“内需の代表”日用品各社がグローバルへ脱皮 アジアでM&A・現地生産強化
フジサンケイ ビジネスアイ 4月2日(月)8時15分配信

 内需企業の“代表選手”とも言われてきた日用品メーカーが、「グローバル企業」への脱皮を図ろうとしている。円高を生かしたM&A(企業の合併・買収)に加え、現地生産も強化し、成長の軸足を海外に移しつつある。国内消費の伸びが見込めない中、海外で先行する欧米勢を追撃することができるのか、日本メーカーの成長戦略が問われることになりそうだ。

 「日本では殺虫剤のシーズンが夏場のみだが、東南アジアでは年間を通じて使用する。(海外事業を)成長の柱として育てていきたい」。マレーシアとインドネシアの殺虫剤生産販売会社2社を買収したフマキラーの大下一明社長は3月21日の会見でこう力を込めた。

 同社の海外売上高比率は現在約2割だが、買収によって35%にまで一気に高まる見込み。アジア各国では蚊取り線香が主力商品だが、所得向上につれて電気蚊取り器などの高機能型製品の需要も高まるとにらむ。

 「新興国ではマラリアなど虫が媒介する伝染病で命を落とすケースは後を絶たない。生活必需品として必ず伸びる」(大下社長)と自信を示しており、今後はインドやメキシコでも生産販売の強化を図る方針だ。

 そのフマキラーとの資本・業務提携関係を活用して、海外市場に攻勢をかけようともくろむのはエステー。

 同社は現在、アジアでは、韓国やタイなど11カ国・地域で、芳香剤や防虫剤を販売しているが、中でも注目しているのが、東南アジアで最も人口が多く、フマキラーが存在感を発揮しているインドネシアだ。エステーはフマキラーがインドネシアに持つ生産拠点で芳香剤の生産委託を行っているが、さらに「アジア各国にあるフマキラーの流通・販売網を活用したい」(鈴木喬会長)との考えを示しており、連結売上高に占める海外の割合を現状の4%から将来的には10%にまで引き上げる計画だ。

 さらにフマキラー、エステーとの資本提携がある家庭用洗剤中堅のNSファーファ・ジャパンもインドネシアでの生産販売を検討。「最終的には1つの会社になるべきだ」(斉藤洋会長)とまで踏み込むなど、海外市場進出を引き金にした再編も示唆している。

 現地生産を強化する動きも顕著だ。ライオンは中国で、歯磨き粉や歯ブラシなどオーラルケア製品の生産能力を3倍に増強する。喫煙者向けの歯磨き粉「ザクト」など、日本でも販売しているブランドを展開。沿岸部のスーパーなどで、高付加価値型製品として販売する。

 同社は衣料用洗剤市場への参入も視野に、中国で洗剤のテスト販売を実施。オーラルケア製品の生産・販売拡大は、洗剤市場への切り込みを前に、ブランド力を高める役割を担う。

 ユニ・チャームはインドでの現地生産を加速する。インドの日用品市場はP&Gとキンバリークラークの米国勢が大半のシェアを握り、3番手のユニ・チャームは1割程度。挽回(ばんかい)に向けユニ・チャームはインド国内での売上高を3年後に倍増し、100億円超にまで引き上げる計画をぶち上げる。年内に2カ所目の紙おむつ工場の建設に入り、生産量を倍増させる。

 強気の戦略を支えるのがインドの人口増加だ。インドでは毎年1000万人ペースで人口が増えており、200億~300億円の紙おむつ市場は「毎年数十%のスピードで伸びていく」(同社)とみている。

 グローバル化を加速する国内日用品各社だが、自動車や家電と比べ、海外進出が出遅れただけに、認知度は低いのが現状。世界の日用品市場を席巻する英蘭ユニリーバは高いブランド力に加え、新興国市場向けに安価な小分けシャンプーを投入するなど、ブランドと価格両面でリードしている。

 新興国開拓には「いかにその国々の特性に合った製品を繰り出すかが重要」(アナリスト)。国内各社は定評のある商品開発力を生かし、現地ニーズにあった価値を加えられるかがカギになりそうだ。(川上朝栄、米沢文)

最終更新:4月2日(月)10時52分

内需企業の“代表選手”とも言われてきた日用品メーカーが、「グローバル企業」への脱皮を図ろうとしている様だ。

暗黒の稲妻