<シリア>介入ためらう各国 非難や制裁措置にとどまる
毎日新聞 8月2日(火)21時54分配信


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シリア中部ハマ
 【カイロ和田浩明】シリア政府による民主化勢力への武力弾圧は3月の開始から約5カ月が過ぎ、死者は1700人に達した。2日も中部ハマなどで24人が死亡、軍部の“無差別攻撃”は激化している。しかし、国際社会は制裁措置など効力の薄い対応にとどまり、リビアと同様の軍事介入を求める声は少ない。背景には、介入が宗派間紛争を誘発する危険やイランの反応に対する懸念、自国権益に関する思惑が絡む。反体制派側にも外国の直接介入への反発がある。

【混迷するシリア】なぜ介入をためらうのか 周辺諸国の事情

 アサド政権にはオバマ米大統領ら各国首脳が非難、資産凍結などの制裁を科している。欧州連合(EU)は2日、追加制裁対象のマフムード国防相ら5人の氏名を公表。イタリアは在シリア大使を召還した。国連安全保障理事会でも非難決議案を巡る協議が続く。

 軍事介入には米連邦議会などの一部に強硬論もある。だが、米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長は2日、「米国が直接関与すべき兆候は一切ない」と発言した。

 アサド政権と近く、安保理常任理事国で議決拒否権を持つロシアは、武力弾圧で多数の死者が出ていることに「重大な懸念」を表明した程度。安保理での非難決議にすら消極姿勢だ。ロシアは地中海の海軍拠点をシリアに整備している。

 リビア空爆を実施中の北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は、シリアへの軍事介入には、国連安保理決議と中東諸国の支持が必要との認識を示している。しかし、安保理決議はロシアや中国の拒否が予想され、シリアが加盟するアラブ連盟(22カ国・機関)も介入反対を明示している。

 各国の慎重姿勢の背景には、シリアをめぐる複雑な情勢もある。

 人口の1割強に過ぎないイスラム教アラウィ派が、7割を占めるスンニ派を支配、キリスト教徒も1割存在する。アラウィ派主導の軍・治安機関に対する他派の反発は、武力弾圧により拡大。前大統領時代から親子2代でシリアを強権支配するアサド政権が、軍事介入で崩壊すれば、イラクのような宗派間紛争が勃発するとの懸念は根強い。

 国際シンクタンクのインターナショナル・クライシス・グループは「介入政策強化は失うものが大きい」と警告した。アサド政権もこの懸念を逆手に取り、民主化蜂起は「外国の支援を受けたテロ勢力の陰謀」との主張を展開している。

 アサド政権は欧米が核問題で対立するイランと関係を保持。シリアとイランは、安保理非常任理事国を務めるレバノンの内閣を主導するイスラム教シーア派組織ヒズボラの後ろ盾だ。シリアへの軍事介入はイランやヒズボラを巻き込んだ地域紛争の危険性をはらむ。

 米カーネギー国際平和研究所中東センターのポール・サレム所長は「直接介入より、経済制裁や武器禁輸を強化すべきだ」と指摘。シリア人人権活動家のロアリ・フセイン氏は「軍事介入は問題外だ」と語った。

最終更新:8月3日(水)8時1分

事情が事情だけに介入出来無いというのが現状だろうか。
軍事介入で崩壊すれば、イラクのような宗派間紛争が勃発、更に事態は悪化。
ジレンマだね。

暗黒の稲妻