<AIJ>監視委調査と食い違い 浅川社長、参考人質疑
毎日新聞 3月28日(水)2時31分配信
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衆院財務金融委に参考人として臨み、質問を聞くAIJ投資顧問の浅川和彦社長(左)とアイティーエム証券の西村秀昭社長=国会内で2012年3月27日午後0時17分、藤井太郎撮影
年金消失問題で強制調査を受けたAIJ投資顧問の浅川和彦社長(59)は27日、衆院財務金融委員会に参考人として出席し、運用実績の改ざんを認めつつ「損失を取り戻せると思った」と強気の姿勢を見せた。だが、これまでの証券取引等監視委員会の調査との矛盾点も目立つ。08年のリーマン・ショックで損失はないとしたことや自身の報酬額、「だますつもりはなかった」としながら内密にしていた投資事業組合を利用した隠蔽(いんぺい)の仕組み。関連証券会社の役割と合わせ、大きく四つの疑問点が浮かんだ。
【英領バージン諸島の管理会社を通じて】AIJ社長ら2人、報酬45億円
「リーマン・ショックではプラスが出ていた」。参考人質疑で浅川社長は強調した。
だが、監査法人の監査報告書と、AIJのファンドを受託した香港の投資銀行の出入金記録を基にした監視委の調査では、AIJは金融派生商品の売買失敗で毎年損失を計上。リーマン・ショックのあった08年度の損失は37億円、09年度には501億円に膨らんだ。02年度から9年間で黒字は一度もなく、損失額は計1092億円。関係者は「リーマン・ショックを含んだ時期でばくちのような運用に失敗している。(プラスだったとの発言は運用失敗を認めない)ご都合主義の言い逃れ」とみる。
また、浅川社長はAIJ側の報酬45億円のうち27億円は関連のアイティーエム証券(ITM)に手数料として支払ったと証言。だが、関係者によると、この手数料を巡りAIJとITMの主張が食い違っているという。このためAIJ側の報酬額は上積みされ、浅川社長の個人報酬も自ら明かした「7000万円前後」を上回る可能性があるという。
今後の監視委の調査で大きな焦点になるとみられるのが、顧客に内密にしてきた投資事業組合を利用した払い戻しの仕組みだ。浅川社長は二つの投資事業組合を通して新規顧客からの受託資産をそのまま解約顧客の償還金に充てた疑いがある。
浅川社長は再三にわたり「だましたつもりはない」と繰り返したが、この仕組みでは、顧客に販売した私募投資信託「AIMグローバルファンド」自体を動かさないで資金が流れる。損失隠蔽のための仕組みだった疑いが強く、監視委はひときわ関心を寄せている。
また、この仕組みには解約・転売の窓口としてITMが介在。同社の西村秀昭社長は参考人質疑で「被害者」の立場を示したが、監視委はITMの役割の解明も進めている。【川名壮志】
◇AIJの運用実績「虚偽と気づかず」
参考人質疑には、各地の厚生年金基金にAIJを紹介した旧社会保険庁OBで年金コンサルタント会社経営の石山勲氏や、AIJの金融商品を販売した関連会社のアイティーエム証券の西村秀昭社長も出席。2人ともAIJの運用実績が虚偽だったことを知らなかったと強調した。
石山氏はAIJの扱うファンドを基金側に説明したことを認めつつ、基金関係者に「引き合わせるようなことはしていない」と説明。AIJの不正については「全く気付かなかった。新聞報道で初めて知った」と語った。西村氏は「虚偽との認識は持っていなかった。どちらかと言えば被害者」とする一方、「販売には責任があり、その意味では加害者」とも述べた。
最終更新:3月28日(水)2時31分
年金消失問題で強制調査を受けたAIJ投資顧問の浅川和彦社長は27日、衆院財務金融委員会に参考人として出席し、運用実績の改ざんを認めつつ「損失を取り戻せると思った」と強気の姿勢を見せたそうだ。
暗黒の稲妻
毎日新聞 3月28日(水)2時31分配信

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衆院財務金融委に参考人として臨み、質問を聞くAIJ投資顧問の浅川和彦社長(左)とアイティーエム証券の西村秀昭社長=国会内で2012年3月27日午後0時17分、藤井太郎撮影
年金消失問題で強制調査を受けたAIJ投資顧問の浅川和彦社長(59)は27日、衆院財務金融委員会に参考人として出席し、運用実績の改ざんを認めつつ「損失を取り戻せると思った」と強気の姿勢を見せた。だが、これまでの証券取引等監視委員会の調査との矛盾点も目立つ。08年のリーマン・ショックで損失はないとしたことや自身の報酬額、「だますつもりはなかった」としながら内密にしていた投資事業組合を利用した隠蔽(いんぺい)の仕組み。関連証券会社の役割と合わせ、大きく四つの疑問点が浮かんだ。
【英領バージン諸島の管理会社を通じて】AIJ社長ら2人、報酬45億円
「リーマン・ショックではプラスが出ていた」。参考人質疑で浅川社長は強調した。
だが、監査法人の監査報告書と、AIJのファンドを受託した香港の投資銀行の出入金記録を基にした監視委の調査では、AIJは金融派生商品の売買失敗で毎年損失を計上。リーマン・ショックのあった08年度の損失は37億円、09年度には501億円に膨らんだ。02年度から9年間で黒字は一度もなく、損失額は計1092億円。関係者は「リーマン・ショックを含んだ時期でばくちのような運用に失敗している。(プラスだったとの発言は運用失敗を認めない)ご都合主義の言い逃れ」とみる。
また、浅川社長はAIJ側の報酬45億円のうち27億円は関連のアイティーエム証券(ITM)に手数料として支払ったと証言。だが、関係者によると、この手数料を巡りAIJとITMの主張が食い違っているという。このためAIJ側の報酬額は上積みされ、浅川社長の個人報酬も自ら明かした「7000万円前後」を上回る可能性があるという。
今後の監視委の調査で大きな焦点になるとみられるのが、顧客に内密にしてきた投資事業組合を利用した払い戻しの仕組みだ。浅川社長は二つの投資事業組合を通して新規顧客からの受託資産をそのまま解約顧客の償還金に充てた疑いがある。
浅川社長は再三にわたり「だましたつもりはない」と繰り返したが、この仕組みでは、顧客に販売した私募投資信託「AIMグローバルファンド」自体を動かさないで資金が流れる。損失隠蔽のための仕組みだった疑いが強く、監視委はひときわ関心を寄せている。
また、この仕組みには解約・転売の窓口としてITMが介在。同社の西村秀昭社長は参考人質疑で「被害者」の立場を示したが、監視委はITMの役割の解明も進めている。【川名壮志】
◇AIJの運用実績「虚偽と気づかず」
参考人質疑には、各地の厚生年金基金にAIJを紹介した旧社会保険庁OBで年金コンサルタント会社経営の石山勲氏や、AIJの金融商品を販売した関連会社のアイティーエム証券の西村秀昭社長も出席。2人ともAIJの運用実績が虚偽だったことを知らなかったと強調した。
石山氏はAIJの扱うファンドを基金側に説明したことを認めつつ、基金関係者に「引き合わせるようなことはしていない」と説明。AIJの不正については「全く気付かなかった。新聞報道で初めて知った」と語った。西村氏は「虚偽との認識は持っていなかった。どちらかと言えば被害者」とする一方、「販売には責任があり、その意味では加害者」とも述べた。
最終更新:3月28日(水)2時31分
年金消失問題で強制調査を受けたAIJ投資顧問の浅川和彦社長は27日、衆院財務金融委員会に参考人として出席し、運用実績の改ざんを認めつつ「損失を取り戻せると思った」と強気の姿勢を見せたそうだ。
暗黒の稲妻