異質の連星、一般相対性理論を実証?
ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 7月21日(木)11時38分配信
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2つの白色矮星から成る連星が軌道を周回すると、重力波が生じる(想像図)。
(Illustration courtesy Tod Strohmayer/CXC/NASA and Dana Berry/CXC)
 3000光年のかなたで、年老いた2つの星が“死の舞踏”を繰り広げている。最終的には衝突して、超新星になる可能性があるという。

 この連星は、太陽サイズの恒星が燃えつきた後に残った中心核、白色矮星2つで構成されている。秒速595キロという猛スピードで螺旋を描きながら互いに引き寄せられており、90万年で融合を遂げると見られている。

 いずれ研究が進めば、アインシュタインの一般相対性理論の検証や、すべてのタイプの超新星に共通する起源を導く可能性がある。

 アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天文学者で、研究チームのリーダーを務めるウォーレン・ブラウン氏は、「地球サイズと海王星サイズの矮星で、地球と月の距離の3分の1程度しか離れていない。12分間で互いを1周している」と説明する。

「互いの物質が流れ込む現象が発生しておらず、相互に影響を及ぼしていない点が異質だ。一般相対性理論の有効性や極端に強い重力について探る上で格好の手掛かりとなるかもしれない」。

“踊る連星”は、アリゾナ州のホプキンス山にある口径6.5メートルの多面反射望遠鏡(MMT)で白色矮星の連星を調査していた研究チームが発見した。2つの星が互いを隠す際に生み出される光のスペクトルを観察し相対運動を計測した。

 白色矮星は超高密度の天体で、スプーン1杯あたりの質量が自動車1台分もある。

 大質量の天体が互いを周回すると、時空がかき回された状態になり、池に石を投げたように波紋が生まれる。連星はこの「重力波」によってエネルギーの一部を失い、軌道がゆっくりと縮んでいくことになる。

「今回は物質のやり取りがないため、重力波の効果測定に最適だ」とブラウン氏は言う。「宇宙には多くの連星があるが、非常に接近して互いに影響し合っている。やり取りする物質から生じるエネルギーは観測できるが、連星の個別の解明は難しい」。

 しかし今回発見された連星なら、互いに螺旋を描きながら近づいていく際の軌道周期の変化を正確に測定できるという。

 また、星の進化と最期を解明する上で重要な手掛かりとなる可能性もある。例えば白色矮星の衝突は、Ia型超新星爆発を引き起こすと長い間考えられてきた。伴星から白色矮星へと降り積もった物質で質量が増加して物理的な限界を超え、核融合爆発が起こるのがIa型だ。

 これまでの理論モデルに従えば、今回の連星が融合すると、超大質量の白色矮星となるか、あるいは非常に珍しい弱い超新星爆発が生じる可能性がある。

 2011年3月の発見以降、地球から見て太陽のほぼ真後ろに移動しており、現在は観測できないという。軌道周期がどの程度短くなっているか確認するには、秋まで待たなければならない。

「90万年という、宇宙時間から見ればまさに一瞬で星が融合を遂げる。この連星は発見できただけでも価値がある」とブラウン氏は述べている。

Andrew Fazekas for National Geographic News

最終更新:7月21日(木)11時38分

今回の実証は言わば宇宙の神秘の解明の一歩となり得るのか。
非常に興味深いな。

暗黒の稲妻