<いじめ>昨年度、認知件数が初めて増加 複雑・潜在化進む
毎日新聞 8月29日(月)7時22分配信

 ◇調査実施率向上が影響/「氷山の一角」の声も

 文部科学省が今月4日発表した10年度問題行動調査で、いじめの認知件数が増加した。現行の調査方法となった06年度以降初めてで、同省はアンケート調査の実施率向上を主な要因と見る。だが、いじめは潜在化しており、学校からは「判明したのは氷山の一角」との声が上がる。【喜屋武真之介、勝野俊一郎、田中博子】

 ■自殺の衝撃

 今回の問題行動調査では、国公私立小中高校などでいじめアンケート実施率が65・9%から90・4%に大幅に上昇した。昨年全国で相次いだ子供の自殺が実施率を押し上げた。

 群馬県桐生市では10月、小6の上村明子さん(当時12歳)が自殺した。学校側は当初、いじめを否定していたが、再調査でいじめの事実を認めた。県はこの問題を重く受け止め、事件後、県立、市町村立の全593校でアンケートを毎月実施。この結果、国公私立の県全体の実施率は09年度の78・9%から95・8%に上がった。また、上村さんのシグナルに気付けなかった背景に、学級崩壊状態があったことも判明した。県教委は教諭を対象に学級崩壊に関するアンケートも実施。現場の実態が少しずつ共有されつつある。

 ■アンケート効果

 一方、1000人あたりの認知件数が27・6件と、3年連続で全国最多だった熊本県。文科省の指示よりも前の06年度から、アンケートによる実態把握に取り組んできた。きっかけは、同年に県内の消印のある「いじめ自殺予告はがき」が文科省に届いた“事件”だった。件数の多さは事態の深刻さを想像させるが、いじめの解消率も全国トップの97・2%だった。県教委は「担任教諭が気づかない子供のSOSを浮かび上がらせることができている」と、敏感な対応姿勢を自負している。

 むろんアンケート調査にも課題はある。熊本市立小学校に勤務する50代の女性教諭は「無記名といっても、いじめ相手に『告げ口した』と思われるのを気にして言い出せない子供もいる。教師と子供の信頼関係が大切だ」と話す。

 ■実態は潜在化

 さらにアンケート調査だけでは把握しきれないほど、いじめの実態の複雑化と潜在化は進んでいる。

 アンケート実施率が公立小36・7%、同中55・3%からともに100%となった大阪府。認知件数は小中ともに06年度から減少し続け、10年度は前年度比168件減の1744件で、06年度(3559件)からはほぼ半減した。府教委は「スクールソーシャルワーカーの配置など組織的な取り組みの成果が出てきた」と手応えを示すが、府内のある市教委幹部は「人員の配置は対症療法で、今の成果は『水もの』と見るべきだ。実態は見えにくくなっている」と警鐘を鳴らす。

 問題を複雑化させる要因は、家庭の不安定さ。大阪は生活保護受給率が全国一高く、ある市立小の男性教頭(50)は「貧困など生活環境が不安定な『しんどい家庭』の子は、いじめの被害者にも加害者にもなりやすい」と指摘し、子供だけでなく保護者にも目を向けるようにしているという。

 さらに、携帯電話の普及が子供たちに新たないじめの場を提供した。「学校裏サイト」など携帯電話で利用できるネット世界で、特定の子供の嫌がる写真を投稿したり、書き込みで集中的に攻撃しながら、学校生活ではそぶりも見せない。

 また、今回は東日本大震災で大きな被害を受けた3県(岩手、宮城、福島)のデータは含まれていない。文科省の調査では、この3県から転校などをした児童生徒や幼稚園児は5月1日時点で約2万人に上るが、避難先で誰にも相談できないまま耐えているケースがあると危惧されている。

 ■意識改革も必要

 いじめ発見のため、学校側の意識改革を求める意見もある。NPO法人「全国いじめ被害者の会」(大分県佐伯市)代表の大沢秀明さん(67)は96年、当時中学3年だった四男秀猛(ひでたけ)さんをいじめを苦にする自殺で亡くした。加害者の同級生2人は恐喝罪で書類送検されたが、学校側を相手取った民事裁判では、自殺を予測する学校側の予見可能性は認められなかった。大沢さんは、教師はいじめがあってもけんかやトラブルとして扱い「仲良くしなさい」となだめているのが現実だと言い、「『悪いことは悪い』としかるのが真の教育。いじめた子には厳しく措置して更生に導かないと、被害者も加害者も救えない」と訴える。

最終更新:8月29日(月)10時43分

問題が余りにも複雑になり過ぎてる気がしなくもない。
根本的に原点に回帰してそこから何かいいアイディアが出てこないものなんだろうか。

暗黒の稲妻