<リビア対応>NATO足並み乱れ 大佐拘束巡り
毎日新聞 8月28日(日)0時40分配信

 カダフィ政権が事実上崩壊したリビアへの関与や反カダフィ派の承認を巡り、反カダフィ派を軍事的に支援してきた北大西洋条約機構(NATO)や、カダフィ政権の支援を受けてきた国々が加盟するアフリカ連合(AU)に足並みの乱れが起きている。【ブリュッセル斎藤義彦、ヨハネスブルク高尾具成】

 25日にトルコで開かれた主要28カ国のリビア関係国会議で、NATOの軍事作戦の継続について「市民の保護に重要」と了承された。しかし、反カダフィ派によるカダフィ大佐の拘束作戦については、英国が「NATOの協力」を認めているのに対し、米国は、国連決議に反していることなどを理由に反対の意向を示したままだ。

 フォックス英国防相は25日、「NATOは(反カダフィ派の)国民評議会が大佐や残党を発見するのを助けるため、情報や偵察装備を提供している」と英テレビに述べた。

 今年3月に採択された国連安保理決議に基づくNATOの役割は、飛行禁止空域の設定▽海上封鎖▽市民の保護--の三つ。NATOは26日もリビアの首都トリポリにある大佐の居住区兼軍事基地や大佐の故郷北中部シルトを爆撃したが、市民の保護が目的だ。

 NATOは「カダフィ大佐の殺害や拘束は任務に含まれていない」としている。NATOが決議から踏み出し大佐拘束に関わったことが英国防相により初めて明らかにされた。

 これに対し米国防総省は25日、「米軍もNATOも大佐拘束には関わっていない」と全面否定した。背景には、米国が財政難などを理由にNATOの役割拡大に強く反対している事情がある。

 しかし、リビア情勢は、カダフィ大佐を拘束・殺害しなければ、軍事作戦は実質的に終了しない。大佐拘束への関与が不明確なままでは、NATOが十分に役割を果たせない恐れがある。一方で、反カダフィ派の大佐拘束作戦に深く関与すれば、武力行使に慎重な中露が安保理で問題にする可能性もある。

 ◇AU、新政府承認を見送り

 リビアが加盟するAU(54カ国)は26日、エチオピアでリビア情勢に関する会議を開き、反カダフィ派「国民評議会」を新政府の代表として承認するのを見送った。AUや加盟国の多くは、カダフィ政権から石油マネーによる恩恵を受けてきた経緯があり、中立的立場を崩すことにためらいがあるためだ。

 ロイター通信によると、26日の会議で南アフリカのズマ大統領は「戦闘は継続中」と強調した。国民評議会についても「正統な政府だと言うことはできない」と述べた。

 AUは「リビア人自身による対話解決」を掲げ、ズマ氏を中心に4月と5月にトリポリでカダフィ大佐とも直接協議に臨んだ。NATO主導の空爆停止を求めるなど、独自の解決策を探ってきた。

 カダフィ大佐は、石油マネーを背景に、AUの年間資金の約15%を拠出、掌握する金融機関などを通じて加盟数十カ国でインフラ整備事業などに投資し、アフリカにおける存在感を高めてきた。

 今年に入ってからのリビア内乱後、カダフィ政権支援の関連事業を凍結するなどの動きはあったが、反カダフィ派のトリポリ掌握までは国民評議会を承認した国は少数だった。大半は「頼れる身内だった」大佐への最善策を模索してきたのが実情だった。

 AUは、90年代後半に前身のアフリカ統一機構(OAU)特別総会でカダフィ大佐の提案を受けて02年に創設された。目的の一つに「アフリカ人自身でアフリカの課題を解決し、他大陸の介入を避ける」との項がある。「空爆がアフリカの和平努力を台無しにした」(23日、ズマ氏)との発言の背景には、AUの役割が結実しなかった無念もありそうだ。

 一方で、26日の会議を前に加盟十数カ国が反カダフィ派を承認した。24日、カダフィ政権と緊密な関係にあったブルキナファソは大佐の亡命先提供の表明と同時に国民評議会を認めた。この日、カダフィ派への民兵参加が問題視されたチャドやスーダンも反カダフィ派を「リビア代表」とした。AUとしては承認を見送ったが、国際社会の対応を見ながら個別に承認していく加盟国の動きは広がりそうだ。

最終更新:8月28日(日)0時40分

リビアのカダフィ大佐拘束を巡りNATO足並み乱れ。
各国の利害が一致しないのか。

暗黒の稲妻