再生エネルギーは本当に使えるのか
東洋経済オンライン 7月27日(水)11時5分配信
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電源別発電コスト
「電力事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」――。いわゆる再生可能エネルギー特措法案が現在、国会で審議されている。
世界の1次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合
この法案が成立すると、電力会社には太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスを使って発電された電気を、一定期間、固定価格で買い取ることが義務づけられる。欧州ではすでに実施されているFIT(フィードインタリフ)が日本でも導入されることになる。
現在、電力会社に再生可能エネルギー発電による一定割合の電力を導入することを義務づけた“RPS法”(2003年4月から施行)があるが、買い取り価格は電力会社主導で低い水準に決められ、導入量もほんのわずか。このため、再生可能エネルギーの普及促進にはつながっていないのが現状だ。
再生可能エネルギー特措法案では、経済産業大臣が買い取り期間と買い取り価格を決めることになっている。ただし、対象となる再生可能エネルギーは、太陽光とそれ以外の二つに分けられ、太陽光以外は1キロワット時当たり15~20円、買い取り期間は15~20年の範囲内(住宅用は10年)で決まる。ドイツのFITでは太陽光以外でも、陸上風力と洋上風力を分けるなど、きめ細かに分類されているのに比べ、大まかすぎるとの批判がある。
また、少なくとも3年ごとに導入量を見直し、経産大臣が必要と認めれば買い取り価格も改定される。さらに、第五条「接続の請求に応ずる義務」の中では、「次の場合を除き、接続を拒んではならない」と買い取ることを義務づけているが、「次の場合」とは、「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」、つまり電力会社の判断で買い取りを拒否できる法律となっている。
最大の焦点は買い取り価格だ。電力業界関係者の間では、太陽光発電は1キロワット時当たり47円前後、太陽光以外は同20円で決まるとの見方が多い。仮にそれ以下だとしても、赤字を意味する発電コスト以下の買い取り価格はありえない。
一方、既存電源と比べると、再生可能エネルギー発電コストは明らかに高い。「太陽光発電のコストはここ数年で劇的に低下してきた」(新エネルギー・産業技術総合開発機構の諸住哲・主任研究員)という流れはある。だが、電力会社はFIT導入による買い取りで増えた費用をカバーするため、電力料金を値上げする。一般家庭向けだけでなく、大口需要家の企業向けでも値上げされることになりそうなだけに、経団連は法案に反対の姿勢を見せている。
当面は、FITによる買い取りが増えれば増えるほど、電力料金は上がっていくことが予想される。この値上げに対して、一般国民は脱原発・再生可能エネルギー普及のためにはやむをえないと思うのかどうか。
■長期エネルギー政策で原発はどうするのか
10年度のエネルギー基本計画では再生可能エネルギーの比率を30年までに20%まで引き上げる(原子力比率は約50%)としていたが、4月のサミットで菅直人首相は、比率をそのままに20年へ計画を10年前倒しすると発言した。一方、原子力比率については何も触れなかった。
しかし、7月の記者会見で将来的には原子力依存を下げていく「脱原発」を宣言した。退陣を表明しながら居座る菅首相。「辞める人が脱原発や再生可能エネルギーについて思いを語っても白けるだけ」と民主党内からも批判の声は上がっている。だが、日本の長期的なエネルギー政策については、福島原発事故以降、実質的に白紙状態が続いている。
日本の経済や社会、国民生活を根底から支えるエネルギーについて、何も議論のないまま、首相が勝手に発言することは問題だが、国家のエネルギー政策が決まっていないのに、再生可能エネルギー特措法案の審議が先行して行われている。
再生可能エネルギーにはそれぞれ一長一短がある。コストも違う。技術開発、あるいは設置拡大可能性など普及余地にも違いがある。すべて同じ基準で比較することは難しいが、原発事故を契機に再生可能エネルギーに対する期待が大きく膨らんできたことは確かだ。
世界的に見れば、再生可能エネルギーの普及はまだほんのわずかだが、欧米に比べると、日本は「後進国」である。理想を言えば、再生可能エネルギーも含めた電源のベストミックスを実現、スマートグリッドによる効率的な電力消費を目指すべきだろう。
そのためには、まず国民的な議論が必要。日本のエネルギー政策をあらためて考え直すときだ。
週刊東洋経済2011年7月30日号[2011年7月25日発売]では、再生可能エネルギー、スマートグリッドについて徹底リポートした。
(週刊東洋経済2011年7月30日号より)
最終更新:7月27日(水)11時14分
非常に興味深いかつこれは本当に国民をあげて考えるべきだと思うね。
暗黒の稲妻
東洋経済オンライン 7月27日(水)11時5分配信
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電源別発電コスト
「電力事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」――。いわゆる再生可能エネルギー特措法案が現在、国会で審議されている。
世界の1次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合
この法案が成立すると、電力会社には太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスを使って発電された電気を、一定期間、固定価格で買い取ることが義務づけられる。欧州ではすでに実施されているFIT(フィードインタリフ)が日本でも導入されることになる。
現在、電力会社に再生可能エネルギー発電による一定割合の電力を導入することを義務づけた“RPS法”(2003年4月から施行)があるが、買い取り価格は電力会社主導で低い水準に決められ、導入量もほんのわずか。このため、再生可能エネルギーの普及促進にはつながっていないのが現状だ。
再生可能エネルギー特措法案では、経済産業大臣が買い取り期間と買い取り価格を決めることになっている。ただし、対象となる再生可能エネルギーは、太陽光とそれ以外の二つに分けられ、太陽光以外は1キロワット時当たり15~20円、買い取り期間は15~20年の範囲内(住宅用は10年)で決まる。ドイツのFITでは太陽光以外でも、陸上風力と洋上風力を分けるなど、きめ細かに分類されているのに比べ、大まかすぎるとの批判がある。
また、少なくとも3年ごとに導入量を見直し、経産大臣が必要と認めれば買い取り価格も改定される。さらに、第五条「接続の請求に応ずる義務」の中では、「次の場合を除き、接続を拒んではならない」と買い取ることを義務づけているが、「次の場合」とは、「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき」、つまり電力会社の判断で買い取りを拒否できる法律となっている。
最大の焦点は買い取り価格だ。電力業界関係者の間では、太陽光発電は1キロワット時当たり47円前後、太陽光以外は同20円で決まるとの見方が多い。仮にそれ以下だとしても、赤字を意味する発電コスト以下の買い取り価格はありえない。
一方、既存電源と比べると、再生可能エネルギー発電コストは明らかに高い。「太陽光発電のコストはここ数年で劇的に低下してきた」(新エネルギー・産業技術総合開発機構の諸住哲・主任研究員)という流れはある。だが、電力会社はFIT導入による買い取りで増えた費用をカバーするため、電力料金を値上げする。一般家庭向けだけでなく、大口需要家の企業向けでも値上げされることになりそうなだけに、経団連は法案に反対の姿勢を見せている。
当面は、FITによる買い取りが増えれば増えるほど、電力料金は上がっていくことが予想される。この値上げに対して、一般国民は脱原発・再生可能エネルギー普及のためにはやむをえないと思うのかどうか。
■長期エネルギー政策で原発はどうするのか
10年度のエネルギー基本計画では再生可能エネルギーの比率を30年までに20%まで引き上げる(原子力比率は約50%)としていたが、4月のサミットで菅直人首相は、比率をそのままに20年へ計画を10年前倒しすると発言した。一方、原子力比率については何も触れなかった。
しかし、7月の記者会見で将来的には原子力依存を下げていく「脱原発」を宣言した。退陣を表明しながら居座る菅首相。「辞める人が脱原発や再生可能エネルギーについて思いを語っても白けるだけ」と民主党内からも批判の声は上がっている。だが、日本の長期的なエネルギー政策については、福島原発事故以降、実質的に白紙状態が続いている。
日本の経済や社会、国民生活を根底から支えるエネルギーについて、何も議論のないまま、首相が勝手に発言することは問題だが、国家のエネルギー政策が決まっていないのに、再生可能エネルギー特措法案の審議が先行して行われている。
再生可能エネルギーにはそれぞれ一長一短がある。コストも違う。技術開発、あるいは設置拡大可能性など普及余地にも違いがある。すべて同じ基準で比較することは難しいが、原発事故を契機に再生可能エネルギーに対する期待が大きく膨らんできたことは確かだ。
世界的に見れば、再生可能エネルギーの普及はまだほんのわずかだが、欧米に比べると、日本は「後進国」である。理想を言えば、再生可能エネルギーも含めた電源のベストミックスを実現、スマートグリッドによる効率的な電力消費を目指すべきだろう。
そのためには、まず国民的な議論が必要。日本のエネルギー政策をあらためて考え直すときだ。
週刊東洋経済2011年7月30日号[2011年7月25日発売]では、再生可能エネルギー、スマートグリッドについて徹底リポートした。
(週刊東洋経済2011年7月30日号より)
最終更新:7月27日(水)11時14分
非常に興味深いかつこれは本当に国民をあげて考えるべきだと思うね。
暗黒の稲妻