高木新体制で「落合色」は一掃された!?
6番井端、7番平田に込められた意図。
セ・リーグで唯一、開幕カードを無敗で終えたのは、優勝候補大本命の巨人でも注目度ナンバーワンのDeNAでもなく、2010、2011年のリーグ覇者・中日だった。
広島との開幕戦をエース・吉見一起の好投により勝利で飾ると、2戦目は9得点で快勝。3戦目こそ終盤に同点とされ引き分けとなったものの、2勝1分は上々のスタートと言える。
開幕前までは、前年の深刻な得点力不足は高木新体制となっても解消できていないのではないかと、疑問を抱いていたファンも少なくなかっただろうが、いざシーズンが始まってみれば、「強い中日」は健在だった。
「落合色」は本当に一掃されたのか?
一般的に、高木守道が監督に就任してからの中日は変わったと言われている。
チームスローガンを「Join us ファンと共に」とし、春季キャンプ以降、どのチームよりもファンサービスに力を注ぐ。チーム編成にしても、投手担当の権藤博をはじめ、平野謙、宇野勝らOBを招聘し、コーチ陣をほぼ一新するなどその装いは劇的に変化した。
周囲はそれを、「落合色の一掃」と見る。
落合博満が指揮を執っていた昨年までは、彼自身が「勝つことが一番のファンサービス」と言っていたように勝利至上主義の印象が強く、直接的なファンサービスが希薄だったことは確かだ。それは、「コメントも戦術のひとつ」と落合自身が捉えていたことに起因するのだが、4度のリーグ制覇と1度の日本一を達成した実績をみれば、その手法を「正しくない」とは断言できない。
だが高木監督は、時に「今日は話さなくていいの?」と報道陣に声をかけ、テレビによる試合後の監督インタビューにも必ず応じている。
とはいっても、常勝の礎を築いた前任の戦術まで壊してしまうほど中日は愚かなチームではないし、高木監督にしてもそれは理解しているはずだ。だからこそ指揮官は、「そんなに力んだり気持ちを高ぶらせることはありませんからね」と泰然自若の姿勢を貫けるのだ。
野球に関しては、落合のやり方を踏襲しつつも新たなスタイルを確立させる。これこそ、今季の中日が目指すものであるはずだ。
変わらない攻撃スタイルと変わった打順。
それは、開幕カードの攻撃だけでもはっきりと感じとることができた。
ラインナップは、10年ぶりに古巣に復帰した山崎武司を除けば昨季と同じであるし、1番が出塁して2番がバントで送り、クリーンナップで走者を還すという、攻撃スタイルも変わりはない。
しかし、打線ではしっかりと新たな試みを打ち出しており、それが正しかったことも実証してみせた。
6番と7番。ここが、高木新体制の大きなポイントとなる。
高木監督は、「チャンスで回ってくることが多いから」と、6番に井端弘和を据えた。狙い球がくるまでファウルでカットするといった、粘り強い打撃が身上の井端が6番に入ることで、それまで中軸頼みだった打線の得点機はさらに増す。
実は、落合政権時代でも「6番・井端」は最重要課題とされていた。だが、'10年の日本シリーズなど何度か試したが機能せず、結局、井端は上位打線を任されることが多かった。
原因は、7番が井端を生かすことができなかったから。それが今季、開幕3試合を見る限り、平田良介がきっちりと役割を果たすことで、確実に得点機をものにすることができている。
7番・平田の意識改革が6番・井端を生かす。
開幕戦、5回裏の攻撃が、それを証明する最も分かりやすいシーンだった。
1点を先制し、なおも2死一、二塁とチャンスの場面。井端がカウント3-2からセカンドへ内野安打、平田が3-2から8球目をセンター前へ弾き返し、6、7番で2点を追加した。この試合、4対2というスコアだったことからも、この2点は事実上の決勝点となった。
「本当はガツガツ行くタイプなんですけど、それまで打てていなかったんで、そういう気持ちをなくそうと思って打席に立ちました」
この打席について平田はそう振り返る。彼のそんな意識が井端の力を生かし、ひいては4打席目の本塁打へと繋がったのではないだろうか。
「Join us ファンと共に」の本当の目的とは?
「井端は本来のしぶとさを出してくれた。平田にしても(凡打だった)前の打席を踏まえてくれたからこそヒットを打てたし、それがあったからホームランも出たと思う」
高木監督はそう言って笑みを浮かべた。
2戦目も井端と平田で4打点を叩き出したことについて、「6、7番があれだけ打ってくれると点が取れる」と手ごたえを掴んでいた。ふたりが無安打だった3戦目がわずか2点しか取れなかったことからも、今季の打線のキーマンは6番・井端、7番・平田であることは、まず間違いないだろう。
「これからが面白いと思いますよ」
高木監督はそう言っていた。常勝・中日の全てをたった3試合で理解するのは難しい。1試合、1試合、ひとつひとつのプレーに括目し、指揮官の言葉に耳を傾ける。そうすることで、中日の野球の本質が見えてくるはずだ。
そうやって、中日というチームに注目を集めることこそが、今季のスローガンである「Join us ファンと共に」の本当の目的なのかもしれない。
(記事元:NumberWeb)
URL:http://number.bunshun.jp/articles/-/212255/
記事のみ紹介。
暗黒の稲妻
6番井端、7番平田に込められた意図。
セ・リーグで唯一、開幕カードを無敗で終えたのは、優勝候補大本命の巨人でも注目度ナンバーワンのDeNAでもなく、2010、2011年のリーグ覇者・中日だった。
広島との開幕戦をエース・吉見一起の好投により勝利で飾ると、2戦目は9得点で快勝。3戦目こそ終盤に同点とされ引き分けとなったものの、2勝1分は上々のスタートと言える。
開幕前までは、前年の深刻な得点力不足は高木新体制となっても解消できていないのではないかと、疑問を抱いていたファンも少なくなかっただろうが、いざシーズンが始まってみれば、「強い中日」は健在だった。
「落合色」は本当に一掃されたのか?
一般的に、高木守道が監督に就任してからの中日は変わったと言われている。
チームスローガンを「Join us ファンと共に」とし、春季キャンプ以降、どのチームよりもファンサービスに力を注ぐ。チーム編成にしても、投手担当の権藤博をはじめ、平野謙、宇野勝らOBを招聘し、コーチ陣をほぼ一新するなどその装いは劇的に変化した。
周囲はそれを、「落合色の一掃」と見る。
落合博満が指揮を執っていた昨年までは、彼自身が「勝つことが一番のファンサービス」と言っていたように勝利至上主義の印象が強く、直接的なファンサービスが希薄だったことは確かだ。それは、「コメントも戦術のひとつ」と落合自身が捉えていたことに起因するのだが、4度のリーグ制覇と1度の日本一を達成した実績をみれば、その手法を「正しくない」とは断言できない。
だが高木監督は、時に「今日は話さなくていいの?」と報道陣に声をかけ、テレビによる試合後の監督インタビューにも必ず応じている。
とはいっても、常勝の礎を築いた前任の戦術まで壊してしまうほど中日は愚かなチームではないし、高木監督にしてもそれは理解しているはずだ。だからこそ指揮官は、「そんなに力んだり気持ちを高ぶらせることはありませんからね」と泰然自若の姿勢を貫けるのだ。
野球に関しては、落合のやり方を踏襲しつつも新たなスタイルを確立させる。これこそ、今季の中日が目指すものであるはずだ。
それは、開幕カードの攻撃だけでもはっきりと感じとることができた。
ラインナップは、10年ぶりに古巣に復帰した山崎武司を除けば昨季と同じであるし、1番が出塁して2番がバントで送り、クリーンナップで走者を還すという、攻撃スタイルも変わりはない。
しかし、打線ではしっかりと新たな試みを打ち出しており、それが正しかったことも実証してみせた。
6番と7番。ここが、高木新体制の大きなポイントとなる。
高木監督は、「チャンスで回ってくることが多いから」と、6番に井端弘和を据えた。狙い球がくるまでファウルでカットするといった、粘り強い打撃が身上の井端が6番に入ることで、それまで中軸頼みだった打線の得点機はさらに増す。
実は、落合政権時代でも「6番・井端」は最重要課題とされていた。だが、'10年の日本シリーズなど何度か試したが機能せず、結局、井端は上位打線を任されることが多かった。
原因は、7番が井端を生かすことができなかったから。それが今季、開幕3試合を見る限り、平田良介がきっちりと役割を果たすことで、確実に得点機をものにすることができている。
7番・平田の意識改革が6番・井端を生かす。
開幕戦、5回裏の攻撃が、それを証明する最も分かりやすいシーンだった。
1点を先制し、なおも2死一、二塁とチャンスの場面。井端がカウント3-2からセカンドへ内野安打、平田が3-2から8球目をセンター前へ弾き返し、6、7番で2点を追加した。この試合、4対2というスコアだったことからも、この2点は事実上の決勝点となった。
「本当はガツガツ行くタイプなんですけど、それまで打てていなかったんで、そういう気持ちをなくそうと思って打席に立ちました」
この打席について平田はそう振り返る。彼のそんな意識が井端の力を生かし、ひいては4打席目の本塁打へと繋がったのではないだろうか。
「Join us ファンと共に」の本当の目的とは?
「井端は本来のしぶとさを出してくれた。平田にしても(凡打だった)前の打席を踏まえてくれたからこそヒットを打てたし、それがあったからホームランも出たと思う」
高木監督はそう言って笑みを浮かべた。
2戦目も井端と平田で4打点を叩き出したことについて、「6、7番があれだけ打ってくれると点が取れる」と手ごたえを掴んでいた。ふたりが無安打だった3戦目がわずか2点しか取れなかったことからも、今季の打線のキーマンは6番・井端、7番・平田であることは、まず間違いないだろう。
「これからが面白いと思いますよ」
高木監督はそう言っていた。常勝・中日の全てをたった3試合で理解するのは難しい。1試合、1試合、ひとつひとつのプレーに括目し、指揮官の言葉に耳を傾ける。そうすることで、中日の野球の本質が見えてくるはずだ。
そうやって、中日というチームに注目を集めることこそが、今季のスローガンである「Join us ファンと共に」の本当の目的なのかもしれない。
(記事元:NumberWeb)
URL:http://number.bunshun.jp/articles/-/212255/
記事のみ紹介。
暗黒の稲妻