GPS衛星 「みちびき」11日打ち上げ 位置精度ピタリ
毎日新聞 9月3日(金)12時49分配信


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「みちびき」のイメージ図=JAXA提供
 国産初のGPS(全地球測位システム)衛星となる準天頂衛星システム「みちびき」が11日、打ち上げられる。みちびきはどうすごいのか。打ち上げで何かが変わるのか。【岡礼子】

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 GPSは、人工衛星が発信する信号を受信して位置を特定するもの。現在は米国衛星を利用してサービスが提供されている。カーナビや子供の居場所確認のほか、北海道などの広大な耕地でトラクターを自動走行させるなど、年々用途が広がっている。

 みちびきと既存の衛星との連携により、位置情報の精度は飛躍的に向上する。現在は約10メートルある誤差が、低速のトラクターでは2、3センチにまで縮小する。農業情報工学が専門の野口伸北海道大学教授は「今は、防風林や建物の陰でトラクターの位置が分からないこともあるが、みちびきが利用できれば信頼性が高まる」と期待する。

 遭難事故防止や災害時の緊急情報など防災分野での活用も有力だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の寺田弘慈プロジェクトマネジャーは「谷間や山の陰などでも正確な位置が分かり、電波の届く場所を探せる」と話す。

 ただ、問題は費用。みちびきは研究開発費、打ち上げ費用など735億円の経費がかかる。1日8時間しか日本の上空にとどまることができない。24時間の利用にはあと2基の打ち上げが必要だ。

 しかし、GPSサービスの提供企業はシステムの再構築を迫られるため、関心は必ずしも高くない。車載機器メーカーのクラリオンによると、カーナビは走行距離や地図データなどの情報を加味して現在地を特定し、GPSだけに依存していない。防犯サービスを提供する企業からも「今のGPSで特に支障はない」との声がある。

 一方、位置情報は今や重要なインフラであり、自国で運用すべきだとの主張も根強い。米国は現在、無料でGPS利用を認めているが、安全保障問題のシンクタンク、ディフェンス・リサーチ・センターの玉真哲雄専任研究委員は「有事の際は周辺地域への提供は中断する可能性がある」と話す。通信や金融取引に不可欠な時刻情報もGPSで補正しており、利用できない時の被害は甚大。ロシアはすでに21基を運用し、欧州、中国も実験中だ。

 現状は「成果が上がれば、さらに2基の打ち上げを検討する」(政府の地理空間情報活用推進基本計画)。このためみちびきの活用方法を考えようと、衛星測位利用推進センター(SPAC)は、道路交通システムや鉄道、農業など43グループ、約100社・機関が参加する実証実験を予定している。自動車の走行車線を検知してガイドしたり、逆走を防止する交通システムなどが検討されている。

 「まずこの1基で、みちびきの利点を感じてほしい」と寺田プロジェクトマネジャー。人気漫画「ドラえもん」で、未来の道具を手渡されたのび太君のように、新技術をどう使うかが問われている。

 ◇みちびき

 03年に開発が始まり、11日にH2Aロケットで打ち上げ予定。重さ4トン、太陽電池パネルを広げた全長は25.3メートル。23時間56分ごとに同じ位置に戻る。

最終更新:9月3日(金)13時26分

今やカーナビなどで使われるようになって当たり前のようになってきてる中無くてはならないだけに今後の使い鷹に注目が集まるかと思うのだが。

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