妻や親の介護をする男性介護者の悩みや課題を取材しました。
フジテレビ系(FNN) 4月23日(月)13時18分配信

家族のあり方が変化し、妻や親の介護をする男性の介護者、いわゆる「ケアメン」が増えています。
男性だからこそ、陥りやすい悩みや課題。
現場を取材しました。

ミシンを相手に奮闘するのは、神奈川・川崎市の伊藤金政さん(68)。
縫っているのは、妻のズボンだった。
一緒に暮らす妻の公子さん(64)は、若年性認知症。
一見、病気には見えない公子さんだが、1人では玄関のドアを開けられなかったり、台所の消毒液を飲んでしまったりと、症状は確実に進行している。
金政さんは、2軒のコンビニを経営し、忙しい毎日を送っていたが、5年前に、公子さんが認知症と診断され、店をたたむことを決意した。
介護に専念することにした。
今では、3食の炊事もお手のもの。
しかし、介護を始めた当初は、公子さんの症状からくる言動に、イライラすることも多くあったという。
社会との接点を断たれたと感じていたからだった。
金政さんは「介護ばっかりやってる毎日、その先に、開けるような明るいような未来がないじゃないですか」と語った。
現在、介護に携わる男性は、全国で100万人以上。
男性だからこそ抱えてしまう問題について、立命館大学の津止正敏教授は「社会との接点が、仕事一筋の男性たちが、今度は介護に入りますと、介護一筋になってしまうわけです。介護が始まって、男性の社会との接点がなくなって、孤立化の傾向を深めていく」と語った。
介護漬けの金政さんの生活に転機が訪れたのは、およそ2年前のことだった。
一念発起した金政さんは、訪問介護員2級の資格を取得した。
1年半前から、ヘルパーとして仕事を始めた。
この日、ヘルパーの仕事にやってきたのは、川崎市内の福祉施設。
脳性まひの男性の買い物に付き添った。
心のバランスを求めて、外での仕事を始めた金政さん。
ヘルパーの仕事で学んだことが、家での介護にも生かせるようになり、気持ちに余裕が出てきたという。
金政さんは「もう家でやることが、逆に何とも思わなくなった。仕事の延長線上みたいな感じで」と語った。
公子さんの介護があまり苦にならなくなったのは、ほかにも理由があった。
2カ月に1度開かれる、男性介護者の集い、通称「オヤジの会」に参加しているからだった。
オヤジの会は、東京・荒川区の男性介護者の会で、金政さんは、自宅から1時間以上かけて参加している。
なかなか本音を話さない男性介護者たちも、お酒が入ると、「怒っても怒っても無駄かと思うんです」、「親を介護するとなると、親って面倒見てもらってたから、やっぱりそんな姿見たくないというか」など、介護の悩みが出てくる。
これをさかなに、飲み会は続いた。
津止教授は「自分たちの悩みを共有するような場があるということは、非常に情緒的な安定につながっていくんだろうと思います。男性が、介護によって失われた社会との接点を、回復するわけ。もっともっと豊かにするわけです」と語った。
夕食を食べ終えた金政さんは、この日、公子さんに頼みごとをした。
介護を担う人の心の安定があって、初めていい介護ができる。
「公子しかいないな」と言って、金政さんは目を細めた。

孤立しやすいともいわれる男性介護者。
総務省は、5年ごとに、過去5年間で、介護や看護のために離職した人の調査をしている。
総務省の就業構造基本調査によると、1997年と2002年の調査では、それぞれ8万人以下だったが、最も新しい2007年の調査では、10万900人と10万人を超えた。
増える男性介護者への理解やサポートが求められている。

最終更新:4月23日(月)22時39分

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暗黒の稲妻