会社の飲み会の最中

ジャケットの右ポケットに入れたスマホが震えている🫨




見ると娘からの着信だ





席を離れて電話に出ると

泣きじゃくる娘の声





ピアノ教室の帰りに自転車で転んで大怪我をしたらしい





泣きすぎていて何を言っているかわからない

かなりやばそう





パパの方が帰るの早いはずだから、と

パパに電話すると





私が飲み会なのを忘れているようだった

いまから職場をでるという

わたしもパパもどちらも1時間はかかる距離






飲み会を抜け出して電車に乗る

乗り換えの待ち時間がもどかしい





傷はどの程度だろう

いまは転んだショックで正確に症状がわからないみたい

近くにいた人が助けてくれたらしく、派手に転んだらしい…

骨は大丈夫だろうか…

頭は…ヘルメットをしていなかったらしい…




電車が1秒でもはやく進んでくれないか

そればかりを祈る




ああ、よりによってこんな日にそばにいてあげられないなんて!

最近感じていた母親仕事をおろそかにしていた不安がこんなふうにあらわれるなんて





まだ小学生なのだ

朝も一人で家を出て鍵を閉め、

夕方も一人で帰ってすごす

数時間だけど、心細いにきまってる




毎日わたしが家に着くなり、

今日あったことを矢継ぎ早に話してくる

話したいんだろう、人と




寂しい思いをさせているよな、

それはわかっていた




こういうことがあると

とたんに積み上げていた鎧がくずれる

ああ、なんてかわいそうな娘

転んで痛い思いして帰っても

家に誰もいないなんて…!




そんなに寂しいことってあるだろうか

まだ小学生なのに




こんなときは心底、1時間の通勤時間を恨む。

早く、お願いだから早く!!





こうして自分の気持ちを吐いていないと

とんでもなくひどい怪我を想像してしまって

不安でおかしくなりそうなのだ




神様、お願いだから娘を守って!!

もうすぐ着くから

お願いだから!