第170回直木賞候補作!

一枚の不思議な「絵」から始まる運命のミステリ。
生きるために描く。それが誰かの生きる意味になる。

ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員・守谷京斗(もりや・きょうと)は、異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)から、祖母に譲り受けた作者不明の不思議な絵を使って「たった一枚の展覧会」を企画したいと相談を受ける。しかし、絵の裏には「ISAMU INOMATA」と署名があるだけで画家の素性は一切わからない。二人が謎の画家の正体を探り始めると、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた業に繋がっていた。

1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。

戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。

「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物のなれのはてだ」
 

 

~講談社HPより~

 

 

泣きそうになりました。

 

心に深く、印象に残りそうな一冊になりました。

 

直木賞候補って、ミステリー好きの私としては、

あまり触手が伸びないんだけれど、

何かで目にした

『長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた』

これが気になって、読んでみようかなと。

 

これはもう先が気になって気になって、

静かな中でひたすら読んでしまいましたね。

 

とても、とてもよかったです。

 

知らないこと、たくさんありました。

自分が知らないことって、まだまだこんなにあるんだ。

 

思い知らされたし、登場人物の背景を知れば知るほど、

昔、祖母や曾祖母から聞いたり、

記憶の底にある自分自身のナニカを呼び起こす、

そんな不思議な感覚になったりして、

 

残したいけれど記憶から消えつつある大切なもの、

そんなものたちを必死で呼び起こそうとしている私がいます。

 

なれのはて

 

上手いタイトルだなと思います。

これだけの言葉に心を込め秘めた多くのものたち。

 

それを読み解こうとした私に、

最後にくれたものは、感動でした。

 

 

文中にあるたくさんの言葉に心動かされました。

 

『絶対の不在を認めることは、強烈な存在を感じさせる』

 

そのような言葉がありましたが、

私はそれを実感している今だからこそ、

この一文には心を鷲掴みにされたのかもしれない。

 

 

『自分でやると失敗しても誰かのせいにしない。

自分で責任を取るというのは、実は楽なこと』

 

ここでこのような一文をもってくるんだ。

これには感動させられました。

この意味に気付いたとき、守谷京斗が何を思ったか。

 

 

 

『なれのはて』

 

読み終えて、心が震えましたね。

 

すごいです。

 

 

加藤シゲアキ氏・・・おそるべし。

 

 

小説って、人それぞれ好みがあると思うんで、

感想を書いても滅多にお勧めってしないんですけど、

これは、お勧めです。