<多剤耐性菌>院内感染 「終息宣言」検討の度、発生
毎日新聞 10月1日(金)7時32分配信

 ◇専門医不足/費用は病院負担/少ない個室

 帝京大病院(東京都板橋区)で多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染が明らかになって10月3日で1カ月。他の病院でも同菌の院内感染が次々と判明し、病院側の認識の甘さや報告の遅れなどが問題視されたが、実は素早い対応を取った藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)でも感染は終息していない。取材を進めると、防止策の難しさや現場の苦悩、日本の院内感染対策の課題が浮かぶ。【福永方人、写真も】

 「何度か終息宣言を検討したが、その度に新たな保菌者が出てしまった」。藤田保健衛生大病院の吉田俊治・感染対策室長はこぼす。同病院では2月以降、7月までに入院患者24人からアシネトバクターを検出。9月24日にも新たな保菌者が1人見つかった。

 同病院によると、最初に患者1人から菌が検出されたのは2月10日。その後、さらに4人からも検出されたため、同15日に緊急会議を開き、16日には保健所に報告した。帝京大病院が5月に院内感染を認識しながら9月まで報告しなかったのとは対照的だ。感染防止対策に専従する木下輝美看護長は「院長の指導で、異常が疑われる場合はすぐ報告し、対策を取るよう徹底されている」と話す。

 だが、感染拡大は防ぎきれなかった。藤田保健衛生大病院は2月16日から、病室などの消毒や細菌調査を繰り返し徹底。3月以降は菌の検出が減少に向かったにもかかわらず、毎月2~3人の新たな保菌者が出た。現在も2人が保菌している。

 「調査では出ないのに、どこかに残っていて患者にうつる。やっかいな菌です」。木下看護長はため息をつく。同病院は現在、多剤耐性菌に対する高精度の検査を続けるとともに、病院職員に手洗いなど基本的な感染対策の徹底を改めて呼びかけている。

 同病院の感染対策室のスタッフは専従の看護師2人を含む計6人で「他病院と比べても見劣りはしない」(木下看護長)。ただ、抗菌薬の使いすぎで耐性菌を生むことなどがないよう、抗菌薬の使用状況のチェックなどを徹底するには、感染制御が専門の専従医が必要だというが、吉田室長は「日本は感染制御の専門医がかなり少なく、医師を確保できない」と明かす。

 課題は人材不足だけではない。日本感染症学会理事の賀来満夫・東北大教授(感染制御学)は「院内感染をゼロにするのは不可能。拡大をいかに抑えるかが重要だが、感染予防に必要な細菌検査の費用は医療保険の対象外で病院負担となるため、経営に余裕がないと実施しにくい。また、日本の病院は欧米に比べ個室がかなり少なく、集団感染発生時に患者の隔離が不十分になる恐れもある」と指摘する。

 一方、帝京大病院は感染者が59人に上り、うち8人が現在も保菌している。外部の専門家らによる調査委員会を設置し、感染ルートの解明や院内感染防止体制の検証などを進めている。

最終更新:10月1日(金)12時52分

この記事見て思うが対策を練ればそれを上回るモノが出て来てまるで鼬鼠ごっこだなぁと。
我々人類が思っていたより遥かに微生物は逞しかったという事なんだろうか。
そろそろこの辺でバイ菌は全て殺すという固定観念から脱却しなくてはいけない時期に来てるんだろうなと思う。
近い将来に大きな大きなしっぺ返しを喰らうことになりそうで恐い気がするのだが。

暗黒の稲妻
BGM:時間旅行(ByDremas Come True)