米、黒人少年射殺事件の波紋…厳然と残る人種差別問題
産経新聞 4月25日(水)7時55分配信



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米フロリダ州サンフォードの現場には十字架が立てられ、花束やぬいぐるみが置かれていた(黒沢潤撮影)(写真:産経新聞)
 米フロリダ州で丸腰の黒人少年を射殺した自警団員が「正当防衛」を理由に1カ月以上も逮捕されなかった事件について、全米の黒人の間から「人種差別だ」と怒りの声が上がっている。警察の対応や報道をめぐっても人種や政党支持者間で見解が分かれており、米国では黒人大統領が誕生してもなお、ぬぐいがたい人種問題が社会の底流にある事実を見せつけている。(フロリダ州サンフォード 黒沢潤)

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 ◆十字架に寄せ書き

 「17年で命を散らしたあなたに私たちは永遠に寄り添い続ける」。白人の富裕層が多く住むサンフォードの住宅街。男子高校生トレイボン・マーティンさん=当時(17)=が射殺された現場近くの十字架には友人らの寄せ書きが添えられていた。

 2月26日夜、コンビニから歩いて帰る途中のトレイボンさんは、ヒスパニック系白人の自警団員に不審者と思われて呼び止められ、もみあった末に射殺された。自警団員は正当防衛と主張して釈放されたため、全米で黒人の抗議デモが起きた。

 「トレイボンが白人だったら、殺されただろうか。自警団員が黒人ならすぐ釈放されただろうか」。サンフォードで高校生の娘を持つ黒人の主婦、キャリーさん(49)は憤慨して語った。

 「母の涙に色はない」。サンフォードでは事件後、少年の母が流す涙に“人種の垣根”はないと訴えるTシャツが黒人の間で千枚以上も売れた。自警団員は今月中旬に一転、第2級殺人容疑(計画性の薄い殺人罪)で逮捕されたが、23日未明までに保釈された。

 米南部の人種差別問題に詳しい米自由人権協会フロリダ支部の幹部デレク・ニュートン氏は「フロリダでも他の州でも(犯罪を実際に犯したかどうかにかかわらず)黒人の拘束件数は異常に多い」と指摘。フロリダ国際大学のクリス・ジラルド教授(社会学)も「(黒人を疑わしいとみて捜査を進める)“プロファイリング”は公に糾弾されてはいるが、多くの警察署は放棄していない」とし、黒人差別は厳然と残っていると強調した。

 ◆関心度合いに開き

 射殺事件への黒人と白人の関心の度合いには開きがある。世論調査によれば、米メディアの報道を丹念に追いかけていると答えた黒人が58%だったのに対し、白人は24%にとどまった。

 保守派の白人ジャーナリスト、ジョナー・ゴールドバーグ氏はシカゴ・トリビューン紙上で、黒人デモに参加する著名公民権運動家を「古びた人種産業」と形容、「50年前のプリズム」で世間を見て現状を過剰にあおっていると述べた。

 他の保守派論客も、黒人指導者ジェシー・ジャクソン師がかつて「深夜、私の後ろを歩く男を振り返ってみたとき白人であれば安心する」と語った言葉を引用し、米社会で黒人を見る目が厳しいのは黒人にも責任がある、と主張している。

 今回の事件報道を「過剰だ」と答えたのは、民主党支持者では25%だが、共和党支持者では56%と倍以上になった。

 ◆オバマ氏遺族に同情

 オバマ大統領は事件後、「私に息子がいたらトレイボンに似ていただろう」と述べ、遺族に同情を寄せた。共和党の指名争いに参戦したが、撤退がささやかれるギングリッチ元下院議長は、黒人の少年の死にことさら焦点を当てた大統領発言を「恥ずべきだ」と批判するなど、政党間の温度差も浮き彫りになっている。共和党内では大統領選を前に、事件がオバマ氏を利することへの警戒感があるようだ。

 射殺事件を機に改めて注目を浴びた米国の人種問題がオバマ大統領のもとで改善したか否かについて、ピッツバーグ大学のデービッド・ハリス教授(法学)は「(共和党の事実上の大統領候補である)ロムニー氏は黒人が抱える諸問題の解決に消極的な姿勢だが、オバマ氏の『人種を超越した社会』実現の約束だって誇張だ」と述べ、「答えはノーだ」と言明した。

最終更新:4月25日(水)9時47分

同じ生命を持った人間なのに何故こんな事に・・・。

暗黒の稲妻