両生類に猛威、カエルツボカビ菌 アジアから拡大?
産経新聞 9月20日(月)7時56分配信
世界的に感染が広がり、中米などでカエルなどの両生類の大量死を引き起こしているカエルツボカビ菌が、日本を中心にしたアジアが発生源の可能性があることが国立環境研究所などの調査で分かった。日本のオオサンショウウオなど両生類の多くが同菌に感染しながら死んでおらず、菌の遺伝子の種類も海外の25倍と多様だからだ。米国では感染したオオサンショウウオが死なない理由を解明し、両生類絶滅を食い止めるための研究にとりかかるという。(杉浦美香)
カエルツボカビ菌は真菌の一種。水を媒介に広がり、感染すると皮膚が硬化し、皮膚呼吸ができなくなるなどして死んでしまう。
中央アメリカ・パナマの国立公園では1998年に同菌が確認され、約2カ月間でカエルの種が6割以上絶滅し、生息数も9割以上減った。オーストラリアでも年間100キロのスピードで菌が広がったことが報告され、「両生類にとって過去最悪の感染症」といわれている。
カエルツボカビ菌はアフリカ原産のアフリカツメガエルがペットや実験動物用に輸出されるとともに世界的に広がったというのが通説だった。日本でも平成18年12月、外来のペットのカエルで初めて確認され、専門家らが緊急事態宣言を出す大騒ぎになった。
ところが、国立環境研究所が北海道から沖縄まで全国1千カ所で約5500の両生類の検体を検査したところ、全体の3%が菌に感染しているにもかかわらず、大量死が発生していないことが判明。菌の遺伝子も海外では2種類にすぎないのに、日本では50種類あることが分かった。
さらに、世界でカエルツボカビ菌が広がり被害が出たのは1980年代だが、日本ではそれより100年近く前の1902(明治35)年のオオサンショウウオの標本からもこの菌が検出された。このことから、日本では同菌が昔から自然に存在し、日本の両生類は抵抗力を持つようになっている可能性が高いという。
米国・ワシントンのスミソニアン国立動物園は日本から譲り受けたオオサンショウウオでこの謎を解明、研究するとしている。
調査した環境研の五箇公一主席研究員は「詳しく調べる必要があるが、韓国や中国でも日本と同様、カエルツボカビ菌の被害が出ておらず、この菌はアジアが起源の可能性が高い。同菌についての脅威は日本ではないと思われるが、環境破壊や地球温暖化などの影響で、両生類が危機的状況であることには変わりはない」と話している。
最終更新:9月20日(月)8時9分
カエルツボカビとはWikipediaによると
カエルツボカビ症(蛙壷黴症、カエルツボカビしょう)は、ツボカビの一属一種の真菌カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis Longcore et al.,1999)によって引き起こされる両生類の致死的な感染症である。野生の個体群でのこの疾病に対する効果的な対策は存在しない。ただし、カエルの種によって感受性は異なり、アフリカツメガエル( Xenopus laevis )やウシガエル( Rana catesbeiana )は感染しても発症しない。
(病原菌の分類)

Atelopus varius 表皮組織中のカエルツボカビ(Batrachochytrium sp.)。矢頭は遊走子嚢。
分類
ドメ
イン : 真核生物 Eukaryota
界 : 菌界 Fungi
門 : ツボカビ門 Chytridiomycota
綱 : ツボカビ綱 Chytridiomycetes
目 : ツボカビ目 Chytridiales
科 : ツボカビ科 Chytridiaceae
属 : Batrachochytrium
種 : B. dendrobatidis
学名
Batrachochytrium dendrobatidis
Longcore et al., 1999
和名
カエルツボカビ
英名
chytrid fungus
概要
カエルツボカビ症は、上記のカエルツボカビが、カエルの体表に寄生・繁殖し、カエルの皮膚呼吸が困難になる病気である。発病すると食欲の減衰が見られ、ひどくなると体が麻痺し、死ぬこともある。
この病気は北米西部・中米・南米・オーストラリア東部で劇的な両生類の減少あるいは絶滅を引き起こしてきた。この病気は世界的な両生類の生息数と、世界の両生類種の30%もの種数の減少に関連している[1]。 減少のうちいくらかはこの菌によるものと信じられているが、感染に抵抗している種もあり、またいくつかの個体群が感染が低レベルで持続して生き延びていることも報告されている。[2]。研究室での調査では、この菌は高温ではあまり活動しないとされており[3]、また感染したカエルを高温に晒せば菌を殺せるとも言われている[4]が、素人判断は薦められない。専門家の指導の下、抗真菌薬による治療が望ましい。飼育容器や捕獲に使用した器具や排水の滅菌は、100倍程度に希釈した市販漂白剤(200ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液)に15分つけ置き或いは60℃以上(但し、資料によっては50℃の記述もある)の温水で5分間が推奨されている。
原因菌
原因菌は、カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)で、1999年に新属新種として記載された。名前はコバルトヤドクガエル (Dendrobatidae azureus) からの分離株が用いられた事に由来する。既知のツボカビ門で唯一脊椎動物に感染するとされ、両生類の皮膚で増殖し病原性を顕す。また、無尾目のカエルだけでなく有尾目のサンショウウオ等にも感染することがある。 カエルツボカビの増殖には蛋白質のケラチンが利用される。カエルのケラチンはオタマジャクシでは口の周囲にのみ存在するが、変態と共にケラチンの分布が増え、それに伴ってカエルツボカビも増える。発育に最適な温度は17℃から25℃とされるが高温に弱く、28℃で発育が止まり30℃以上で死滅するが、冷凍では不活化されない。 全国から集められた約5300サンプルを分析した結果、様々な遺伝子型(ハプロタイプ)があることが判明したが、遺伝子型毎の特性の解明は不十分である。また、長期の人工培地による培養は形態の変化を引き起こす。
症状
『サイエンス』2009年10月23日号によれば、オーストラリアの研究者はカエルツボカビ症で、電解質の輸送が阻害されて心不全が引き起こされることを突き止めたという。感染した個体は皮膚の表面の電解質の輸送が 50%超 抑制され、血漿(けっしょう)中のナトリウム、カリウムの濃度がそれぞれ減少していた[5]。
日本におけるツボカビ病
2006年12月、日本国内で飼育されているカエルからカエルツボカビが検出された。これを受けて2007年1月13日に学会・研究機関・環境団体など16の団体による「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」が発表された[6]。続く2007年3月には、多数の絶滅危惧種の両生・爬虫類が生息する沖縄県で、麻布大学獣医学部の宇根有美助教授の調査によりペットショップで販売されているカエルからカエルツボカビが確認された[7]。これを受けて沖縄県内のペットショップの中にはカエル類の入荷・販売を自粛する業者も出てきている[8]。
2007年6月10日、麻布大の研究チームはさらに「野生のウシガエルからツボカビへ感染していることを確認した」と同大で開催されたフォーラムにて発表し、宇根助教授らは全国のペットショップや研究機関などへ警戒の呼びかけをはじめた。また、「検査をした両生類の個体は30匹で、同大が所在する神奈川県内で捕獲したウシガエル10匹のうち、4匹で感染を確認した。」と毎日新聞(2007年6月11日の記事)に発表[9]があった。
2008年に国立環境研究所などにより行われた調査では、全国944地点で5178個体のサンプルの採集を行った。解析途中の結果として、1638サンプルの感染状況はニホンアマガエル 0.4%(1個体/238個体)、トノサマガエル 0.5%(1個体/186個体)、ヌマガエル 0.4%(1個体/229個体)、ウシガエル 7.8%(6個体/77個体)、ツチガエル 0.9%(1個体/108個体)であった。ただし、DNA配列は病原性の強いタイプ(タイプC)とは異なるタイプ(タイプA)と考えられる。
2009年5月 国立環境研究所などの調査により、カエルツボカビがアジア起源ではないかとの報告がなされた。それによれば、日本のカエルより約30系統のカエルツボカビが見つかったが、中米や豪州では1系統しか見つかっていないとのことであり、これが正しければ、アジア起源のカエルツボカビが世界に拡散し被害をもたらしたと考えられ、日本・中国・韓国などで感染の報告があっても被害の報告がない説明ともなる。(毎日新聞2009年5月5日の記事)[10]
2007年及び2008年に行われた184個体に対する感染実験の結果、南日本に生息するカエルが感染しやすい可能性が示唆されている。これは、ヌマガエル、ヒメアマガエル、ハナサキガエル類について感染が認められたためである。
アフリカツメガエルとツボカビ病
カエルツボカビ感染の最初の報告は Xenopus 属のアフリカツメガエルのものであった。アフリカツメガエルは世界中に広く輸出されていたので、B. dendrobatidis の一時的な媒介者と考えられている。しかし他の研究では B. dendrobatidis が何十年も前から北米と中米に存在していたとされている[要出典]。
国内においては、「アフリカツメガエルの日本国内の輸入が始まってから30年以上経過しているのに、生態系への影響についての話は聞かない、国は騒ぎすぎではないか」と言う意見もある[8]。しかし、麻布大学などの調査によれば、アフリカツメガエル52匹中51匹(98%)がツボカビ陽性であったと報告されており、このような感染しても発症しないカエルの流入と繁殖がツボカビ感染拡大の一因であるとも言われている[11]。環境省も、アフリカツメガエルは日本でも定着のおそれが高い種であること、日本においては全ての両生類の中で最も多く利用されている種のひとつと考えているとなど説明している[12]。
実際にこのカエルが国内で帰化繁殖した事例はごく少ない。しかしたとえば2006年に和歌山県田辺市のある地域で複数のため池で繁殖しているのが発見された。市や県なども問題視はしているが駆除は進んでおらず、和歌山県では2007年以降も地元紙「紀伊民報」やテレビ等でこの問題が断続的に報じられている。このカエルはツボカビに関して陽性であることが確認されているが、2008年現在では他の両生類への影響は報告されていない。
人間活動による伝播
アフリカツメガエルとともに世界のツボカビ研究者が警鐘を鳴らしているのは、我々人間の直接のフィールド活動である[11]。今回のツボカビ症の発症を受けて、環境省はイリオモテヤマネコの餌であるサキシマヌマガエルをツボカビから守る為に、桟橋で渡航者の靴の消毒を行っている。
環境への影響
2007年6月25日、毎日新聞に「カエルツボカビ症による生態系の危機へ目を凝らせ」と題した社説が掲載された。この中で著者は、ツボカビ症が単に両生類のみの危機に留まらず、食物連鎖や虫媒の感染症を介して生態系全体を崩壊させ得るものであること、その抑止のために国家レベルでの適切な対応が必要とされること、などを論じている[13]。
他国での取り組み
中米パナマでは北部から侵入した本病によりカエルが激減したが、本病の侵入が予想される地域のカエルを捕獲し動物園で飼育することで絶滅から救う試みが行われた。
米国ワシントンD.C.のスミソニアン国立動物園は2010年7月22日、オオサンショウウオの繁殖センターをオープンし、初めて日本のオオサンショウウオの国外繁殖を行っている。同動物園に広島市安佐動物公園から寄贈されたオオサンショウウオは計5匹で、このうち11歳のオスメス各2匹が繁殖用に飼育され、19歳のメス1匹は動物園で展示される。日本のオオサンショウウオは「カエルツボカビ症」に抵抗力を持つとされ、同動物園では「ツボカビの被害を受けない秘密をぜひ知りたい」と飼育と同時にツボカビ克服のために個体を研究している[14]。
出典
・Longcore JE, Pessier AP, Nichols DK (1999). “Batrochochytrium dendrobatidis gen. et sp. nov., a chytrid pathogenic to amphibians.”. Mycologia 91: 219-27.
・カエルツボカビについて 環境省
脚注
1.^ Stuart, S. N., J. S. Chanson, et al. (2004). "Status and trends of amphibian declines and extinctions worldwide." Science 306: 1783-1786.
2.^ Retallick, R. W. R., H. McCallum, et al. (2004). "Endemic Infection of the Amphibian Chytrid Fungus in a Frog Community Post-Decline." PLoS Biology 2(11): e351.
3.^ Berger, L., R. Speare, et al. (2004). "Effect of season and temperature on mortality in amphibians due to chytridiomycosis." Australian Veterinary Journal 82: 31-36.
4.^ Woodhams, D. C., R. A. Alford, et al. (2003). "Emerging disease of amphibians cured by elevated body temperature." Diseases of aquatic organisms 55: 65-67.
5.^ Voyles J, Young S, Berger L, Campbell C, Voyles WF, Dinudom A, Cook D, Webb R, Alford RA, Skerratt LF, Speare R (2009). “Pathogenesis of chytridiomycosis, a cause of catastrophic amphibian declines.”. Science 326 (5952): 582-5. PMID 19900897
6. ^ カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言
7. ^ 琉球新報ホームページ
8.^ a b 沖縄タイムスホームページ
9. ^ MSN毎日新聞インタラクティブ
10. ^ 毎日新聞ホームページより
11. ^a b モダンメディア 53 巻3 号2007[話題の感染症]67 両生類のツボカビ症(PDF)
12. ^ 要注意外来生物リスト: 爬虫類・両生類(詳細)
13. ^ MSN毎日新聞インタラクティブ
14. ^ 47NEWS(よんななニュース)2010/07/23 「オオサンショウウオ、米で繁殖へ 広島が寄贈、施設完成」
外部リンク
・ ツボカビ症相談などの窓口獣医PDF 社団法人日本獣医師会
・ WWFジャパンホームページ
・ Chytridiomycosis
・ Wildlife Trade and Global Disease Emergence
・ Origin of the amphibian chytrid fungus
・ Main preventative management strategies for the Chytrid fungus
・ 話題の感染症 両生類のツボカビ症 モダンメディア 2007年3月号(第53巻3号)
注:文章中のリンクに関しては省略してあります。
(Wikipedia カエルツボカビ病より転載:フリー百科事典)
この症状は一部の蛙特有の症状ではあるようだが、生態系への影響とかどうなんだろう。
ちょっと気になったので取り挙げてみた。
暗黒の稲妻
BGM:DR. STEIN(Byハロウィン)
産経新聞 9月20日(月)7時56分配信
世界的に感染が広がり、中米などでカエルなどの両生類の大量死を引き起こしているカエルツボカビ菌が、日本を中心にしたアジアが発生源の可能性があることが国立環境研究所などの調査で分かった。日本のオオサンショウウオなど両生類の多くが同菌に感染しながら死んでおらず、菌の遺伝子の種類も海外の25倍と多様だからだ。米国では感染したオオサンショウウオが死なない理由を解明し、両生類絶滅を食い止めるための研究にとりかかるという。(杉浦美香)
カエルツボカビ菌は真菌の一種。水を媒介に広がり、感染すると皮膚が硬化し、皮膚呼吸ができなくなるなどして死んでしまう。
中央アメリカ・パナマの国立公園では1998年に同菌が確認され、約2カ月間でカエルの種が6割以上絶滅し、生息数も9割以上減った。オーストラリアでも年間100キロのスピードで菌が広がったことが報告され、「両生類にとって過去最悪の感染症」といわれている。
カエルツボカビ菌はアフリカ原産のアフリカツメガエルがペットや実験動物用に輸出されるとともに世界的に広がったというのが通説だった。日本でも平成18年12月、外来のペットのカエルで初めて確認され、専門家らが緊急事態宣言を出す大騒ぎになった。
ところが、国立環境研究所が北海道から沖縄まで全国1千カ所で約5500の両生類の検体を検査したところ、全体の3%が菌に感染しているにもかかわらず、大量死が発生していないことが判明。菌の遺伝子も海外では2種類にすぎないのに、日本では50種類あることが分かった。
さらに、世界でカエルツボカビ菌が広がり被害が出たのは1980年代だが、日本ではそれより100年近く前の1902(明治35)年のオオサンショウウオの標本からもこの菌が検出された。このことから、日本では同菌が昔から自然に存在し、日本の両生類は抵抗力を持つようになっている可能性が高いという。
米国・ワシントンのスミソニアン国立動物園は日本から譲り受けたオオサンショウウオでこの謎を解明、研究するとしている。
調査した環境研の五箇公一主席研究員は「詳しく調べる必要があるが、韓国や中国でも日本と同様、カエルツボカビ菌の被害が出ておらず、この菌はアジアが起源の可能性が高い。同菌についての脅威は日本ではないと思われるが、環境破壊や地球温暖化などの影響で、両生類が危機的状況であることには変わりはない」と話している。
最終更新:9月20日(月)8時9分
カエルツボカビとはWikipediaによると
カエルツボカビ症(蛙壷黴症、カエルツボカビしょう)は、ツボカビの一属一種の真菌カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis Longcore et al.,1999)によって引き起こされる両生類の致死的な感染症である。野生の個体群でのこの疾病に対する効果的な対策は存在しない。ただし、カエルの種によって感受性は異なり、アフリカツメガエル( Xenopus laevis )やウシガエル( Rana catesbeiana )は感染しても発症しない。
(病原菌の分類)

Atelopus varius 表皮組織中のカエルツボカビ(Batrachochytrium sp.)。矢頭は遊走子嚢。
分類
ドメ
イン : 真核生物 Eukaryota
界 : 菌界 Fungi
門 : ツボカビ門 Chytridiomycota
綱 : ツボカビ綱 Chytridiomycetes
目 : ツボカビ目 Chytridiales
科 : ツボカビ科 Chytridiaceae
属 : Batrachochytrium
種 : B. dendrobatidis
学名
Batrachochytrium dendrobatidis
Longcore et al., 1999
和名
カエルツボカビ
英名
chytrid fungus
概要
カエルツボカビ症は、上記のカエルツボカビが、カエルの体表に寄生・繁殖し、カエルの皮膚呼吸が困難になる病気である。発病すると食欲の減衰が見られ、ひどくなると体が麻痺し、死ぬこともある。
この病気は北米西部・中米・南米・オーストラリア東部で劇的な両生類の減少あるいは絶滅を引き起こしてきた。この病気は世界的な両生類の生息数と、世界の両生類種の30%もの種数の減少に関連している[1]。 減少のうちいくらかはこの菌によるものと信じられているが、感染に抵抗している種もあり、またいくつかの個体群が感染が低レベルで持続して生き延びていることも報告されている。[2]。研究室での調査では、この菌は高温ではあまり活動しないとされており[3]、また感染したカエルを高温に晒せば菌を殺せるとも言われている[4]が、素人判断は薦められない。専門家の指導の下、抗真菌薬による治療が望ましい。飼育容器や捕獲に使用した器具や排水の滅菌は、100倍程度に希釈した市販漂白剤(200ppm次亜塩素酸ナトリウム溶液)に15分つけ置き或いは60℃以上(但し、資料によっては50℃の記述もある)の温水で5分間が推奨されている。
原因菌
原因菌は、カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)で、1999年に新属新種として記載された。名前はコバルトヤドクガエル (Dendrobatidae azureus) からの分離株が用いられた事に由来する。既知のツボカビ門で唯一脊椎動物に感染するとされ、両生類の皮膚で増殖し病原性を顕す。また、無尾目のカエルだけでなく有尾目のサンショウウオ等にも感染することがある。 カエルツボカビの増殖には蛋白質のケラチンが利用される。カエルのケラチンはオタマジャクシでは口の周囲にのみ存在するが、変態と共にケラチンの分布が増え、それに伴ってカエルツボカビも増える。発育に最適な温度は17℃から25℃とされるが高温に弱く、28℃で発育が止まり30℃以上で死滅するが、冷凍では不活化されない。 全国から集められた約5300サンプルを分析した結果、様々な遺伝子型(ハプロタイプ)があることが判明したが、遺伝子型毎の特性の解明は不十分である。また、長期の人工培地による培養は形態の変化を引き起こす。
『サイエンス』2009年10月23日号によれば、オーストラリアの研究者はカエルツボカビ症で、電解質の輸送が阻害されて心不全が引き起こされることを突き止めたという。感染した個体は皮膚の表面の電解質の輸送が 50%超 抑制され、血漿(けっしょう)中のナトリウム、カリウムの濃度がそれぞれ減少していた[5]。
日本におけるツボカビ病
2006年12月、日本国内で飼育されているカエルからカエルツボカビが検出された。これを受けて2007年1月13日に学会・研究機関・環境団体など16の団体による「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」が発表された[6]。続く2007年3月には、多数の絶滅危惧種の両生・爬虫類が生息する沖縄県で、麻布大学獣医学部の宇根有美助教授の調査によりペットショップで販売されているカエルからカエルツボカビが確認された[7]。これを受けて沖縄県内のペットショップの中にはカエル類の入荷・販売を自粛する業者も出てきている[8]。
2007年6月10日、麻布大の研究チームはさらに「野生のウシガエルからツボカビへ感染していることを確認した」と同大で開催されたフォーラムにて発表し、宇根助教授らは全国のペットショップや研究機関などへ警戒の呼びかけをはじめた。また、「検査をした両生類の個体は30匹で、同大が所在する神奈川県内で捕獲したウシガエル10匹のうち、4匹で感染を確認した。」と毎日新聞(2007年6月11日の記事)に発表[9]があった。
2008年に国立環境研究所などにより行われた調査では、全国944地点で5178個体のサンプルの採集を行った。解析途中の結果として、1638サンプルの感染状況はニホンアマガエル 0.4%(1個体/238個体)、トノサマガエル 0.5%(1個体/186個体)、ヌマガエル 0.4%(1個体/229個体)、ウシガエル 7.8%(6個体/77個体)、ツチガエル 0.9%(1個体/108個体)であった。ただし、DNA配列は病原性の強いタイプ(タイプC)とは異なるタイプ(タイプA)と考えられる。
2009年5月 国立環境研究所などの調査により、カエルツボカビがアジア起源ではないかとの報告がなされた。それによれば、日本のカエルより約30系統のカエルツボカビが見つかったが、中米や豪州では1系統しか見つかっていないとのことであり、これが正しければ、アジア起源のカエルツボカビが世界に拡散し被害をもたらしたと考えられ、日本・中国・韓国などで感染の報告があっても被害の報告がない説明ともなる。(毎日新聞2009年5月5日の記事)[10]
2007年及び2008年に行われた184個体に対する感染実験の結果、南日本に生息するカエルが感染しやすい可能性が示唆されている。これは、ヌマガエル、ヒメアマガエル、ハナサキガエル類について感染が認められたためである。
アフリカツメガエルとツボカビ病
カエルツボカビ感染の最初の報告は Xenopus 属のアフリカツメガエルのものであった。アフリカツメガエルは世界中に広く輸出されていたので、B. dendrobatidis の一時的な媒介者と考えられている。しかし他の研究では B. dendrobatidis が何十年も前から北米と中米に存在していたとされている[要出典]。
国内においては、「アフリカツメガエルの日本国内の輸入が始まってから30年以上経過しているのに、生態系への影響についての話は聞かない、国は騒ぎすぎではないか」と言う意見もある[8]。しかし、麻布大学などの調査によれば、アフリカツメガエル52匹中51匹(98%)がツボカビ陽性であったと報告されており、このような感染しても発症しないカエルの流入と繁殖がツボカビ感染拡大の一因であるとも言われている[11]。環境省も、アフリカツメガエルは日本でも定着のおそれが高い種であること、日本においては全ての両生類の中で最も多く利用されている種のひとつと考えているとなど説明している[12]。
実際にこのカエルが国内で帰化繁殖した事例はごく少ない。しかしたとえば2006年に和歌山県田辺市のある地域で複数のため池で繁殖しているのが発見された。市や県なども問題視はしているが駆除は進んでおらず、和歌山県では2007年以降も地元紙「紀伊民報」やテレビ等でこの問題が断続的に報じられている。このカエルはツボカビに関して陽性であることが確認されているが、2008年現在では他の両生類への影響は報告されていない。
人間活動による伝播
アフリカツメガエルとともに世界のツボカビ研究者が警鐘を鳴らしているのは、我々人間の直接のフィールド活動である[11]。今回のツボカビ症の発症を受けて、環境省はイリオモテヤマネコの餌であるサキシマヌマガエルをツボカビから守る為に、桟橋で渡航者の靴の消毒を行っている。
環境への影響
2007年6月25日、毎日新聞に「カエルツボカビ症による生態系の危機へ目を凝らせ」と題した社説が掲載された。この中で著者は、ツボカビ症が単に両生類のみの危機に留まらず、食物連鎖や虫媒の感染症を介して生態系全体を崩壊させ得るものであること、その抑止のために国家レベルでの適切な対応が必要とされること、などを論じている[13]。
他国での取り組み
中米パナマでは北部から侵入した本病によりカエルが激減したが、本病の侵入が予想される地域のカエルを捕獲し動物園で飼育することで絶滅から救う試みが行われた。
米国ワシントンD.C.のスミソニアン国立動物園は2010年7月22日、オオサンショウウオの繁殖センターをオープンし、初めて日本のオオサンショウウオの国外繁殖を行っている。同動物園に広島市安佐動物公園から寄贈されたオオサンショウウオは計5匹で、このうち11歳のオスメス各2匹が繁殖用に飼育され、19歳のメス1匹は動物園で展示される。日本のオオサンショウウオは「カエルツボカビ症」に抵抗力を持つとされ、同動物園では「ツボカビの被害を受けない秘密をぜひ知りたい」と飼育と同時にツボカビ克服のために個体を研究している[14]。
出典
・Longcore JE, Pessier AP, Nichols DK (1999). “Batrochochytrium dendrobatidis gen. et sp. nov., a chytrid pathogenic to amphibians.”. Mycologia 91: 219-27.
・カエルツボカビについて 環境省
脚注
1.^ Stuart, S. N., J. S. Chanson, et al. (2004). "Status and trends of amphibian declines and extinctions worldwide." Science 306: 1783-1786.
2.^ Retallick, R. W. R., H. McCallum, et al. (2004). "Endemic Infection of the Amphibian Chytrid Fungus in a Frog Community Post-Decline." PLoS Biology 2(11): e351.
3.^ Berger, L., R. Speare, et al. (2004). "Effect of season and temperature on mortality in amphibians due to chytridiomycosis." Australian Veterinary Journal 82: 31-36.
4.^ Woodhams, D. C., R. A. Alford, et al. (2003). "Emerging disease of amphibians cured by elevated body temperature." Diseases of aquatic organisms 55: 65-67.
5.^ Voyles J, Young S, Berger L, Campbell C, Voyles WF, Dinudom A, Cook D, Webb R, Alford RA, Skerratt LF, Speare R (2009). “Pathogenesis of chytridiomycosis, a cause of catastrophic amphibian declines.”. Science 326 (5952): 582-5. PMID 19900897
6. ^ カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言
7. ^ 琉球新報ホームページ
8.^ a b 沖縄タイムスホームページ
9. ^ MSN毎日新聞インタラクティブ
10. ^ 毎日新聞ホームページより
11. ^a b モダンメディア 53 巻3 号2007[話題の感染症]67 両生類のツボカビ症(PDF)
12. ^ 要注意外来生物リスト: 爬虫類・両生類(詳細)
13. ^ MSN毎日新聞インタラクティブ
14. ^ 47NEWS(よんななニュース)2010/07/23 「オオサンショウウオ、米で繁殖へ 広島が寄贈、施設完成」
外部リンク
・ ツボカビ症相談などの窓口獣医PDF 社団法人日本獣医師会
・ WWFジャパンホームページ
・ Chytridiomycosis
・ Wildlife Trade and Global Disease Emergence
・ Origin of the amphibian chytrid fungus
・ Main preventative management strategies for the Chytrid fungus
・ 話題の感染症 両生類のツボカビ症 モダンメディア 2007年3月号(第53巻3号)
注:文章中のリンクに関しては省略してあります。
(Wikipedia カエルツボカビ病より転載:フリー百科事典)
この症状は一部の蛙特有の症状ではあるようだが、生態系への影響とかどうなんだろう。
ちょっと気になったので取り挙げてみた。
暗黒の稲妻
BGM:DR. STEIN(Byハロウィン)