DeNA 抱え込む多くの試練 ベイスターズ買収、総額95億円
フジサンケイ ビジネスアイ 11月5日(土)8時15分配信

 TBSホールディングス(HD)と、携帯電話向けソーシャルゲームサイト「Mobage(モバゲー)」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)は4日、プロ野球、横浜ベイスターズの譲渡で正式合意したと発表した。DeNAは新球団名を「横浜DeNAベイスターズ」として、日本野球機構(NPB)に加盟申請した。NPBへの預かり保証金など30億円を含めた取得総額は95億円となる。TBSHDは保有している株式69.23%のうち2.31%を残し65億円で売却する。

 急成長したソーシャルゲームの雄が4年連続最下位の弱小球団を救済する形だが、買収に対する市場の評価は懐疑的だ。

 株式市場では、球団買収の報道が出るたびにDeNAの株式が売られ、正式に譲渡契約がまとまったこの日の終値も、前営業日終値比0.5%減の2627円と値を下げた。8月に記録した年初来高値の4330円から約4割も企業価値が減少した計算だ。

 「DeNAの広告宣伝費は年間約200億円、(年間20億円といわれる)球団の赤字を含めても大きな負担にはならない」(証券アナリスト)との見方もあるが、赤字球団を抱え込むことへの投資家の懸念は根強い。強い球団づくりに向け年俸の高い選手を補強すれば運営費がかさみ、逆に補強を怠ればファンの批判にさらされるなど、球団経営は一筋縄ではいかない。

 さらに投資家が不安視するのがDeNAの本業への影響だ。10月31日に発表した2011年7~9月連結決算では売上高が4~6月期比でほぼ横ばいとなり、国内の顧客獲得を中心としたこれまでの急成長には陰りが見える。「4年連続最下位の球団にコンテンツとしての魅力はない」(バークレイズ・キャピタル証券の米島慶一アナリスト)との厳しい評価があるうえ、今後の成長を期待する海外事業の拡大に、日本のプロ球団を持つことがどれほど有利に働くかは全く未知数だ。

 一方、球団を持つことで社会からの批判の目が厳しくなることも予想される。

 DeNAは6月、ゲーム制作会社に対し、競合のグリーが運営する「GREE(グリー)」向けにゲームを提供しないよう取引企業に圧力をかけたとして、公正取引委員会から独占禁止法違反の排除措置命令を受けた。グリーの田中良和社長は「圧力は続いていると聞いた。上場会社として今後も賠償を請求していく」と法廷闘争に持ち込む構えだが、球団経営に参入することで、こうした問題への世間の風当たりも強まりそう。DeNAの守安功社長もネガティブキャンペーンが「短期的には顕在化するかもしれない」と厳しい表情を浮かべる。

 今回の買収で一定の知名度向上は期待できるが、同社はそれ以上に多くの試練を抱え込むことになりそうだ。(高木克聡)

最終更新:11月5日(土)11時43分

得るものがあれば失うものがある。
これから会社に対する目は一層厳しくなるだろうね。

暗黒の稲妻