≪ 2007.07.08.の記事より ≫
それは、ちょーど今ごろの季節のような蒸し暑い夜のことじゃった。
ある屋敷に『ちょこ蔵』という一人の男が仕えておったそーな。
(ん?)
屋敷の主人はここ数年で体重が増え続けて、健康診断で再検査を
受ける羽目になってしまったため、一食にカリカリを10粒しか食べない
ダイエットをしてたそーじゃ。
一度の食事でカリカリを10粒しか食べられないので、一粒一粒に強く
執着しておって、『一粒でも無駄にしたらお仕置き!』と、ちょこ蔵に
キツく言い聞かせておった。
ちょこ蔵がいつものよーに主人の食事を運ぶ途中、主人の娘の『カイ』
が食後のグルーミングを済まし、廊下で巨体を横たえていたそーな。
(デザート食べ忘れたわ!)
しかし、ちょこ蔵はカイに気がつかずに足を引っかけてしまい、転んで
しまったのじゃ。
(すってんころりっ!)
とーぜん手にしていたカリカリは四方八方へ飛び散ってしまったんじゃ。
その様子を見ていたカイは、自分のせいでちょこ蔵が転んだと言い
つけられるのが怖くて、さっさとその場から逃げてしまったんじゃ。
(トロいやつ・・・)
とにもかくにも、ちょこ蔵は散らばったカリカリを拾い集めた。
(ヤバす!)
一粒、・・・二粒、・・・
しゃーん!粒、
・・・四粒、・・・五粒、・・・
ろくーっ!粒、
・・・七粒、八粒、
きゅーっ!粒、
あとひと粒・・・、
ちょこ蔵は必死に探したが、結局見つけることは出来なかった。
実は、その一粒は、飛び散った拍子に脇にある井戸の中へ落ちて
しまっていたのじゃった。
その後ちょこ蔵は主人にこっぴどく叱られ、自分のあまりの不甲斐無さ
に、井戸に身を投げてしまったんじゃ。
・・・それから数日後、
蒸し暑い夜に、夜な夜な幽霊がその井戸に現れ、カリカリを数えた
そーじゃ。
『カリカリが一粒、二粒、』
『しゃーん!粒』
『四粒、・・・・・・・・・きゅーっ!粒、・・・、』
九粒まで数えるんじゃが、どーしても十粒が言えず泣き出してしまい、
そして井戸の中へ消えていったそーじゃ。
この奇妙な出来事は毎晩起こり、いつしかその屋敷は
『カリカリ屋敷』と呼ばれるようになったんじゃ。