9日(水)10時49分
自らの身を削る勇気はあるんだろうかね。
暗黒の稲妻
産経新聞 5月9日(水)7時55分配信

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東京電力の新社長に内定し、会見する広瀬直己常務=8日午後、東京都千代田区の東電本店(古厩正樹撮影)(写真:産経新聞)
東京電力は8日、臨時取締役会を開き、西沢俊夫社長(61)の後任に広瀬直己常務(59)を昇格させる人事を内定した。勝俣恒久会長(72)の後任に原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長(64)が就任、両首脳が連携して福島第1原発事故で失墜した信頼回復と被害者への賠償を急ぐ。6月下旬に開く株主総会後の取締役会で正式決定する。
【表で確認】会社が持たないは本当か? 東電原価5.4兆うち8%が人件費
広瀬氏は内定後、東電本店で会見し、「被災された方々への賠償や原子力の廃止措置、電気の安定供給という3つの大きな柱に取り組みたい」と抱負を述べた。一方、下河辺氏は8日午後、枝野幸男経済産業相を訪ね、新体制が固まったことを報告、枝野経産相も了承した。新体制が固まったことを受け、枝野経産相は9日にも、1兆円の公的資金による資本注入などを盛り込んだ東電の「総合特別事業計画」を認定する。
東京電力の新社長に広瀬直己常務の内部昇格が決まった。福島第1原発事故後、難しい賠償対応を陣頭指揮してきた広瀬氏。新会長に就任する原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長は、その手腕が東電の再生にも発揮されるとの期待を込め、白羽の矢を立てた。ただ、その前途には、終わりが見えない賠償に加え、財務改善、社内改革という3つの“壁”が立ちはだかる。
「社長としても賠償をしっかり進めていく」
広瀬氏は8日の会見で、これまで担当役員として進めてきた原発事故の被害者対応の決意をこう語った。農協、漁協、自治体の首長や議員…。事故後、広瀬氏は、賠償を求め連日のように東電本店を訪れる被害者らの対応を一手に担ってきた。賠償をめぐっては、分厚く難解な説明書を被害者に送りつけるなど、東電は批判を浴び続けた。広瀬氏は1万人超に賠償対応人員を増やすなど手探りで賠償体制の構築に努め、その手腕は支援機構からも高く評価されている。
ただ、東電が総合特別事業計画で示した現時点の見積もり可能賠償額は2兆5462億円。これに対して実際の支払額はまだ8412億円にすぎない。「次から次へと賠償項目は広がっていて追いついていない」(広瀬氏)のが現状で、賠償が軌道に乗ったとはとてもいえない。国から資金支援を受ける賠償費用は、最終的に東電が毎年の利益から返済する必要がある。東電と支援機構は、平成26年3月期の黒字転換を計画しているが、その源泉は電気料金値上げと柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働だ。
しかし、4月から実施している平均17%の企業向け電気料金値上げでも、3月31日で契約が切れた5万件のうち3分の1が同意していない。家庭向け値上げはさらに厳しい反発を招くのは確実で、思い通りに収益を改善できる保証はない。25年度を想定している柏崎刈羽原発の再稼働も見通しは立っていない。国内の稼働原発は42年ぶりにゼロとなり、政府が安全を確認した関西電力大飯原発3、4号機(福井県)ですら再稼働は難航しており、大手銀行幹部は「東電の財務健全計画は絵に描いた餅」と切り捨てる。
一方、下河辺氏と広瀬氏が優先課題に掲げる社内改革については、早くも実現を危ぶむ声が出ている。社内基盤を持たない下河辺氏は、社内に経営改革本部を立ち上げ、自身は本部長に、広瀬氏を副本部長に、グループ社員5万人超の意識改革を進めていく方針だ。だが、東電社内では、社外の弁護士や会計士も取り込んだ経営トップ直轄チームによる組織改革強行への警戒感が強く、広瀬氏の求心力に疑問を投げかける向きもある。内向き、官僚的とも指摘される社内改革を進められなければ、原発事故で失った信頼を取り戻すことは難しく、値上げや原発再稼働も遠のく。広瀬氏が社内をどうまとめ、下河辺氏が進める改革を軌道に乗せるのか。それが果たせなければ、東電の再建計画はすぐにも崩壊する。
最終更新:5月9日(水)10時49分
自らの身を削る勇気はあるんだろうかね。
暗黒の稲妻