「バブルの塔」シーガイア買収は“いばらの道” セガサミーの本気度
フジサンケイ ビジネスアイ 4月6日(金)8時15分配信


拡大写真
宮崎市のリゾート施設「シーガイア」(写真:フジサンケイビジネスアイ)
 娯楽業界のトップ企業が、経営不振にあえぐ「バブルの塔」の再生に動き出した。セガサミーホールディングスは、宮崎市の大型リゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾートの買収を3月末に完了した。だが、パチスロ機で約3割のトップシェアを誇るセガサミーも、ゲームセンターを除く娯楽施設の運営経験は乏しく、大型複合リゾートの運営は未体験だ。投資ファンドも見放し、セガサミー自身も「いばらの道」と認めるシーガイアの再生。買収の狙いはどこにあるのか。

[フォト] ディズニー独り勝ちに待った! ハウステンボス、USJもあの手この手

 「アジアナンバーワンのリゾート施設を目指す」 3日にシーガイアで会見したセガサミーの里見治(はじめ)会長兼社長は、今後の目標や経営改善策の一端を披露した。「シェラトン」ブランドのホテルや、日本屈指のプロゴルフ大会「ダンロップフェニックストーナメント」など、既存の施設やイベントを存続するほか、シーガイアの象徴で閉鎖中の世界最大級の屋内プール「オーシャンドーム」は、半年をかけて再活用の道を探る。地元から再活用の要望が強かった「オーシャンドーム」で、セガサミーが思い描くのがグループ内で抱えるコンテンツやソフトの有効活用だ。「例えば(オーシャンドームで)サンリオのショーをやる」。里見会長は2007年に筆頭株主となり、「ハローキティ」などのキャラクターグッズを販売するサンリオの名を挙げる。

 さらに将来的なカジノ参入にも前向きな姿勢を示した。シーガイアは宮崎県などが出資する第三セクターとして1993年に開業。リゾート法の第1号に指定され、2000億円をつぎ込んだ他に類を見ない大型施設として注目されたが、バブル期に立てた甘い見通しや利用客低迷がたたり、8年後の01年には3000億円以上の負債を抱え、会社更生法の適用を申請して経営破綻した。その後、投資ファンドのリップルウッド(現RHJインターナショナル)が経営を継いだが、経営は好転せず、最終黒字になったのは10年3月期だけ。翌11年3月期は口蹄(こうてい)疫の流行などが打撃になり、再び赤字に転じた。

 セガサミーは、この施設をわずか4億円で手に入れた。債務の肩代わり分を含めても58億円に過ぎない。同社の連結売上高4000億円超から考えると、大きな投資ではないが、誰もが尻込みするシーガイアの再生を買って出た背景には、同社の強烈な危機感がある。現在、売上高の3分の2を占める主力のパチスロ機などの遊技機事業は事業範囲が国内に限られ、人口減で先細りになる可能性がある。さらに遊技機に続く規模を持つ家庭用ゲームソフトも足元の国内では市場が縮小しているうえ、ヒット作の有無によって業績が変動しやすい。

 成長するグローバル市場に打って出る新たな柱がほしい-。着目したのが、リゾートを含むアミューズメント施設の運営事業だ。アミューズメント施設事業の11年3月期の売上高は440億円と全体の10分の1程度に過ぎないが、すでにアラブ首長国連邦のドバイの現地企業に大型ゲームセンターの運営ライセンスを供与し、北海道ではゴルフ場運営に乗り出している。アジアの利用客も多いシーガイアで積み上げた運営ノウハウを海外展開して他のアミューズメントに生かし、売り上げの拡大を図る-。シーガイア買収の裏には、新たな成長エンジンを手に入れたいセガサミーの深謀遠慮がある。

 買収に、地元からは安堵(あんど)の声が漏れる。シーガイアをめぐっては、中国やエジプトの企業による買収話も一時浮上したとされ、しかもここにきて再度の経営危機がささやかれていた。同時期に開業し、やはり経営破綻に追い込まれた長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」は、10年にHISが経営を引き継ぎ、11年9月期に初の営業黒字を達成している。地元財界関係者は「“タイムリミット”の直前に日本企業が救ってくれるとは。ハウステンボスのようになれば」と期待する。だがフェニックスリゾートのある社員は「経営が上向く保証はない」と不安もみせる。

 「ハゲタカ」と恐れられ、企業再生を本職とするリップルウッドですら投資回収に失敗したことを考えれば、再生が容易でないことは明白だ。国内有数のリゾート地が不死鳥のごとくよみがえることができるのか。セガサミーの本気度が問われている。(井田通人、高木克聡)

最終更新:4月6日(金)11時58分

交通の便悪過ぎる気がするんだけど。
新幹線逆だし。

暗黒の稲妻