<野田首相>沖縄振興策は評価 前政権と関係変化
毎日新聞 2月28日(火)6時26分配信
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米軍牧港補給地区を視察し、海の方向を指さして質問する野田首相(前列左)=沖縄県浦添市で2012年2月27日午後3時51分、野田武撮影
野田佳彦首相は就任から半年近くたって実現した初の沖縄訪問で、仲井真弘多(ひろかず)知事に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が「唯一、有効な方法」として理解を求めた。知事は「県外移設」を主張して平行線に終わったが、沖縄振興策などを巡っては野田政権の取り組みを高く評価。政府と沖縄の関係は、民主党の過去2代の政権時と微妙な変化を見せている。
【野田首相】「来る意味わからない」…県民の不信感根深く
「沖縄振興や基地負担軽減に取り組んでくれている。野田首相の言葉には重みを感じる」。26日夜に野田首相と那覇市内で会食した仲井真氏は翌朝、県庁で県幹部らに首相の印象をこう語ったという。県幹部は「知事は、これまでの民主党政権で最も実行力のある野田首相に好感を持っているようだ」と語る。
首相は、全日程を終えた27日夕の那覇市での記者会見で普天間移設に関し、「沖縄に理解をいただく私なりのスタートラインに立ったつもりだ。基地負担軽減でなるべく早い段階で具体的に実績を作り、理解をいただく環境整備をしていきたい」と期待を語った。
首相は今回の沖縄訪問で、就任後に沖縄政策で重ねてきた実績を強調したのに加え、仲井真氏らとの会談や視察では「誠意」を行動で示す構えで臨んだ。初日は沖縄戦の戦跡をめぐり、基地問題の歴史に配慮した。
27日の会談では、低姿勢に徹した首相が、民主党政権の普天間移設問題の迷走を陳謝した際に立ち上がって深々と頭を下げ、「おっ」と驚いた仲井真氏が腰を浮かせる場面もあった。
一方、首相は名護市の稲嶺進市長との会談は見送った。鳩山由紀夫元首相がかつて怒号で迎えられた県民との直接対話もなかった。
迎えた沖縄側も変化の兆しがあるとはいえ、野田政権の取り組みに対し慎重な見方も根強い。米軍5施設の先行返還についても「まだ半信半疑」(知事周辺)との受け止めがある。基地返還を巡っては、96年の日米特別行動委員会(SACO)合意で米軍11施設の計約5000ヘクタール返還で合意しながら、現時点で8%の計約400ヘクタールの返還しか実現していない現実があるからだ。
また、普天間の辺野古移設については、稲嶺市長は明確に拒否し、県民世論も県外でまとまっている。「県外を求める沖縄が変わることはない」(県幹部)状況だ。5月25~26日に太平洋・島サミットが名護市で開かれることもあり、首相は「これからも折につけ沖縄に来る。政府の基本姿勢は丁寧に説明したい」としており、今後は稲嶺氏とも会談し、辺野古移設へ説得を続ける考えだ。【松尾良、井本義親】
◇施設返還の道筋見えず
日米両政府は27日、外務省で在日米軍再編のロードマップ(行程表)見直しを巡る外務・防衛当局の審議官級協議を開いた。日米が在沖縄米海兵隊のグアム移転と沖縄県中南部の5米軍施設・区域の返還を普天間移設とは切り離して先行実施する基本方針で合意したことを受けて具体的な見直し内容を詰めた。日本政府は「施設返還で象徴的な負担軽減の成果を作りたい」(防衛省幹部)として、返還協議を急ぎたい考えだ。協議は28日も防衛省で行われる。
しかし、どの施設の返還が可能かなどは沖縄から移転する海兵隊の部隊構成次第だ。政府は沖縄県が期待する牧港補給地区(浦添市)やキャンプ瑞慶覧(北谷町など)の早期返還を目指しているが、防衛省幹部は「具体的な施設名を挙げて期待値を高めるべきではない」と語り、返還の道筋は見えていない。
首相は27日の記者会見で「協議はおそらく数カ月かかる。一定の方向性が出ればうれしいが訪米に合わせることはしない」と述べ、5月初めの大型連休中で調整している自身の訪米までに5施設・区域の具体的な返還手順などを詰めるのは難しいとの見通しを示した。
名護市辺野古への移設に向けて、環境影響評価(アセスメント)の手続きを進める政府は負担軽減を進めながら、辺野古の公有水面埋め立て申請につなげたい考えだが、名護市は普天間代替施設の受け入れに反対したままだ。14年1月の次期名護市長選まで状況が変化する見通しはなく、政府は長期戦も視野に入れるが、移設進展が遅れれば普天間固定化の可能性は高まる。防衛省幹部は「施設返還が進んでも、もたもたしていたら普天間は動かない」と焦りを募らせている。【朝日弘行】
最終更新:2月28日(火)8時32分
野田佳彦首相は就任から半年近くたって実現した初の沖縄訪問で、仲井真弘多知事に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が「唯一、有効な方法」として理解を求めた様だ。
暗黒の稲妻
毎日新聞 2月28日(火)6時26分配信

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米軍牧港補給地区を視察し、海の方向を指さして質問する野田首相(前列左)=沖縄県浦添市で2012年2月27日午後3時51分、野田武撮影
野田佳彦首相は就任から半年近くたって実現した初の沖縄訪問で、仲井真弘多(ひろかず)知事に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が「唯一、有効な方法」として理解を求めた。知事は「県外移設」を主張して平行線に終わったが、沖縄振興策などを巡っては野田政権の取り組みを高く評価。政府と沖縄の関係は、民主党の過去2代の政権時と微妙な変化を見せている。
【野田首相】「来る意味わからない」…県民の不信感根深く
「沖縄振興や基地負担軽減に取り組んでくれている。野田首相の言葉には重みを感じる」。26日夜に野田首相と那覇市内で会食した仲井真氏は翌朝、県庁で県幹部らに首相の印象をこう語ったという。県幹部は「知事は、これまでの民主党政権で最も実行力のある野田首相に好感を持っているようだ」と語る。
首相は、全日程を終えた27日夕の那覇市での記者会見で普天間移設に関し、「沖縄に理解をいただく私なりのスタートラインに立ったつもりだ。基地負担軽減でなるべく早い段階で具体的に実績を作り、理解をいただく環境整備をしていきたい」と期待を語った。
首相は今回の沖縄訪問で、就任後に沖縄政策で重ねてきた実績を強調したのに加え、仲井真氏らとの会談や視察では「誠意」を行動で示す構えで臨んだ。初日は沖縄戦の戦跡をめぐり、基地問題の歴史に配慮した。
27日の会談では、低姿勢に徹した首相が、民主党政権の普天間移設問題の迷走を陳謝した際に立ち上がって深々と頭を下げ、「おっ」と驚いた仲井真氏が腰を浮かせる場面もあった。
一方、首相は名護市の稲嶺進市長との会談は見送った。鳩山由紀夫元首相がかつて怒号で迎えられた県民との直接対話もなかった。
迎えた沖縄側も変化の兆しがあるとはいえ、野田政権の取り組みに対し慎重な見方も根強い。米軍5施設の先行返還についても「まだ半信半疑」(知事周辺)との受け止めがある。基地返還を巡っては、96年の日米特別行動委員会(SACO)合意で米軍11施設の計約5000ヘクタール返還で合意しながら、現時点で8%の計約400ヘクタールの返還しか実現していない現実があるからだ。
また、普天間の辺野古移設については、稲嶺市長は明確に拒否し、県民世論も県外でまとまっている。「県外を求める沖縄が変わることはない」(県幹部)状況だ。5月25~26日に太平洋・島サミットが名護市で開かれることもあり、首相は「これからも折につけ沖縄に来る。政府の基本姿勢は丁寧に説明したい」としており、今後は稲嶺氏とも会談し、辺野古移設へ説得を続ける考えだ。【松尾良、井本義親】
◇施設返還の道筋見えず
日米両政府は27日、外務省で在日米軍再編のロードマップ(行程表)見直しを巡る外務・防衛当局の審議官級協議を開いた。日米が在沖縄米海兵隊のグアム移転と沖縄県中南部の5米軍施設・区域の返還を普天間移設とは切り離して先行実施する基本方針で合意したことを受けて具体的な見直し内容を詰めた。日本政府は「施設返還で象徴的な負担軽減の成果を作りたい」(防衛省幹部)として、返還協議を急ぎたい考えだ。協議は28日も防衛省で行われる。
しかし、どの施設の返還が可能かなどは沖縄から移転する海兵隊の部隊構成次第だ。政府は沖縄県が期待する牧港補給地区(浦添市)やキャンプ瑞慶覧(北谷町など)の早期返還を目指しているが、防衛省幹部は「具体的な施設名を挙げて期待値を高めるべきではない」と語り、返還の道筋は見えていない。
首相は27日の記者会見で「協議はおそらく数カ月かかる。一定の方向性が出ればうれしいが訪米に合わせることはしない」と述べ、5月初めの大型連休中で調整している自身の訪米までに5施設・区域の具体的な返還手順などを詰めるのは難しいとの見通しを示した。
名護市辺野古への移設に向けて、環境影響評価(アセスメント)の手続きを進める政府は負担軽減を進めながら、辺野古の公有水面埋め立て申請につなげたい考えだが、名護市は普天間代替施設の受け入れに反対したままだ。14年1月の次期名護市長選まで状況が変化する見通しはなく、政府は長期戦も視野に入れるが、移設進展が遅れれば普天間固定化の可能性は高まる。防衛省幹部は「施設返還が進んでも、もたもたしていたら普天間は動かない」と焦りを募らせている。【朝日弘行】
最終更新:2月28日(火)8時32分
野田佳彦首相は就任から半年近くたって実現した初の沖縄訪問で、仲井真弘多知事に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設が「唯一、有効な方法」として理解を求めた様だ。
暗黒の稲妻