輝き失った「日本ブランド」 地方で見つけた復活のヒント
フジサンケイ ビジネスアイ 3月12日(月)8時15分配信

 日本を代表する電機メーカーのパナソニック、ソニー、シャープが苦境に陥った。最大の原因は、主力のテレビ事業の業績が急速に落ち込んだことだ。薄型テレビの世界シェアは韓国勢の後塵(こうじん)を拝し、挽回(ばんかい)のきっかけがつかめない。世界中で称賛されていた「日本ブランド」がかつての輝きを失い、各社が次の成長エンジンを探しあぐねている。

 各社は今こそ頭を冷やし、「自分たちにしか提供できないものとは何か」を、立ち止まって考えるべきときに来ているのではないか。

 日本ブランド復活のヒントをくれる人に、中小の靴メーカーが集積する「靴のまち」神戸市長田区で出会った。伊藤忠商事出身で昨年4月、1人で株式会社「神戸シューズ地域振興」を創設し、メーカーの自社ブランド確立を支援している獅々原(ししはら)孝司さんだ。

 かつて靴メーカー約450社、関連企業約1600社が集積した長田の街は、1995年の阪神大震災で約9割の工場が壊滅した。震災以前からの安価な海外製品の流入で長田の靴は次第に競争力を失い、震災の打撃が変化を加速させた。

 「靴のまち」をよみがえらせるために獅々原さんが取り組むのは、果てしない価格競争からの脱却だ。獅々原さんは「量販店ではなく、長田に受け継がれてきた高い技術力を生かせるワンランク上の市場」に売り込むことをメーカーにアドバイスしている。具体的には、靴をファッションとして位置づけてもらえるアパレルの小売店や百貨店に、問屋を介さずに直接販売する戦略だ。

 靴メーカーにとってアパレル業界はこれまで直接かかわったことのない取引先だけに、戸惑いも多い。そこに生きるのが、獅々原さんが商社で培った商品展開のノウハウだ。「どんな人にどんな靴を履いてもらいたいのか、という商品イメージを絞り込む。それがブランドをつくり上げるということだ」。

 獅々原さんは「ファッションの発信地、パリに数年のうちに拠点を置き、“神戸シューズ”を世界に発信する。そこでブランド力を磨く」という事業戦略を抱いている。海外でも受け入れられる品質の良さを長田の靴が持っている、という自信が根底にある。

 電機メーカー3社の技術力も世界トップレベルにある。3D(3次元)テレビもいちはやく商品化した。しかし、「3Dが見られたら何が変わるのか」という決定打に欠けていた。そして、結局は価格競争の消耗戦に巻き込まれてしまった。エコカー用電池、太陽電池、スマートフォン(高機能携帯電話)など新分野で勝負するにしても、そこから顧客が、新しく魅力的な生活への変化を実感できる商品展開が不可欠だ。巻き返しへ奮闘する経営者たちにもう一度問いたいと思う。「あなた自身はどんな未来を待ち望んでいるのか」と。(神戸総局 牛島要平)

最終更新:3月12日(月)12時11分

日本企業には頑張って欲しいね。

暗黒の稲妻