戸別補償加入件数、福島で急増
河北新報 10月9日(日)6時10分配信
本年度、本格導入された戸別所得補償制度の加入件数が、福島県で急増した。戸別補償は生産調整(減反)への参加が条件だが、東日本大震災で発生した作付け不能地を減反面積に置き換えることで、農家の収入増が図れる仕組みになっているからだ。福島第1原発事故の風評被害を懸念し、保険の意味で加入したケースも多かったとみられる。結果として、全国屈指だった福島の過剰作付面積は激減した。(編集委員・長谷川武裕)
◎原発事故影響
農林水産省がまとめた戸別補償の加入状況は表の通り。同じ被災地ながら、8.1%減の宮城と、8.0%増の福島が好対照を見せた。
福島では、津波や原発事故で、作付けできない農地が5460ヘクタール(原発事故による警戒区域の2120ヘクタールを含む)ほど発生。加えて震災による内陸部のパイプライン損壊で作付けできなかった水田も多くあり、これら農地を県として減反したことにする地域間調整を行った。
調整の際、作付けを行う農家は、作付け不能となった農地を持つ農家に対し、面積に応じて金銭補償を行う(とも補償)。とも補償を行えば、実際は減反していないのに、形の上では減反をしたことになる。
具体額は地域によって違うが、とも補償として支出する金額より、戸別補償への加入で受け取る定額交付金(10アール当たり1万5000円)の方が多く、収入増が期待できる。
東北農政局は「とも補償を利用した加入申請が、昨年制度加入者が少なかった中通り地方を中心に増加したことが、急増の要因ではないか。作付けできなかった水田に、麦や大豆を植えたところも多く、コメ以外の作物の制度加入も増えた」と説明している。
◎収入を下支え
急増の背景には、原発事故による風評被害への備えもあったようだ。とも補償を利用し、ことし初めて制度に加入した白河市の専業農家(33)は「昨年の米価下落で戸別補償が機能したのを見て、魅力を感じていたところへ起きた原発事故。風評被害で価格が下がる可能性を考えれば、1万5000円の定額交付金は、収入を下支えする保険のような役割を果たすと考えた」と明かす。
宮城は津波などで作付け不能となった農地が、福島より多い1万4340ヘクタール(作付け自粛の629ヘクタールは除く)に達したものの、昨年の試行実施段階での戸別補償制度加入率が9割を超え、福島の約6割を大きく上回った。加入増の余地はほとんどなく、作付けできなくなった農家の分が、減少となって表れた形だ。
福島県のことしのコメ生産数量目標は、面積換算すると約6万3300ヘクタール。戸別補償加入増の裏返しとして、過剰作付けは前年比で1万600ヘクタールも減少し、生産数量目標をわずかに上回る6万4100ヘクタールの作付け実績となった。
最終更新:10月9日(日)6時10分
記事のみの紹介とします。
暗黒の稲妻
河北新報 10月9日(日)6時10分配信
本年度、本格導入された戸別所得補償制度の加入件数が、福島県で急増した。戸別補償は生産調整(減反)への参加が条件だが、東日本大震災で発生した作付け不能地を減反面積に置き換えることで、農家の収入増が図れる仕組みになっているからだ。福島第1原発事故の風評被害を懸念し、保険の意味で加入したケースも多かったとみられる。結果として、全国屈指だった福島の過剰作付面積は激減した。(編集委員・長谷川武裕)
◎原発事故影響
農林水産省がまとめた戸別補償の加入状況は表の通り。同じ被災地ながら、8.1%減の宮城と、8.0%増の福島が好対照を見せた。
福島では、津波や原発事故で、作付けできない農地が5460ヘクタール(原発事故による警戒区域の2120ヘクタールを含む)ほど発生。加えて震災による内陸部のパイプライン損壊で作付けできなかった水田も多くあり、これら農地を県として減反したことにする地域間調整を行った。
調整の際、作付けを行う農家は、作付け不能となった農地を持つ農家に対し、面積に応じて金銭補償を行う(とも補償)。とも補償を行えば、実際は減反していないのに、形の上では減反をしたことになる。
具体額は地域によって違うが、とも補償として支出する金額より、戸別補償への加入で受け取る定額交付金(10アール当たり1万5000円)の方が多く、収入増が期待できる。
東北農政局は「とも補償を利用した加入申請が、昨年制度加入者が少なかった中通り地方を中心に増加したことが、急増の要因ではないか。作付けできなかった水田に、麦や大豆を植えたところも多く、コメ以外の作物の制度加入も増えた」と説明している。
◎収入を下支え
急増の背景には、原発事故による風評被害への備えもあったようだ。とも補償を利用し、ことし初めて制度に加入した白河市の専業農家(33)は「昨年の米価下落で戸別補償が機能したのを見て、魅力を感じていたところへ起きた原発事故。風評被害で価格が下がる可能性を考えれば、1万5000円の定額交付金は、収入を下支えする保険のような役割を果たすと考えた」と明かす。
宮城は津波などで作付け不能となった農地が、福島より多い1万4340ヘクタール(作付け自粛の629ヘクタールは除く)に達したものの、昨年の試行実施段階での戸別補償制度加入率が9割を超え、福島の約6割を大きく上回った。加入増の余地はほとんどなく、作付けできなくなった農家の分が、減少となって表れた形だ。
福島県のことしのコメ生産数量目標は、面積換算すると約6万3300ヘクタール。戸別補償加入増の裏返しとして、過剰作付けは前年比で1万600ヘクタールも減少し、生産数量目標をわずかに上回る6万4100ヘクタールの作付け実績となった。
最終更新:10月9日(日)6時10分
記事のみの紹介とします。
暗黒の稲妻