B型肝炎ウイルス再活性化、早期発見で発症防げる
読売新聞(ヨミドクター) 9月20日(火)12時18分配信


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B型肝炎ウイルス再活性化の仕組み
 B型肝炎ウイルスの感染歴のある人が、血液がんやリウマチなどの免疫を抑える治療をきっかけに、ウイルスが再活性化する危険があることが厚生労働省研究班の調査でわかったが、再活性化を早期に発見すれば肝炎発症は防ぐことができる。ウイルスの遺伝子検査の保険適用など、体制の整備が迫られている。(医療情報部 館林牧子、竹内芳朗)


■免疫抑制薬に注意 血液がん、リウマチなど

 「あれっ、何で治らないんだろう?」

 3年前、青森県の五所川原市立西北中央病院の浦田幸朋医師は、50歳代のリウマチ患者を前に頭を抱え込んだ。治療中に肝機能が悪くなり、いろいろな薬を試したが良くならない。知人の肝臓内科医から「B型肝炎ウイルスの感染歴のある人の再活性化」があると聞き、抗ウイルス薬で治療したところ、正常に戻った。

 この経験をきっかけに、通院する516人のリウマチ患者を調べた。約3割(157人)の患者に感染歴があり、うち13人(8%)はリウマチの治療でウイルスが再活性化したことがわかった。ある程度以上、増えた人には抗ウイルス薬を使用することで全員が肝炎を予防できた。

 B型肝炎ウイルスは感染しても自然に治ることも多い。だが、治ってもウイルスの遺伝子は肝臓に残る。近年、免疫を抑える新薬や新治療法が登場し、病気の治療でウイルスが再活性化する例が報告され始めた。

 2000年代に、悪性リンパ腫で新薬を使った人に再活性化が報告されるようになり、当初はこの薬の副作用かと考えられたが、浦田医師の調査などから、他の治療にも広がる可能性が出てきた。

 リウマチの治療は、特定の免疫物質を抑える「生物学的製剤」が03年から相次いで登場し、既存の免疫抑制剤をより多く使う治療も普及。治療効果は格段に上がったが、同時に強く免疫が抑制されるようになり、再活性化が起きるようになったと考えられている。


■早期発見がカギ

 早期に抗ウイルス薬を使えば肝炎が予防できるが、治療しないと一部が劇症化して死亡することがある。

 劇症肝炎の全国登録調査では、2004年~09年に少なくとも17人が劇症肝炎で死亡。内訳は、悪性リンパ腫13人、白血病2人、多発性骨髄腫1人、乳がん1人。これとは別に、09年にはリウマチ患者が死亡した。間質性肺炎の治療で肝炎を発症したとの報告もある。

 悪性リンパ腫の死亡例は全員、新薬の「リツキサン」を使っていたが、それ以外は特定の薬剤との明確な関連はわかっていない。

 厚生労働省研究班(研究代表者・持田智埼玉医大教授)は、どんな治療で再活性化が起きるか調査中だ。持田教授は、「免疫を抑制する治療は様々な病気の治療で用いられている。対象疾患の絞りこみとウイルス治療の開始時期は今後の課題だが、すべての診療科で注意が必要」と話す。

 だが、早い段階でB型肝炎ウイルスの再活性化を把握するには、血液中に含まれる微量のウイルス遺伝子の検査など保険が効かない検査が必要だ。このため、現在は、一部の医療機関が自主的に体制を整えるにとどまっている。

 東京都内でリウマチ患者を多く診ている開業医は「近くの大学病院に遺伝子検査を引き受けてもらっているが、保険適用にして全国の医療機関でできるようにすべきだ」と話す。厚労省は「課題を整理して、どのような対策が必要か、検討したい」と話している。

最終更新:9月20日(火)12時18分

気になったので記事を紹介します。

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