人気取り政策でタイのインフレ加速の恐れも
ウォール・ストリート・ジャーナル 7月6日(水)10時36分配信
 【バンコク】タイ総選挙でタクシン元首相の妹で首相候補のインラック氏率いるタイ貢献党が圧勝したことで、国民や投資家が恐れる、目先の社会不安や軍部の介入は回避できることになった。

 しかし、新政権の人気取り政策は、東南アジア第2の経済力を誇る同国の活力を削ぐ可能性のあるインフレやその他の諸問題への懸念を早くも強めている。

 インラック氏はそのカリスマ性だけでなく、公約でも有権者の人気を集めてきた。公約には、最低賃金の36~89%の引き上げ、農家へのコメ価格保証、大学卒業者の最低初任給1万5000バーツ(4万円)の保証、学生へのタブレットPCの提供、全国的な高速鉄道網の導入などが含まれている。

 クレディ・スイス(シンガポール)のエコノミスト、サンティタルン・サティラタイ氏は「(賃金に関する)公約の一部だけでも実施されれば(インフレへの)影響は大きい」との見通しを示した。同氏は投票日の数日前、来年の同国の平均インフレ率の予想をそれまでの3.5%から3.7%に引き上げた。6月は4.06%だった。選挙戦ではこれまでの与党・民主党も最低賃金の引き上げを公約としていた。

 タイ銀行(中央銀行)はインフレが今年の経済成長にとって最大の脅威になると警告、これが加速すれば、予想以上に金利を引き上げることを強いられ、経済成長を鈍らせることになるだろうとしている。プラサーン総裁は選挙戦中、次期政権は財政規律を維持する必要があり、財政赤字の拡大は財政の安定を崩す恐れがあると述べた。

 スタンダード&プアーズ(S&P)は5日、新政権の諸計画は収入の「適切な割り振り」がなければ、同国の財政状態に悪影響を与える可能性があるとの懸念を示した。

 スタンダード・チャータード銀行は調査リポートで、インラック氏のタイ貢献党は、今後5年の同党の経済政策費用が約1兆8500億バーツとなり、均衡財政達成計画を2018年度まで2年間遅らせる可能性がある、と指摘した。同国の財政支出は世界金融危機の影響を乗り越えるために最近急増した。

 楽観論者は、90人以上の死者を出した昨年の騒乱など、ここ数年の政治的混乱から脱した平穏さがインフレ加速や債務増大といった悪影響に勝るとみている。タイ経済は、軍部が5年前にタクシン氏を追放して以来、近隣諸国に後れを取り、また、数年間の不安定な状況で主要インフラ・プロジェクトは中断、一部の外国投資家も逃げ出した。しかし、政治的に安定を取り戻し、これが続けば、これらの投資家もタイに戻ってくる可能性がある。

 また、一部のエコノミストは、過去10年の前半、タクシン氏が首相を務めていたときも過度の支出という同様の不安があったが、実際は予想されたほどの問題にはならず、同国は高い経済成長を続けていた、と指摘している。

 HSBCのアジア調査部門の共同トップであるフレデリック・ノイマン氏は、タイの支出が増加しても、中国の人件費が速いペースで高まっていることから、近隣諸国に対するタイの競争力が削がれることはないだろうとの見方を示した。同氏によると、タイの財政は健全で、財政赤字の拡大も許容できるという。今年度の赤字は4200億バーツと、国内総生産(GDP)の3.9%が見込まれる。

 しかし、支出が容易に持続不能な水準になったとしても、新政権は公約の履行を求める大きな圧力を受けるだろう。タイ貢献党を政権の座に押し上げるのに大きく寄与したのは、その多くが低所得者である農村部の国民だ。新政権誕生で利益を受ける層の一つがコメ農家だろう。同党は、現在価格がトン当たり1万バーツを下回っているコメについて1万5000バーツを支払うことを約束した。このためアナリストらは、コメの退蔵が行われる恐れがあるとしている。そうなれば、タイが世界最大のコメ輸出国であるだけに、世界のコメ価格が押し上げられる可能性がある。

最終更新:7月6日(水)10時36分

この記事読んでると日本と似てる気もする。
日本と同じ運命な感じがしてしまう。
自民党から民主党への政権交代の時も、米軍基地県外移設・高速無料化・高校無償化とか、結局は有権者への人気取り政策がメインだったし!
取りあえず飴(上に上げたような)出しておいて・・という。
ただ日本の民主党と違うであろう点は今のタイ政府なら実行可能するだろうという点。
どちらセよ後で後悔しないといいのだが・・。

暗黒の稲妻