地熱発電 国立公園で本格始動 規制緩和受け5案件
産経新聞 4月6日(金)7時55分配信


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景観に配慮し、山小屋風にデザインされた澄川地熱発電所のタービン棟。国立公園の地下に眠る資源を開発する=秋田県鹿角市(川上朝栄撮影)(写真:産経新聞)
 国立・国定公園内での地熱発電所の設備建設を条件付けで認める規制緩和を受け、公園内で相次いで5つの地熱プロジェクトが本格始動する。福島県では出光興産や三菱マテリアルなど異業種9社が来週にも地元自治体と意見交換を開始。北海道では石油資源開発や丸紅がそれぞれ調査に乗り出すことがわかった。天候に左右される太陽光・風力発電に比べ、地熱の稼働率は7割と高い。採算性確保が普及のカギになっている。

 福島県の調査には、このほか三菱商事や石油資源開発、三井石油開発、住友商事などが参加。福島市などにある磐梯朝日国立公園の一切経山(いっさいきょうざん)や東吾妻(ひがしあづま)、安達太良(あだたら)北など6カ所で調査する。出力は原発1基の約4分の1相当の最大27万キロワットを計画。地熱発電では国内最大だ。資源量が確定すれば事業化に向けた会社を設立する。

 北海道では、上川町の白水沢(しろみずさわ)での事業に丸紅が名乗りをあげ、平成25年度から地表調査に入るほか、石油資源開発は釧路市での調査を予定。秋田県湯沢市の小安(おやす)地域では出光などが地表調査の次段階の掘削調査を今年度内に実施し、東北電力グループも同市木地山(きじやま)地域などで地表調査に入る。

 日本は米国とインドネシアに次ぐ世界3位の熱水資源があるが、その約8割は規制の厳しい国立・国定公園内にある。このため普及が進まず、出力は計約54万キロワットと世界8位。新たな商業用地熱は、11年に運転開始した東京電力の八丈島地熱発電所(東京都八丈町)が最後だ。

 そんな中で環境省は3月末、自然保護地域でも蒸気を掘るための垂直掘りを容認し、事業環境は大きく変わった。経済産業省も石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じて支援。安定した蒸気が得られるかを確認する試掘を行うため24年度予算に約150億円を計上している。

 地熱発電は国立・国定公園以外でも活発で、岩手県八幡平市での事業など7件が進行中。温度の低い蒸気でも発電できる小規模地熱も12件にのぼる。

 各社の積極姿勢は、7月に導入される再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見据えた動きでもある。問題は採算性だ。弘前大の村岡洋文教授は「初期投資をカバーできるかどうかの採算性の問題は、買い取り価格に大きく左右される」と指摘。複数省庁にまたがる規制窓口の一本化も今後の課題になっている。

最終更新:4月6日(金)8時19分

国立・国定公園内での地熱発電所の設備建設を条件付けで認める規制緩和を受け、公園内で相次いで5つの地熱プロジェクトが本格始動する様だ。

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