追跡2011:宍道湖のヤマトシジミ激減 原因不明の大量死も /島根
毎日新聞 9月22日(木)16時0分配信

 ◇今年は危機的なデータが…
 宍道湖名物のヤマトシジミが激減し、危機に陥っている。もともと近年の漁獲量は減少傾向にあったが、昨夏の猛暑、アオコの大量発生のほか、原因不明の大量死も起きている。関係者は「大量死の原因をつかまないと、対策も立てられない」と頭を抱える。シジミ漁の現状や、資源を守るための取り組みを追った。【目野創】
 ■嘆き
 「今までこんなにとれない年はなかった」。今月中旬、シジミ漁師歴42年のベテラン、五百川(いおがわ)一男さん(63)は、湖底からシジミをかき取る「じょれん」を湖面に差しながら、こう嘆いた。漁獲量に加え、湖に戻す稚貝の少なさが気に掛かる。「稚貝の量で来年の漁獲量を予想できる。今の調子だと来年も大変だ。嫌になってしまう」。
 漁ができるのは午前7時から同10時までで、1日あたりの上限は90キロと決められている。この日、五百川さんは、時間を最大限使い、なんとか90キロを捕った。「去年なら1時間半ぐらいで漁は終わっている。この状態が続いたら、後継者はいなくなってしまう」。
 ■急減
 ヤマトシジミの漁獲量は、1973年の1万9234トンをピークに、長期的には減少傾向が続く。88年には1万トンを切った。97年、2003年、06年に大量死が発生し、08年以降は3000トン台で推移している。
 しかし、今年の厳しさは格別だ。県水産技術センターは毎年、6月と10月に宍道湖にいるヤマトシジミ全体の資源量を調べている。99年以来、6月の資源量は3~6万トンほどだったが、今年は約2万2000トン(推計値)に急減。98年の約2万1000トン以来の低いレベルとなった。ヤマトシジミは6~10月に成長するため10月の調査では6月より増えることが多い。しかし昨年は、6月と10月でほとんど変化がなかった。
 ■原因
 理由としてセンターが指摘するのは、昨夏の猛暑。水温が30度以上の日が8月上旬から9月上旬まで長く続いた。それでアオコが大量発生し、植物性プランクトンに日光や栄養が行き渡らずシジミの餌が不足したほか、湖底の酸素濃度が薄くなったという。また、それ以前に、昨春の長雨で湖水の塩分が下がり過ぎ、産卵が遅れて暑い時期にずれ込んだため生育環境が厳しかったことも影響しているとみられている。
 ただ資源量減少の原因はそれだけではないようだ。昨年11月~今年1月と、今夏に大量死が確認されたが、原因は分かっていない。8月下旬からは昨夏に続いてアオコが大量発生し、心配の種は増えるばかりだ。
 ◇「漁獲制限だけでは」
 283人のシジミ漁師が所属する宍道湖漁協(松江市)では、漁獲制限や、稚貝を定着させるために、湖に竹を差し、生きやすい環境を整えるなど、対策を進めてきた。
 1日の漁獲量上限は、1998年ごろからは約150キロだったが、07年から120キロ、08年からは90キロにした。操業日も削減。従来は週4日だったが、今年8月からは、月、木、金曜の週3日とした。操業日の削減は漁獲量を下げるだけでなく、漁師の収入にも影響する。
 同漁協の高橋正治参事は「組合員には、負担をかけてしまい申し訳ない」と語る。漁師からは、「漁獲制限だけで資源は回復するのか」と、これまでのやり方に不安を募らせているような意見も上がったという。「シジミ漁はこれまでたくさんの若い人たちが継いできてくれた。彼らのためにも、シジミがたくさんとれる宍道湖を残していかなければ」。高橋参事は強調するが、現状の打開策はまだ見えていない。
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9月22日朝刊

最終更新:9月22日(木)17時44分

宍道湖といえばシジミが有名だがその宍道湖のヤマトシジミが激減しているそうだ。

暗黒の稲妻