<節電>関西電力管内でも 戸惑う企業や家庭
毎日新聞 7月20日(水)21時16分配信


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厳しい表情で記者の質問を聞く関西電力の八木誠社長=大阪市北区の関西電力本店で2011年7月20日午後4時58分、長谷川直亮撮影
 政府は20日、関西電力管内でピーク時の電力需要を昨夏に比べて10%以上減らすように要請、福島第1原発事故を契機とした原発稼働停止による電力不足懸念が全国に本格波及することになった。ただ、今回の要請は電力使用制限令を発動して大企業など大口需要家に節電を強制した東京電力や東北電力管内への措置と異なり、企業や家庭の自主対応頼み。東日本大震災直後に計画停電を経験した東電管内と、従来、電力不足懸念が薄かった関電管内では節電意識も異なる。国の10%節電要請に戸惑う企業や家庭も多く、関電管内の電力不足回避にどこまで協力が得られるか、不安も大きい。

 ◇西移転の企業困惑

 西日本の夏の電力需給がにわかに逼迫(ひっぱく)したことに、節電余地の少ない中小企業や、東日本の電力不足に対応して西日本への生産シフトを進めてきた企業は困惑を隠せない。

 東大阪市の金属加工会社は、普段から冷房もつけず作業しており、追加の節電策は蛍光灯を消す程度。関西の多くの中小企業にとって10%以上の節電目標達成は至難の業だ。同社専務(36)は「あとは機械を止めるしかないが、納期の遅れに直結する」と頭を抱える。「日々の電力需給状況を見て、危ない時に(操業を)止めるくらいしか方法がない」と話す。

 一方、東電管内での15%節電による、生産やサービス提供への影響を抑えようと、関西シフトを進めてきた東京を拠点とする多くの大手企業にも関電など西日本の電力不足は大きな誤算だ。6月に関東のシステム開発用サーバーを兵庫、富山県のデータセンターに移した富士通は「リスク分散の狙いもあり(西日本への)移管はやめない」としながらも「必要なら追加の節電対策を検討しなければならない」と厳しい表情。 アサヒビールの持ち株会社、アサヒグループホールディングスは「東京、東北電力管内で15%節電に取り組んできたが、関西でも同様に対応する」(泉谷直木社長)として、兵庫県西宮市と大阪府吹田市の工場でも東日本と同様に生産の夜間・休日シフトなど節電対策の強化を検討する考えだ。また、西日本へ生産の一部移管を進めてきたJFEスチールも「電力不足は全国的な問題。精いっぱい協力しないといけない」(林田英治社長)として、西日本の製鉄所で自家発電の稼働率を高めるなど対応に追われている。

 電力不足はサプライチェーン(部品供給網)の復旧などで震災の打撃から立ち直ろうとしている企業の生産活動の大きな足かせだ。政府が西日本でも節電要請に踏み切ったことに対して、経済同友会の長谷川閑史代表幹事は20日の会見で「来年以降の政府の解決策が明示されない限り、企業は国際競争で生き残るために生産の海外シフトを考えざるをえない。脅しではない」と強調した。実際、日本電産が電力不足を理由に実験設備などを海外に移転する方針を表明している。海江田万里経済産業相も20日夜の会見で「経済界が生産を抑制し、海外移転することに懸念を持っている」と認めたように、電力不足の拡大が「産業空洞化」につながる懸念は高まっている。【宇都宮裕一、立山清也、宮崎泰宏】

 ◇罰則なし 効果には疑問

 「青天のへきれきだ」。関電の大飯原発1号機(福井県おおい町)と中国電の三隅火力発電所1号機(島根県浜田市)で相次いだトラブルによる運転停止に、経産省幹部は青ざめた。関電では21日に高浜原発4号機(福井県高浜町)、22日に大飯原発4号機がそれぞれ定期検査で運転を停止する。菅直人首相の唐突な安全評価(ストレステスト)導入や「脱原発依存」発言で立地自治体の不信が広がる中、定検済みの原発の再稼働も見通せない。関電は西日本の電力各社から融通を受ける算段もしていたが、中国電の火力停止などの影響で十分な融通は期待薄になった。

 「より一層の節電をお願いする」。関電の八木誠社長は20日の会見で語気を強めた。企業や家庭の節電無しでは今夏の電力需要に対する供給余力はマイナス6.2%で、計画停電に追い込まれかねない。八木社長は電力不足が深刻化した場合、東電を含む電力各社に緊急の融通を求める意向を表明。その上で「需給バランスが崩れれば、一部地域を停電にする可能性」にも言及した。

 関電は7月1日から企業や家庭に対して独自で15%の節電要請もしてきた。しかし、足元のピーク需要の抑制効果は5%程度。「15~20%の節電効果が出ている」(幹部)東電に比べ小さい。背景には、東電管内では契約電力500キロワット以上の大口需要家に罰則付きで15%の節電を強制する電力使用制限令が発動されたことに加え、震災直後の計画停電で家庭にも節電意識が浸透したことがある。

 一方、国が要請に乗り出したとはいえ、関電の場合、使用制限令は見送られ、「節電は100%企業や家庭の自主対応頼み」(経産省幹部)だけに効果がどこまで上がるか、不安が消えない。

 また、関電の15%節電要請に対して、政府の要請が「10%以上」と目標数字が食い違うことも利用者を混乱させている。経産省は国が示した節電目標について「供給余力不足分に、安定供給に最低限必要な供給予備率(3%)を上乗せして約10%」と説明。関電の目標との違いについては「国は需要全体で10%以上の節電を求めたが、関電は(企業や家庭など)個々の需要家の目標として15%節電を示した。実態は違わない」とするが、分かりにくさが否めない。

 橋下徹・大阪府知事は20日の会見で「政府と関電がバラバラにやってグチャグチャ。誰が調整しているのか」と場当たり的にも見える国の節電要請を批判した。【和田憲二、横山三加子】

最終更新:7月21日(木)0時36分

扇風機で今年の夏を越せるのか底はかとない不安が・・(汗。
意識朦朧・・・。


暗黒の稲妻