京急電鉄:「歌う電車」近く姿消す 音階刻む機器更新で 惜しむ声、数多く /神奈川
毎日新聞 11月20日(日)11時14分配信

 ◇京急2100形、新1000形 ファ、ソ、ラ、シ…音階刻む機器更新で
 東京と三浦半島を結ぶ京急電鉄沿線で98年から10年以上鳴り響いていた不思議な音が間もなく、聞こえなくなる。発車時に「ファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ……」と音階を刻む通称「歌う電車」の車両改造工事が進み、近く姿を消すからだ。沿線の名物になり、全国的な知名度を誇っていただけに、同社には惜しむ声が数多く寄せられている。【倉岡一樹】
 「出発進行!」。運転士の小気味いい声に応じるように音階を刻みながらスピードを上げていくのは、98年に登場した2100形と02年から営業を開始した新1000形の1、2次車の車両。音はいずれもモーターを制御するシーメンス社(ドイツ)製のインバーター装置から発生する。
 「実はその音階、元は騒音なんですよ」。そう話すのはシーメンス・ジャパン・レールシステムズの庄司不二雄さん(60)。インバーターの起動音はうなるような機械音だが、シーメンス社がソフトのプログラムを変え、モーターに流れる電流の周波数を段階的に引き上げる独自の技術で音階をつけた。庄司さんは「ノイズを逆手にとった遊び心」と話す。
 この工夫が話題を呼び、登場直後に沿線住民が注目し、全国の鉄道ファンも駆けつけた。さらにこの“歌”を人気ロックバンド「くるり」が楽曲「赤い電車」で使い、幅広い層が知ることになった。
 ただ、寿命には勝てなかった。08年ごろから始まった機器の更新で、より進んだ技術を取り入れたインバーターへの置き換えが始まると、修理時の部品調達に手間取るなど保守面で課題が生じ、日本製のインバーターが採用された。更新された車両は甲高い機械音を放つ。庄司さんは「残念だが、時の流れにはあらがえない」と寂しそうだ。
 現在、2100形と新1000形の歌う電車は残り13編成。順次、機器を更新し、数年後には歌わなくなる。京急には利用客から「1編成くらい残したらどうか」「電車に乗るのが楽しかったので残念だ」などの声が寄せられる。同社広報課の岩田幸子さん(29)は「沿線に愛されて幸せだが、安全優先が鉄道の義務なので仕方ない。ただ、もう少しの間は残るので楽しんでいただきたい」と話す。

11月20日朝刊

最終更新:11月20日(日)23時12分

関西に住んでいるので乗った事は無いけど乗ってみたいな…。

暗黒の稲妻