具入りラー油 「ちょい足し」ブームでいまや調味料 でも脂質の取りすぎに注意
読売新聞(ヨミドクター) 10月19日(水)10時23分配信


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白いごはんと、具入りのラー油をかけた時の変化(左)、記者の1日の食事=イラスト
 食用油の使い方が変わってきている。具入りラー油やオリーブオイルを、調味料として料理に「ちょい足し」するようになっているのだ。油を取りすぎないように、賢く使いたい。

 ■「ちょい足し」広がる

 油に具を入れた調味料は相次いで販売されている。火付け役は2009年に「桃屋」が発売した「辛そうで辛くない少し辛いラー油」。揚げニンニクなどが入ったラー油で爆発的なヒットになった。

 今年に入っても人気は衰えず、「エスビー食品」は「ぶっかけ!おかずカレー」など15種類のオイルベース調味料を発売し、「キッコーマン」もオイルにしょうゆを加えた「サクサク食べる香ばし醤油」を出した。いずれもご飯やめん、おかずにかけて、幅広く手軽に使える点が人気だ。

 オリーブオイルもすっかりおなじみになった。オリーブオイルテイスターの緒方哲男さんは、東京や神奈川でオリーブオイルそのものを味わう勉強会を開いている。小さなコップに黄緑色のオリーブオイルを注ぎ、会社員や主婦らが、産地や品質で異なる香りや味を楽しんでいる。

 実際の食卓で油はどう使われているのか。首都圏360世帯を毎日調査している「ライフスケープマーケティング」(東京)で調べてもらった。

 食卓に登場する1000種類のメニューのうち、油を使った料理の数をみると、2000年の658に対し、10年は699と増加。油別では、サラダ油が減り、代わりにオリーブ油(2000年359→2010年501)、ゴマ油(同405→同494)、ラー油(同103→同184)が伸びている。同社取締役の久野哲郎さんは「風味のある新顔の油の人気が高い」という。

 使い方が面白い。例えばラー油は「ギョーザ」に限らず、「冷ややっこ」「ご飯」「納豆」にもかける。オリーブオイルも「野菜サラダ」「目玉焼き」「トースト」に。

 日本植物油協会(東京)によると、09年度の1人当たりの植物油の年間消費量は約12キロ・グラム。ここ10年、横ばいだという。油を使うメニューの数は増えているのに消費量が変わらない理由は、やはり使い方の変化にあるようだ。

 「いため物など1品あたりの調理に使う油の量は減る一方で、油を風味付けに使う料理の種類や数が増えています」と料理教室を展開する「ベターホーム協会」(東京)は解説する。

 ■ごはんおいしく
 
 油でおいしさはどう変わるのか。味覚センサーでおいしさの分析をしている「アイシー」(横浜市)に、白いごはんと、具入りのラー油をかけた時の変化を調べてもらった=グラフ=。

 同社社長の鈴木隆一さんは「甘味が主役のご飯に、塩味とうま味が融合。手軽においしさがアップする」と話す。

 実は、カツオ節や昆布など、和食本来のうま味を支える素材の消費量は減少傾向だ。手間のかかるダシに代わり、油のこくでうまみを補うのが今風なのかもしれない。

 ■脂質の取りすぎに注意

 油はおいしい。記者(43)自身、トンカツ、焼き肉、油モノが好きだ。でも、取りすぎも気になる。

 私のある1日の食事を例に、管理栄養士で二葉栄養専門学校主任教授の小川万紀子さんに、栄養価を試算してもらった=イラスト=。1日の摂取エネルギーの中で脂質が占める割合「脂肪エネルギー比率」は33%。

 厚生労働省では、脂肪エネルギー比率を18~29歳は20~30%、30歳以上は20~25%にするよう勧めている。

 軽く基準をオーバーする自分の食生活に驚がくする。

 ただし、私のように、脂質取りすぎの人は少なくない。2009年の国民健康・栄養調査では、脂肪エネルギー比率が30%以上の人は成人男性で20%、女性で27・6%。08年調査より増えている。

 ■食材で調整できる

 油の摂取量を減らしたい。

 「夕食をアジの塩焼き、里芋の煮物、ご飯にみそ汁と和風にすると24・2%に下がります」と小川さん。朝の目玉焼きをゆで卵に、トーストのバターを減らせばさらに減る。

 グルメ番組で「軟らかくて、ジューシーな肉汁」と聞くと、反射的に「おいしそう」と思う私。でも、小川さんは「肉汁や軟らかさの正体は油。油と意識しないまま取りすぎている人も多いのでは」と話す。

 このように油好きな人が風味付けにさらに油を「ちょい足し」すると、脂質の取りすぎにつながるから要注意だ。魚油やオリーブオイルなど、健康に良いとされる油もあるが、小川さんは「油のカロリーは1グラム約9キロ・カロリー。多用すれば、カロリーオーバーになる」。

 具入りの油も、1グラムあたり7キロ・カロリー前後。私はパンチのある味を求めておかずにかけていたが、食材を鶏もも肉からささみへと、あっさり系に変える工夫も必要だと思う。

 でも、「油は悪者といった印象は間違い。量が大事なのです」とお茶の水女子大教授の近藤和雄さんはいう。脂質はエネルギー源になるほか、細胞膜を作るなど体に不可欠な成分だからだ。戦後に脂肪エネルギー比率が10%以下だった時は、脂質不足で血管の弾力性が乏しく、脳出血が多かったという。

 油はおいしく、体に必要だからこそ、考えて付き合いたいと痛感した。(大森亜紀)

最終更新:10月19日(水)10時23分

過ぎたるはなお及ばざるが如しという事だね。

暗黒の稲妻