来月発足の原子力規制庁 課題山積、国会審議も始まらず
産経新聞 3月8日(木)7時55分配信


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原子力規制の新組織(写真:産経新聞)
 東京電力福島第1原発事故を受けて原子力規制機関「原子力規制庁」が来月、環境省の外局として発足する。しかし、設置に関する法案の審議はいまだに国会で始まっていない。細野豪志原発事故担当相は「これまでは規制そのものを正面からやる組織になっていなかった」と発足に向けて意欲を語るが、国会の事故調査委員会からは、調査結果が出ていない段階での発足に非難の声も上がる。(原子力取材班)

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 今回の事故では、原子力行政を推進する「経済産業省資源エネルギー庁」と、規制する「原子力安全・保安院」が、同じ経産省別館に同居し人事交流していることなどが問題視された。経産省からの独立をうたった規制庁は保安院や原子力安全委員会、文部科学省の原子力規制部門などの業務を一元化し約480人体制で発足する。職員は保安院から約350人、安全委から約70人、文科省から約45人などが配属予定だ。

 細野氏は産経新聞のインタビューに対し、「(推進側から)独立させるためには人事が極めて重要で、課長以上は『ノーリターンルール』(出向した職員を元の省庁に戻さない規則)を明確にした」と述べた。経産省や文科省から入庁する課長級以上の幹部職員19人には、原則としてこのルールが適用される。

 また、規制庁の監視役として、国会同意人事で任命された有識者5人を委員とする「原子力安全調査委員会」も新設。原子力規制の実効性のチェックや事故が起きた際の調査を行い、環境相や規制庁、関係行政機関への勧告権も持たせるなど、規制当局として態勢が強化されることになる。

 ただ、国会事故調の黒川清委員長(元日本学術会議会長)は「調査の最中に(規制庁設置を閣議)決定したことは理解できない」と反発している。事故調の任務に「事故を踏まえた行政組織のあり方の見直しを含めた提言」が盛り込まれているためだ。

 規制庁の場所をめぐっても、保安院がある経産省別館からの移転先として近くの民間ビルなどが浮かんでいるが、耐震性や首相官邸との距離などの問題から来月の転居は難しくなりつつある。経産省別館での間借りが続けば、肝心の独立性にも疑問符が付きかねない。

 九州大学の工藤和彦特任教授(原子力工学)は「毅然(きぜん)とした原子力の規制には独立性が大切だ。早く独立した場所を確保すべきだ」と話している。

最終更新:3月8日(木)11時12分

東京電力福島第一原発事故を受けて原子力規制機関「原子力規制庁」が来月、環境省の外局として発足する。しかし、設置に関する法案の審議はいまだに国会で始まっていない様だ。

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