5時半-
空が次第に明るみを帯び、鳥達がさえずり始める。
今日の天気を確認するために窓を開ける。
すると、爽やかな風が頬を撫でる。
・・・今日は行けそうか。
友人にメールを入れる。
洗濯物を干し、朝食を済ませる。
植物に水をやり、ちょっと休憩。
メールの返信は来ない。
さすがに寝てたか。
まぁ、自転車で行くのは結構大変だから、人を付き合わせるより一人の方が気が楽なのだけれど。
7時半か、そろそろ行こう・・・。
時々吹く強い風が心配だけれど・・・まぁ、贅沢は言えないなぁ。
風向きは西から東。
追い風の状態だ。
今日は釣れることを信じて出発!
港まで直線距離で約20km。
海まで片道約30kmってところかぁ、いい運動になる。
でも、何回も行かなければいけないとなると流石にきつく感じる。
海までの道は坂道が多い。
実家が山の上にあるので、昔から坂道は平気だ。
でも、ここの景色は実家で見られるものとは大きく違う。
最初に海へ行ったときは新鮮だった。
道の脇に広がる畑や田んぼ。
これは実家の方でも見られるが、周りが山であるためにすぐ視界が遮られてしまう。
だから、電柱や山・建物に遮られないこの景色は新鮮だった。
しかし、2回目であれば道を覚えてしまっている。
しばらく進む。
あれ?ここは何処?
地図を持っていなかったのでここが何処だか分からなくなってしまった。
ま、東に行けばいずれ海に出るだろう。
時間と太陽の位置が分かれば大体の方角は分かる。
こんな時、大雑把な性格だと助かる。
いちいち考えて悩むより、不確実でも動くことが大事なときがある。
そんなこんなで東を目指していると、空港に出た。
思ったより北に来ていたらしい。
今度は南東に行こう。
そしてしばらく。
防砂林に着いた。
この向こうが海のはずだ。
林を抜けると砂浜だった。
港は・・・まだ南か。
そのまま南下する。
・・・道が途切れている。
工事中のようだ。
防砂林を抜けるには来た道を戻らなければいけない。
面倒臭いなぁ・・・
と、横を見ると舗装されてない道が。
これは行ってみるしかない。(さっき迷っても全然反省していないのか)
舗装されてない道は砂地のところもある。
砂地を自転車で走ろうと思っても、タイヤが埋まって転びそうになる。
正直、TV等で砂漠で車が埋まる映像が放送されていることがあるが、結構なんとかなるもんだろうと思っていた。
しかし、砂地と深雪は絶対無理だということを青森に来て学びました。
少し進むと、川の真ん中に何かいる。
鳥?やけに大きい。
近付いてみてもぴくりとも動かない。
置物か?と思って近づいていき、真正面に来た。
その距離わずか8m程。
黒い足に白い体・先端の黒い黄色の嘴は・・・オオハクチョウか。
少し近づいてみる・・・と、それがこちらを向いた。
ん?と言わんばかりの落ち着きよう。
警戒心というものが無いのか。
写真を数枚撮った後、少し近づいてみる。
7m・・・6m・・・5m。
あと一歩というところで、流石に警戒をしたらしい、ハクチョウが一歩後退る・・・
ごめんなさい、調子に乗りました。と謝り、港に行くことに。
港に到着し、釣り場を探す。
堤防の上を歩いていると巨大なヒトデが捨ててあった・・・。
見なかったことにして、その先で釣り糸を垂らす。
一昨日程ではないが、今日も海は大時化。
雨は降らないと思うけれど・・・
・・・釣りを始めてから2時間。
一向に釣れる気配が無い。
胡坐より正座の方が楽だという変な性格なので、胡坐をかいていたら腰が疲れてきた。
竿を横に放置し、寝転がる。
頭上には青く澄みきった空が広がっていた。
・・・昔と比べて、今は色々な物が小さく感じることがある。
物の大きさやお金の大きさ・・・昔はもっと大きく、重く感じたのに・・・。
でも、空の大きさは相変わらず大きい。
空を見上げたのは何年ぶりだろう・・・。
こうして空を見上げていると、まだまだ自分はちっぽけだということを実感する。
顔の上をカモメが飛んでいく。
自由に空を飛び回る・・・それはどんなに気持ちの良いことだろう。
やはり、人は自分に無いものが羨ましく思えるのだろう・・・。
でも、その無いものねだりのおかげで今の文明がある。
それは良いことでも、悪いことでもある訳だが・・・
降り注ぐ陽気の下、朝が早かったからか、じっとしていると眠くなる。
しばらく目を閉じていると、子供のはしゃぎ声が聞こえて来た。
小さい頃から海で遊べるのは良いなぁ・・・と思う。
しかし、彼らは山や都市部に憧れを抱くのだろう。
そんなことを考えているうちに、子供の声は去っていった。
それと同時に、ヒトデの姿も消えていた。
それからさらに2時間・・・もう帰ろう。
結局、今日も何も釣れなかった。
まぁ、そんなもんだろう。
ふぅ・・・。
行きが追い風なら、帰りは向かい風か・・・。
夏に実家に帰った時に1度か2度なら釣りに行けると思うのだけれど・・・それでは下手したら後が無い。
こんな日が、あと何回あるのだろう・・・。


