電波や磁性活用、待機電力ゼロも ルネサス、NECなど「半導体の省エネ技術」
フジサンケイ ビジネスアイ 7月4日(月)8時15分配信


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ルネサスエレクトロニクスのスマートフォン向けLSI。消費電力を大幅に削減した次世代型も開発に成功している(写真:フジサンケイビジネスアイ)
 東日本大震災後の電力不足によって、冷蔵庫やエアコンなどの電化製品の節電に注目が集まっているが、その中でもあらゆる機器の頭脳として“縁の下の力持ち”的な役割をつかさどる半導体の省エネ技術を各社が競っている。特にルネサスエレクトロニクスは消費電力を大幅に削減する次世代LSI(高集積回路)や電池のいらないデータ送信技術の開発に相次いで成功した。ともに2~3年後の実用化を目指しており、節電や温暖化ガス削減への期待が高まっている。

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 ルネサスが開発した次世代LSIの省エネ技術は、半導体チップの内部に組み込んだ「モニター回路」が、チップが無駄な動作をしないよう監視し、最適な速度に制御する。

 実は、半導体はチップ内の場所によって性能にばらつきが生じる。このため、求められる性能以上の動きをする場所が現れ、これが無駄に電力を消費することにつながる。そこで、モニター回路がこうしたばらつきを把握し、ばらつきのある部分に流れる電流を抑えることで消費電力を最大27%削減した。

 これまでもパソコンなどに使われる高価格のLSIでは専用のモニター回路が組み込まれていたが、コストが高いことが難点だった。同社は長期間にわたって研究を重ね、どの半導体でも使える汎用型のモニター回路を開発、コストを抑えることに成功。さらに回路の配置も最適化し、モニター回路の数自体も4個に抑えた。

 同社は2~3年後の次世代半導体では電力の削減効果を5割程度にまで向上させ、携帯電話やスマートフォン(高機能携帯電話)に搭載したい考え。その場合、電池の持ち時間は20~30%延びると見込んでいる。

 さらに画期的なのが、電池を使わなくてもデータを送れる特殊なセンサー技術だ。身の回りに存在する電波のエネルギーを電力に変換し、データを送信する。例えば、体温計で測定したデータを携帯電話などの端末などに無線送信する場合、近くにある無線LANのアクセスポイントなどの電波を体温計内のセンサーで“反射”させて送信することで、必要な電力を通常の1000分の1に抑える。

 さらに、地上デジタル放送や携帯電話基地局、または携帯電話そのものなどが発する微弱な「環境電波」をセンサーで電力に変換することで、電池が不要となるという。この技術を使えば、離れた場所にいる親に子供の体温を知らせ、スマートフォンで常時モニタリングすることも可能だ。

 半導体メーカーに対する省エネ性能の要求は、かつてなく高まっている。ルネサスの先行研究第一部の水野正之部長は「携帯電話やデジタルカメラのメーカーには搭載したい機能が山のようにある。一つ一つのチップの『省エネ』を合わせれば、機器の機能をさらに増やすこともできる。究極の目標は、電力を消費しない半導体だ」と強調する。

 NECなども、電子が持つ「磁石」としての性質を利用し、電流を使わずにLSIにデータを記憶させる技術を開発した。このため待機電力はゼロ。テレビなどの節電につながるとみて、2015年にも実用化したい考えだ。

 多くの半導体はデータを保持するための電力が必要で、家電製品は電源をオフにしてもコンセントにつないだままだとわずかに電力を消費する。各社は動作時でも電力を消費しない“夢の半導体”の実現を目指し、日夜しのぎを削っている。(高木克聡)

最終更新:7月4日(月)9時43分

何だかんだ言っても日本の技術力って凄いなぁ。

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