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【北京=白石徹】中国人民解放軍の海軍首脳が二〇三〇年までに東太平洋に進出し、インド洋北部では艦艇の展開 を常態化させるという新目標を掲げ、準備を進めていることが十五日、明らかになった。中国軍は米太平洋艦隊に対抗する防衛ラインである第二列島線内の制海 権掌握に乗り出しており、二〇年までには同列島線を越えて東太平洋に向け漸進するよう求めている。

 海軍首脳が共産党指導部への提言としてまとめた戦略論文は、米国が「アジア太平洋重視」を打ち出して以来、周辺国による「中国封じ込め」が急速に 進んでいると分析。当面は「西太平洋やインド洋北部の広大な海域に進出するため、第一列島戦を突破する十分な海上作戦能力を築く」としている。

 さらに、習近平政権が唱える「海洋強国」建設に向けて(1)二〇年までに海軍の活動範囲を第二列島線を越えた東の海域に進め、北極海の資源探査に も乗り出す(2)三〇年までに海軍の常態活動の範囲を東太平洋に広げ、南米や北欧のほか、伝統的な友好国と「海上協力組織」を構築する-ことを目指すとし ている。

 第一列島線内には沖縄県の尖閣諸島、ベトナム、フィリピンと領有権を争う南シナ海が含まれる。海軍首脳は「海上での突発的な軍事衝突が局地戦争に 発展する危険性が高まっている」と報告。「(中国側が)一千キロの距離から(ミサイルで)攻撃を受ける場合もあり、中国近海を防御 するためにも遠海に出 て、積極的な作戦を実施 する必要がある」と主張 した。

 中国は昨年十一月、尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定した。第一列島線内の制海権を完全に掌握するためには空軍 の支援が必要で、制空権 も握る狙いがあったとされる。

 「海洋強国」建設の目的については、論文は「資源エネルギーを含む物流の90%は海運に頼り、海上ルートの安全確保が急務」「昨年、百五 十六の 国・地域に中国企業五千社が九百億ドル(約九兆二千億円)の直接投資をしており、海外の国民資産を守る必要も高まっている」などと、国益確保の意義を強調 した。