大飯原発 「地元了解」どう導く
産経新聞 3月24日(土)7時55分配信
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大飯原発周辺の主な断層(写真:産経新聞)
内閣府の原子力安全委員会は23日、関西電力による大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全性評価を「妥当」と判断したが、活断層が連動する地震の揺れに耐えられるかなど、本質的な安全判断には踏み込まなかった。次の焦点は再稼働に向けた政治判断に移るものの、地元が求める原発の必要性の根拠や新たな安全基準は政府から示されず、原子力規制庁の発足も遅れるなど「地元了解」のハードルは高い。
[フォト]大飯原発の4号機と3号機
■再稼働 3つのハードル
原子力安全委員会の「妥当」判断に対し、政府の再稼働に向けた対応は遅れている。政府は再稼働に向けて、近く地元の説得に乗り出すが、地元が要求する3つのハードルを越えられなければ、「地元了解」も遠のくことになる。
◆需給把握
「原発が必要かどうかをしっかり判断しなければいけない」。枝野幸男経済産業相は23日の参院予算委員会で、再稼働の政治判断の際に、原発の必要性を明確に示す考えを強調した。
だが、その根拠になる電力需給状況の把握は進んでいない。政府は昨年11月に、原発ゼロで猛暑の場合、来夏に1656万キロワットの供給力が不足すると発表した。しかし、この試算には火力発電の増強などが加味されておらず、最新の需給の把握には「4月下旬から5月上旬」(枝野経産相)までかかる。
当然、地元自治体からは、「電力不足の実態が分からないのに再稼働は認められない」(福井県)との声が上がる。政府の「原発を再稼働させれば、大幅な節電や電気料金値上げを回避できる」(資源エネルギー庁幹部)との主張も、具体的な数値がなければ説得力に欠ける。
◆暫定基準
耐性検査に代わる暫定基準づくりも遅れている。重大事故への対応策を検討してきた原子力安全・保安院は23日になってようやく、「想定を超えることは起こりえるとの前提で事故進展を防止すべきだ」などとする報告書案をまとめた。
福島第1原発事故を踏まえ、2月8日に策定した非常用電源の配備などの30項目の対策とともに、「暫定基準の方向性を示したもの」(保安院幹部)だ。
ただ、非常用電源は何時間分あればいいかなど、最終的な暫定基準の数値化の時期は不透明。保安院が事故の検証を始めたのは、昨年9月からで、「もっと早く着手していれば、暫定基準も早くできていたはずだ」との指摘もある。
◆規制庁発足
肝心の原子力規制庁は、発足のめどすら立たない。政府は1月末に原子力規制関連法の改正法案を閣議決定し、規制庁の4月1日発足を目指したものの、野党が独立性の高い「三条委員会」にすべきだと反発し、審議は始まっていない。
国会の原発事故調査会の報告書が出る6月まで発足を待つべきだとの声もあり、「安全規制の主体が不明確なままでは再稼働への同意を求めるのは厳しい」(与党幹部)状況だ。
■3断層連動 盛り込み鍵
ストレステスト(耐性検査)の1次評価について、「再稼働の可否判断ではない」とした内閣府原子力安全委員会は安全性の判断そのものは示さず、「1次評価で再稼働は可能」とする政府とのスタンスの差は埋まっていない。一方、国が進める安全基準の見直しでは大飯原発周辺3断層の連動など新たな検討課題も浮上。最新の知見をどこまで反映するのか、「政治判断」の流動的要素になりそうだ。
関電は、大飯3、4号機の1次評価を経済産業省原子力安全・保安院に提出。地震は想定の最大の揺れ(基準地震動)の1・8倍(1260ガル)、津波は想定の4倍(11・4メートル)まで耐えられるとし、保安院は「妥当」と判断した。
安全委は妥当性の確認作業を行ったが、議論はシナリオ想定や計算方法の評価手法の確認にとどまり、安全性に関する本質的議論はされなかった。
安全委の班目(まだらめ)春樹委員長は「1次評価だけでは不十分。2次評価もやるべきだ」としており、立地自治体の疑問に十分答えられるかは微妙だ。
一方、関電が提出した評価は昨年10月1日時点のもので、それ以降の知見は反映されていない。一つの例が、活断層の連動だ。
保安院は今年1月、東日本大震災を受けて、従来は5キロ以上離れた活断層の連動は考慮しないとしてきたルールを見直すよう、電力各社に指示した。
大飯原発周辺には、陸側の「熊川断層」と、海側の若狭湾内に延びる2つの活断層があり、3断層の全長は約63キロに及ぶ。
ストレステスト評価時点では、海側2断層(全長約35キロ)の連動は考慮に入れたが、3断層連動は想定しなかった。
関電は2月末、3断層の連動について「可能性は極めて低い」とし、仮に3断層が連動したとしても、基準地震動の1・8倍は超えないと保安院に報告した。ただ、保安院は「計算の根拠が不明確だ」などとして、詳細な評価をするよう再度求めている。
新たに浮上した課題は、大飯原発に限らない。活断層の連動は北海道電力泊原発などでも再評価が進められており、安全性の余裕が変わる可能性もある。
新しい知見の扱いは現時点で定まっておらず、新知見にどう対応するかも、政治判断に向けた「地元理解」の鍵となりそうだ。
■「政治主導」不在 官僚答弁を連発
原子力安全委員会が関西電力大飯原発3、4号機のストレステスト1次評価結果を「妥当」としたことにより原発再稼働は政治マターとなった。ところが、野田佳彦首相は及び腰となり、この期に及んで説明責任を果たすどころか、再稼働に向けた関係閣僚会議の時期さえも明言しない。都合の悪いことは官僚機構に押しつける手口は菅直人前首相と同じ。もはや民主党が掲げた「政治主導」は見る影もない。
「報告書を読み込み、安全性が確認できた場合に初めて再稼働の必要があるかを判断します」
枝野幸男経済産業相は23日の参院予算委員会で官僚よりも官僚っぽい答弁を繰り返した。昨年5月、浜岡原発を強引に停止させ、他の原発の再稼働を困難にした張本人は菅氏だ。枝野氏は官房長官としてその片棒を担いだだけに再稼働を容認するのは、よほどバツが悪いとみえる。
来週中に関係閣僚会議で安全性を確認したところで2度目の同会議での再稼働の最終決断まで道のりは遠い。
最終決断前に、原発を所管する枝野氏が地元を説得するのは当たり前だが、自らが赴く「地元」の範囲さえ「総合的、政治的に判断する」と言葉を濁した。それどころか、滋賀県へのストレステストの説明については「私ではなく保安院が説明を求められた」と対応を押しつけた。
「政府を挙げて説明し理解を得る。私も先頭に立つ」(11日)と意気込んでいた首相も「枝野氏の答弁に尽きる」と逃げの一手。自ら説明責任を果たそうという気概は感じられない。
再稼働への批判が強まっている要因には、政府が新たな安全規制のあり方を示せないことも大きい。原子力規制庁は4月発足どころか、設置法案の審議入りすら見通せない。首相は27日、韓国・ソウルでの核安全保障サミットで原子力安全への取り組みを説明するというが、このままでは恥の上塗りとなる。
「原発を動かすかどうかは国が全責任を持って決定すべきだ。地元同意を言いだしたら福井県だけで収まらない」
橋下徹大阪市長は23日、こう批判した。地元に責任転嫁しようとする政府の魂胆はもはや見抜かれている。(千葉倫之)
最終更新:3月24日(土)9時40分
何故電力を使用する顧客の意見は全く無視されるのだろうか。
おおい町は事故が起こったらどの様に被害を被った他県地域に対して責任を取るつもりなのか。
この異様な迄の原子力に対する執着は一体何なのか。
暗黒の稲妻
産経新聞 3月24日(土)7時55分配信

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大飯原発周辺の主な断層(写真:産経新聞)
内閣府の原子力安全委員会は23日、関西電力による大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の安全性評価を「妥当」と判断したが、活断層が連動する地震の揺れに耐えられるかなど、本質的な安全判断には踏み込まなかった。次の焦点は再稼働に向けた政治判断に移るものの、地元が求める原発の必要性の根拠や新たな安全基準は政府から示されず、原子力規制庁の発足も遅れるなど「地元了解」のハードルは高い。
[フォト]大飯原発の4号機と3号機
■再稼働 3つのハードル
原子力安全委員会の「妥当」判断に対し、政府の再稼働に向けた対応は遅れている。政府は再稼働に向けて、近く地元の説得に乗り出すが、地元が要求する3つのハードルを越えられなければ、「地元了解」も遠のくことになる。
◆需給把握
「原発が必要かどうかをしっかり判断しなければいけない」。枝野幸男経済産業相は23日の参院予算委員会で、再稼働の政治判断の際に、原発の必要性を明確に示す考えを強調した。
だが、その根拠になる電力需給状況の把握は進んでいない。政府は昨年11月に、原発ゼロで猛暑の場合、来夏に1656万キロワットの供給力が不足すると発表した。しかし、この試算には火力発電の増強などが加味されておらず、最新の需給の把握には「4月下旬から5月上旬」(枝野経産相)までかかる。
当然、地元自治体からは、「電力不足の実態が分からないのに再稼働は認められない」(福井県)との声が上がる。政府の「原発を再稼働させれば、大幅な節電や電気料金値上げを回避できる」(資源エネルギー庁幹部)との主張も、具体的な数値がなければ説得力に欠ける。
◆暫定基準
耐性検査に代わる暫定基準づくりも遅れている。重大事故への対応策を検討してきた原子力安全・保安院は23日になってようやく、「想定を超えることは起こりえるとの前提で事故進展を防止すべきだ」などとする報告書案をまとめた。
福島第1原発事故を踏まえ、2月8日に策定した非常用電源の配備などの30項目の対策とともに、「暫定基準の方向性を示したもの」(保安院幹部)だ。
ただ、非常用電源は何時間分あればいいかなど、最終的な暫定基準の数値化の時期は不透明。保安院が事故の検証を始めたのは、昨年9月からで、「もっと早く着手していれば、暫定基準も早くできていたはずだ」との指摘もある。
◆規制庁発足
肝心の原子力規制庁は、発足のめどすら立たない。政府は1月末に原子力規制関連法の改正法案を閣議決定し、規制庁の4月1日発足を目指したものの、野党が独立性の高い「三条委員会」にすべきだと反発し、審議は始まっていない。
国会の原発事故調査会の報告書が出る6月まで発足を待つべきだとの声もあり、「安全規制の主体が不明確なままでは再稼働への同意を求めるのは厳しい」(与党幹部)状況だ。
■3断層連動 盛り込み鍵
ストレステスト(耐性検査)の1次評価について、「再稼働の可否判断ではない」とした内閣府原子力安全委員会は安全性の判断そのものは示さず、「1次評価で再稼働は可能」とする政府とのスタンスの差は埋まっていない。一方、国が進める安全基準の見直しでは大飯原発周辺3断層の連動など新たな検討課題も浮上。最新の知見をどこまで反映するのか、「政治判断」の流動的要素になりそうだ。
関電は、大飯3、4号機の1次評価を経済産業省原子力安全・保安院に提出。地震は想定の最大の揺れ(基準地震動)の1・8倍(1260ガル)、津波は想定の4倍(11・4メートル)まで耐えられるとし、保安院は「妥当」と判断した。
安全委は妥当性の確認作業を行ったが、議論はシナリオ想定や計算方法の評価手法の確認にとどまり、安全性に関する本質的議論はされなかった。
安全委の班目(まだらめ)春樹委員長は「1次評価だけでは不十分。2次評価もやるべきだ」としており、立地自治体の疑問に十分答えられるかは微妙だ。
一方、関電が提出した評価は昨年10月1日時点のもので、それ以降の知見は反映されていない。一つの例が、活断層の連動だ。
保安院は今年1月、東日本大震災を受けて、従来は5キロ以上離れた活断層の連動は考慮しないとしてきたルールを見直すよう、電力各社に指示した。
大飯原発周辺には、陸側の「熊川断層」と、海側の若狭湾内に延びる2つの活断層があり、3断層の全長は約63キロに及ぶ。
ストレステスト評価時点では、海側2断層(全長約35キロ)の連動は考慮に入れたが、3断層連動は想定しなかった。
関電は2月末、3断層の連動について「可能性は極めて低い」とし、仮に3断層が連動したとしても、基準地震動の1・8倍は超えないと保安院に報告した。ただ、保安院は「計算の根拠が不明確だ」などとして、詳細な評価をするよう再度求めている。
新たに浮上した課題は、大飯原発に限らない。活断層の連動は北海道電力泊原発などでも再評価が進められており、安全性の余裕が変わる可能性もある。
新しい知見の扱いは現時点で定まっておらず、新知見にどう対応するかも、政治判断に向けた「地元理解」の鍵となりそうだ。
■「政治主導」不在 官僚答弁を連発
原子力安全委員会が関西電力大飯原発3、4号機のストレステスト1次評価結果を「妥当」としたことにより原発再稼働は政治マターとなった。ところが、野田佳彦首相は及び腰となり、この期に及んで説明責任を果たすどころか、再稼働に向けた関係閣僚会議の時期さえも明言しない。都合の悪いことは官僚機構に押しつける手口は菅直人前首相と同じ。もはや民主党が掲げた「政治主導」は見る影もない。
「報告書を読み込み、安全性が確認できた場合に初めて再稼働の必要があるかを判断します」
枝野幸男経済産業相は23日の参院予算委員会で官僚よりも官僚っぽい答弁を繰り返した。昨年5月、浜岡原発を強引に停止させ、他の原発の再稼働を困難にした張本人は菅氏だ。枝野氏は官房長官としてその片棒を担いだだけに再稼働を容認するのは、よほどバツが悪いとみえる。
来週中に関係閣僚会議で安全性を確認したところで2度目の同会議での再稼働の最終決断まで道のりは遠い。
最終決断前に、原発を所管する枝野氏が地元を説得するのは当たり前だが、自らが赴く「地元」の範囲さえ「総合的、政治的に判断する」と言葉を濁した。それどころか、滋賀県へのストレステストの説明については「私ではなく保安院が説明を求められた」と対応を押しつけた。
「政府を挙げて説明し理解を得る。私も先頭に立つ」(11日)と意気込んでいた首相も「枝野氏の答弁に尽きる」と逃げの一手。自ら説明責任を果たそうという気概は感じられない。
再稼働への批判が強まっている要因には、政府が新たな安全規制のあり方を示せないことも大きい。原子力規制庁は4月発足どころか、設置法案の審議入りすら見通せない。首相は27日、韓国・ソウルでの核安全保障サミットで原子力安全への取り組みを説明するというが、このままでは恥の上塗りとなる。
「原発を動かすかどうかは国が全責任を持って決定すべきだ。地元同意を言いだしたら福井県だけで収まらない」
橋下徹大阪市長は23日、こう批判した。地元に責任転嫁しようとする政府の魂胆はもはや見抜かれている。(千葉倫之)
最終更新:3月24日(土)9時40分
何故電力を使用する顧客の意見は全く無視されるのだろうか。
おおい町は事故が起こったらどの様に被害を被った他県地域に対して責任を取るつもりなのか。
この異様な迄の原子力に対する執着は一体何なのか。
暗黒の稲妻