イー・モバイルがLTEサービスの発表を急いだワケ
nikkei TRENDYnet 2月29日(水)11時6分配信

イー・モバイルは2月22日、LTEによるモバイルデータ通信サービス「EMOBILE LTE」を3月に開始すると発表。しかし同社のサービス内容には未確定な部分が多い。発表を急いだのには、他社の動向も影響しているようだ。
イー・モバイル(イー・アクセス)は去る2月22日、LTEによるモバイルデータ通信サービス「EMOBILE LTE」を3月に開始すると発表した。今後の成長戦略において重要な存在と位置付け、イー・アクセスはサービス提供に意気込みを見せるが、その内容には未確定な部分が多い。にもかかわらず発表を急いだのには、他社の動向も影響しているようだ。
【詳細画像または表】
屋外でも下り最大75Mbpsを実現
イー・モバイルの新サービス「EMOBILE LTE」は、NTTドコモの「Xi」に続く、LTE(FDD-LTE)方式を採用したデータ通信サービスだ。大きな特徴の1つは通信速度。Xiが一部屋内でのみ下り最大75Mbpsを実現しているのに対し、EMOBILE LTEは屋外でも下り最大75Mbpsでの通信が可能なエリアがあるという。
もう1つの特徴は、現在同社の主力サービスである「EMOBILE G4」、つまりDC-HSDPA方式の通信網の上に、LTEを重ねる形で提供するということ。つまりLTEのエリア外であっても、下り最大42Mbpsでの通信が可能となる。
このサービスの提供に合わせて、モバイルWi-Fiルータータイプの「GL01P」「GL02P」と、USBモデムタイプの「GL03D」の3機種が投入されるとのことだ。ちなみにスマートフォンについては、LTEの現在の仕様である“LTE Release.8“ではなく、新たな機能が盛り込まれた“LTE Release.9”の標準化を待ってから投入したいとしている。
無線通信部分だけでなく、モバイル通信の裏側を支えるバックボーンのネットワークについても、オールIP化を進めることで大容量通信に耐えうる仕組みを整えているという。イー・アクセスの代表取締役社長であるエリック・ガン氏は「固定ブロードバンドの最終形はFTTHであり、モバイルブロードバンドの最終形はLTE」と話しており、LTEの高速性を強く意識したサービスになるといえよう。
ちなみにサービス利用可能なエリアは、2012年3月末時点で人口カバー率約40%、2013年度3月末時点で約70%となる予定だ。
LTEで“第2の創業”と意気込みを見せる
イー・アクセス代表取締役会長の千本倖生氏は、EMOBILE LTEの提供を「第2の創業」と話し、今回のサービス提供に対する意気込みを見せている。
同社は中期事業戦略において、2つのステップを掲げている。最初のステップでは、インフラの強化や顧客満足度の向上など、基盤となるモバイルブロードバンド事業を強化して足元を固める方針。次のステップではスマートフォンへの取り組みを積極化させ、イー・モバイルショップを増強したり、マーケティングを積極化させたりするなどして、拡大戦略をとる方針のようだ。
EMOBILE LTEは、これらのステップを実現する上でも、根幹を握る存在になるとのこと。LTEの浸透を進めることによって、2015年にはモバイルブロードバンド市場1500万人のうち半数近い660万人を獲得したいとしている。
そして2015年に訪れる3つ目のステップでは、エリアカバー率99%を実現し、国内のマーケットシェアにおいても、想定するユーザー数1億5000万人のうち10%となる1500万人を獲得する“メインストリームキャリア”になりたいと、千本氏は話している。
料金やエリアなど詳細は未公表
だが、そうした意気込みとは裏腹に、EMOBILE LTEの発表内容は中途半端なものとなっている。
というのも、サービス概要や端末は公表されたものの、サービス開始日や料金体系など、ユーザーがサービスを契約する上で重要となる基本的な情報が公表されていないのだ。これらの詳細については、サービス開始が近づいた時点で改めて発表するとしており、具体的な内容はまだ見えない。
ちなみにエリック氏はサービス料金について、多くのモバイルブロードバンドサービスが価格設定している月額3880円を目標にしたいと話している。ただどのような形でこの価格を実現するのかについては、触れられないままであった。
また、下り最大75Mbpsを実現するエリアについて具体的に触れられていないのも、気になるところだ。現在、同社が保有している1.7GHz帯の帯域幅は15MHz×2だが、LTEを用いて75Mbpsを実現するには、10MHz×2の帯域幅が必要となる。一方、「EMOBILE G4」で用いているDC-HSDPA方式でも、下り最大42Mbpsを実現するため、既に10MHz×2の帯域幅を使用している。
こうしたことから、帯域幅を考慮すると現状の最高速度のまま双方の共存はできず、一方の方式は通信速度を半分にする必要がある。そのため、下り最大速度は当初、“EMOBILE LTEが75Mbps、EMOBILE G4が21Mbps“となるエリアと、“EMOBILE LTEが37.5Mbps、EMOBILE G4が42Mbps”となるエリアの2タイプに分かれると考えられるが、どのエリアがどちらのタイプになるのかについても、今回は明らかにされなかった。
SoftBank 4Gのサービス開始を意識か
なぜ、このような形での発表されたのだろうか? それには、他社の動向が大きく影響していると推測される。
というのも、今回の発表がされる2日前の2月20日、ソフトバンクモバイルがAXGP方式を採用し、下り最大110Mbpsを実現する(ただし当初は端末性能により、下り最大76Mbpsとなる)高速データ通信サービスの「SoftBank 4G」を、2月24日より開始すると発表しているからだ。このサービスも発表自体は昨年にされているが、今回ようやく具体的な料金体系や詳細なサービスエリアなども公表され、既に購入可能な状態にある。
イー・モバイルがEMOBILE LTEの発表を急いだのも、モバイルブロードバンドサービスで直接的な競合となるSoftBank 4Gのサービス内容が具体化したことから、これをけん制する意図があったと考えられよう。
SoftBank 4Gだけでなく、既にサービスを提供しているUQ WiMAXやXiがスマートフォン対応を本格化させつつあるほか、12月にはKDDIもLTEサービスの開始を予定している。モバイルブロードバンドの競争が一段と激しくなる中、イー・モバイルの今後の中核をなすEMOBILE LTEによって、これにどのようにして立ち向かい、成長戦略を実現するかという点には注目が集まるところ。
それだけに、今回は具体的なサービス概要が用意されないままの発表であったのが、やや残念である。サービス開始に向けた準備を整え、具体的な情報がいち早く公開されることを期待したい。
最終更新:2月29日(水)12時52分
記事のみ紹介。
暗黒の稲妻
nikkei TRENDYnet 2月29日(水)11時6分配信

イー・モバイルは2月22日、LTEによるモバイルデータ通信サービス「EMOBILE LTE」を3月に開始すると発表。しかし同社のサービス内容には未確定な部分が多い。発表を急いだのには、他社の動向も影響しているようだ。
イー・モバイル(イー・アクセス)は去る2月22日、LTEによるモバイルデータ通信サービス「EMOBILE LTE」を3月に開始すると発表した。今後の成長戦略において重要な存在と位置付け、イー・アクセスはサービス提供に意気込みを見せるが、その内容には未確定な部分が多い。にもかかわらず発表を急いだのには、他社の動向も影響しているようだ。
【詳細画像または表】
屋外でも下り最大75Mbpsを実現
イー・モバイルの新サービス「EMOBILE LTE」は、NTTドコモの「Xi」に続く、LTE(FDD-LTE)方式を採用したデータ通信サービスだ。大きな特徴の1つは通信速度。Xiが一部屋内でのみ下り最大75Mbpsを実現しているのに対し、EMOBILE LTEは屋外でも下り最大75Mbpsでの通信が可能なエリアがあるという。
もう1つの特徴は、現在同社の主力サービスである「EMOBILE G4」、つまりDC-HSDPA方式の通信網の上に、LTEを重ねる形で提供するということ。つまりLTEのエリア外であっても、下り最大42Mbpsでの通信が可能となる。
このサービスの提供に合わせて、モバイルWi-Fiルータータイプの「GL01P」「GL02P」と、USBモデムタイプの「GL03D」の3機種が投入されるとのことだ。ちなみにスマートフォンについては、LTEの現在の仕様である“LTE Release.8“ではなく、新たな機能が盛り込まれた“LTE Release.9”の標準化を待ってから投入したいとしている。
無線通信部分だけでなく、モバイル通信の裏側を支えるバックボーンのネットワークについても、オールIP化を進めることで大容量通信に耐えうる仕組みを整えているという。イー・アクセスの代表取締役社長であるエリック・ガン氏は「固定ブロードバンドの最終形はFTTHであり、モバイルブロードバンドの最終形はLTE」と話しており、LTEの高速性を強く意識したサービスになるといえよう。
ちなみにサービス利用可能なエリアは、2012年3月末時点で人口カバー率約40%、2013年度3月末時点で約70%となる予定だ。
LTEで“第2の創業”と意気込みを見せる
イー・アクセス代表取締役会長の千本倖生氏は、EMOBILE LTEの提供を「第2の創業」と話し、今回のサービス提供に対する意気込みを見せている。
同社は中期事業戦略において、2つのステップを掲げている。最初のステップでは、インフラの強化や顧客満足度の向上など、基盤となるモバイルブロードバンド事業を強化して足元を固める方針。次のステップではスマートフォンへの取り組みを積極化させ、イー・モバイルショップを増強したり、マーケティングを積極化させたりするなどして、拡大戦略をとる方針のようだ。
EMOBILE LTEは、これらのステップを実現する上でも、根幹を握る存在になるとのこと。LTEの浸透を進めることによって、2015年にはモバイルブロードバンド市場1500万人のうち半数近い660万人を獲得したいとしている。
そして2015年に訪れる3つ目のステップでは、エリアカバー率99%を実現し、国内のマーケットシェアにおいても、想定するユーザー数1億5000万人のうち10%となる1500万人を獲得する“メインストリームキャリア”になりたいと、千本氏は話している。
料金やエリアなど詳細は未公表
だが、そうした意気込みとは裏腹に、EMOBILE LTEの発表内容は中途半端なものとなっている。
というのも、サービス概要や端末は公表されたものの、サービス開始日や料金体系など、ユーザーがサービスを契約する上で重要となる基本的な情報が公表されていないのだ。これらの詳細については、サービス開始が近づいた時点で改めて発表するとしており、具体的な内容はまだ見えない。
ちなみにエリック氏はサービス料金について、多くのモバイルブロードバンドサービスが価格設定している月額3880円を目標にしたいと話している。ただどのような形でこの価格を実現するのかについては、触れられないままであった。
また、下り最大75Mbpsを実現するエリアについて具体的に触れられていないのも、気になるところだ。現在、同社が保有している1.7GHz帯の帯域幅は15MHz×2だが、LTEを用いて75Mbpsを実現するには、10MHz×2の帯域幅が必要となる。一方、「EMOBILE G4」で用いているDC-HSDPA方式でも、下り最大42Mbpsを実現するため、既に10MHz×2の帯域幅を使用している。
こうしたことから、帯域幅を考慮すると現状の最高速度のまま双方の共存はできず、一方の方式は通信速度を半分にする必要がある。そのため、下り最大速度は当初、“EMOBILE LTEが75Mbps、EMOBILE G4が21Mbps“となるエリアと、“EMOBILE LTEが37.5Mbps、EMOBILE G4が42Mbps”となるエリアの2タイプに分かれると考えられるが、どのエリアがどちらのタイプになるのかについても、今回は明らかにされなかった。
SoftBank 4Gのサービス開始を意識か
なぜ、このような形での発表されたのだろうか? それには、他社の動向が大きく影響していると推測される。
というのも、今回の発表がされる2日前の2月20日、ソフトバンクモバイルがAXGP方式を採用し、下り最大110Mbpsを実現する(ただし当初は端末性能により、下り最大76Mbpsとなる)高速データ通信サービスの「SoftBank 4G」を、2月24日より開始すると発表しているからだ。このサービスも発表自体は昨年にされているが、今回ようやく具体的な料金体系や詳細なサービスエリアなども公表され、既に購入可能な状態にある。
イー・モバイルがEMOBILE LTEの発表を急いだのも、モバイルブロードバンドサービスで直接的な競合となるSoftBank 4Gのサービス内容が具体化したことから、これをけん制する意図があったと考えられよう。
SoftBank 4Gだけでなく、既にサービスを提供しているUQ WiMAXやXiがスマートフォン対応を本格化させつつあるほか、12月にはKDDIもLTEサービスの開始を予定している。モバイルブロードバンドの競争が一段と激しくなる中、イー・モバイルの今後の中核をなすEMOBILE LTEによって、これにどのようにして立ち向かい、成長戦略を実現するかという点には注目が集まるところ。
それだけに、今回は具体的なサービス概要が用意されないままの発表であったのが、やや残念である。サービス開始に向けた準備を整え、具体的な情報がいち早く公開されることを期待したい。
最終更新:2月29日(水)12時52分
記事のみ紹介。
暗黒の稲妻