太陽嵐、予想外に穏やか
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 3月9日(金)19時34分配信
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2012年3月7日午前9時2分(日本時間)に発生したX5.4の太陽フレアの静止画像。NASAのソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)が撮影した。(Image courtesy SDO/NASA)
 日本時間3月7日に発生した2つの太陽フレアに関して、NASAは地球で最大規模の磁気嵐が発生し、送電網、GPS、通信などに障害が出る恐れがあると警告を発した。しかし、8日に地球へ到達した太陽嵐の影響は予想外に穏やかだった。

 NASAゴダード宇宙飛行センターの太陽宇宙物理学者アレックス・ヤング氏は、磁場の向きが原因だと指摘する。

 磁気嵐は9日にかけて活発化する可能性も残っているが、8日現在ではNOAA宇宙天気スケールの5段階のうち最も弱いG1(弱)に留まった。「このレベルなら影響は最小限で済むだろう。実質上何の問題も起きないはずだ」とヤング氏は言う。同氏は太陽観測衛星SOHOプロジェクトチームに参加している。

「太陽嵐の影響が予想外に小さかったのは、地球の磁場に衝突したときの移動方向が大きな原因だ。地球の磁場の北から到達している」。一方、太陽嵐、すなわち太陽フレアに伴うコロナ質量放出(CME)が南から飛来した場合は影響が大きくなる。CMEは太陽磁場の変化に伴い大量のプラズマ粒子が噴出する現象である。

 CMEが北からやって来ると、地球の磁場との相互作用は弱まる。「どちらの磁場も同じ向きになるからだ。逆に太陽嵐が南から到達すれば、相互作用ははるかに大きくなる。巨大なエネルギーが地球の磁気圏に注ぎ込まれていただろう」。

◆さらに強力な太陽嵐が到来?

 今回、太陽嵐の影響は予想を下回ったが、まだ危険を脱していないとヤング氏は警告する。

 CMEを起こす爆発は通常、太陽黒点で発生する。磁場の乱流領域である黒点は周囲の温度(摂氏5500度)よりも低く、摂氏3300度の領域が暗く見える。

 7日に太陽フレアが発生した黒点は太陽表面に沿って移動し、複雑な成長を続けている。地球方向への噴出が新たに発生する可能性が高まっているという。

「黒点はホクロと似ている。ホクロの形が左右対称で整っていれば、まず大丈夫だ。やっかいな問題にはならない」とヤング氏は語る。

「黒点も複雑な形になり歪曲すれば、内部の磁場がさらに乱れていることを意味する。輪ゴムをぐるぐる巻いたような状態で、いずれ小さな結び目が飛び出す。現在私たちは黒点を監視しているが、次第に入り組んできている。Xクラスの太陽フレアが発生する可能性は依然として高い」。Xクラスは最大級の太陽フレアであり、CMEの発生を伴う。

 3月7日に発生した2つの太陽フレアは、大規模な方がX5.4だった。Xクラスの中間の強度に相当する。太陽は11年周期で活動を変化させており、現在の周期中では2011年8月9日のX6.9に次ぐ大きさだった。もう1つのフレアの規模はX1.3で、X5.4の5分の1ほどである。

 太陽活動が最も活発になる2013年の極大期前後には、はるかに大きな太陽嵐が発生する恐れがある。

「これも正常な周期の一環だ。太陽嵐は大きくなるだろう。深刻な影響を及ぼすかどうかは不明だが、NASAや米国海洋大気庁(NOAA)をはじめ、あらゆる機関が動向を監視している。これまでよりも的確に把握できるはずだ」。

Jason Major for National Geographic News

最終更新:3月9日(金)19時34分

取り敢えずは一安心と言っていいのかはわからないが出来るだけ被害が出ない事を望むばかりだ。

暗黒の稲妻