すべらない時を刻み続ける事うん10年
そして今宵も あの夜会が開かれる。
ベシャ〜る ベシャ〜れば ベシャ〜る時
未知と異次元の遭遇 Open The Door
1人の男のベシャりギャラクシー。
お笑い好きのシャドーボクシング
O'knockのすべらない話
ベシャりの精鋭O'knockの 入場!(cv:若本規夫)
--------------------《中略》--------------------
それでは一番手、決めましょう。
松本って出ましたけど、いてはらへんので代わりに僕が話をします。
【落ちるんちゃう?】
海外に行くん慣れてる人やったらたぶん分かると思うんですけど、空港降りた瞬間ってその土地に染み付いた独特の匂いがあるみたいで、例えばフランスならワインの匂いだったり、タイとかインドとかあっちら辺やと香草っぽい匂い、僕がこの前行ったニューヨークやとなんか知らんけどコーヒーと甘いバターみたいな匂いがしてたりするんですよ。
ちなみに海外の人が日本に来た時はソイソース、しょう油の匂いがするって聞いたことありますわ。なんでですかね、気にしたことはないんですけど、せんべいとか売ってたりするからですかね。日本で食べるもんにだいたいしょう油入ってるからとか、あるいは日本人の体臭がそもそもしょう油クサいんちゃうんかなぁとか。でもまぁ、あぁなるほどな、と納得はしますよね。
ここ最近の話で、中国にある四川ってとこに3泊4日でおかんと2人で行ってきたんですけど、皆さん知ってはります?知ってたら『はいはい』ってなると思いますけど、四川の空港(成都双流国際空港)降りたらね、っていうかタラップに出た瞬間からもうね、
めっちゃトウガラシの匂いするんですよ。
念のために今言うときますけど、この四川行ったって話にはね、
別に大したエピソードはありません。
強いて言うなら、うちのおかん、めっちゃ辛い食べ物大好きなんですけど、なんでか知らんけど麻婆豆腐はあまり好きとちゃうんですよ。
何しに「四川行くんや」っちゅう話です。
まぁ、カニと香草と米が入って真っ赤に煮えくりかえった1人用の鍋を汗だくになりつつもうまそうに食べてましたわ。
それは置いといて、今回とは別で、20年以上前の話なんですけどおかんと生まれて初めて2人で行った海外、香港旅行へ行く飛行機の中での話をしますね。
おかんはそれまでもちょこちょこ海外旅行へは友達とやら何とやらで行ってんのは知ってたんですけど、そのとき僕はハタチそこそこで初めての海外旅行やったんですよ。
やれパスポート作りーの、やれビザの申請しーの、やれクレジットカード作りーの。結構めんどくさがってもうたんで、まぁあらかたおかんが代わってやってくれたんですけど。
で、その時はおかんも初めての香港旅行って事でそれなりにハイテンションやったんです。
子供心に、なんか親のハイテンションな姿見るのって妙な気分になりますね。あの感情ってなんか上手いこと当てはまる日本語ないんでしょうか。
ほんで飛行機に乗ってバーッと飛び立ちまして、機内食の「ビーフオアチキン?」のCAの問いかけに対しておかんは若干食い気味に、
「ビーフビーフ、うちビーフ。アンタもビーフにしとき。ビーフ2つで。オーケー?ビーフ、ツーで!」
僕ね、初めての海外旅行で少しシャイな部分もあったせいかもしれないんですけど、あの時は結構恥ずかしかったのを今でも覚えてます。
でもそれなりに海外旅行に慣れてるおかんが一緒なのは心強い部分もあったっちゅーのも正直言ってありましたよ。
で、さぁいよいよ香港が近づいてきたぞ、ってなって、窓際に座ってた僕がとなりのおかんに、
「もう着きそうやな」
って言うたんです。
あ、そうそう、僕らが行った時はね、まだ香港に啓徳(カイタック)空港って旧国際空港があったんですけど、この空港、実はなかなかイかれてたんですよ。
今は閉港して別の場所に移ったんですけどこの啓徳空港、都心のすぐ脇にあったんですよ。
とりあえず東京で例えるなら、狛江三叉路らへんに管制塔がある感じ?砧公園くらいまで滑走路って感じ?めっちゃ近いと思いません?都庁のすぐ上数百メートル飛んでくるみたいなもんですよ。スカイツリーの先っちょ軽く当たるくらいの感じですよ。設計した奴アタマおかしいと思いません?
後々に調べたら、この空港に向かう飛行機のパイロットの緊張感、ハンパ無かったらしいですね。不時着したら悲惨な未来しかないですからね。そら、移転もしますわ。
話しは戻しまして、啓徳空港に近づいてきた訳なんですけど、けっこうな街並みの上で着陸に備えとけよ的なアナウンスが入ってきてね、言うても僕は初めての海外旅行やしそれが珍しいかどうかも分からんかったわけなんで、あまり不思議に思わんかっんです。
で、その時のおかんはというとなんとなく落ち着かん感じというか、自由を奪われたような妙な顔つきをしてたのは覚えてます。
窓際の人たちもみんな窓の外を見ながら、何となく色めき立つ様な空気を醸し出してたんですよ。なんとなくですけど。
ややあって、少し場が静かになったタイミングで、おかんはどうしても飲み込めなかった言葉をおもむろに吐き出したんです。
「これ、落ちてるんちゃう?」
場にピシッとした空気が張りつめた瞬間、伝わってきましたね。
おかん、天然なとこはあるけど真顔でこういう事言うタイプでは無かったのでさすがに僕も多少は不安になったんです。
そんな時、数席離れたおっちゃんが聞こえるように、
「ここはそういう空港やから心配せんでええって。さっき放送で言ってたやろ。これが普通って」
正直、アナウンスは聞きこぼしてたんで全く覚えてなかったんです。僕は内心、この時点でどっちを信じていいのか分からんかったんですけど、頭のどっかで楽観してるところもあって、あえておっちゃんの方を信じたんですよ、実の母の言い分聞き捨てて。「大丈夫やろ」と。「落ちへんやろ」と。
ほなね、おかんもね、イマイチ聞き分けのない息子に対して追撃かけてくるわけです。
「そんなん、乗ってる人安心させるためにウソついてるかもしれへんやん」
待って待って、いくらなんでも落ちる寸前やったらさすがに何かしらアナウンス入るって。
『乗客の皆さん、マヂごめんなさい』
くらいは言うんとちゃいますかね?
そっからおかんずっとソワソワしてるんです。
散歩の時間過ぎてるのに一向にテレビの前から動かん飼い主の周りでアピールする大型犬みたいになってるんです。
「落ちへん落ちへん、絶対落ちへん」
おっちゃんは焦るそぶりもなく平然としてるんですけど、ロクに根拠も無く『絶対』とか言う大人もあんまり信用出来へんし、
「あんた、もしもの時はしっかりせなあかんで」
って、おかんはなんかどっか行ってもうてる感じやし。大体『もしも』って何?今おかんが言うてる『もしも』は多分俺にも避けられへん大惨事についての『もしも』の話やろ?と。
ハイテンションのおかんもあんまし見たくなかったけど、テンパってるおかんもあんまし見たくないわ、と思いました。
これまでの人生で知ることのなかった新しい感情が生まれた貴重な瞬間でした。
ホンマこの気持ちを一言で表現出来る日本語、あるんやってら教えてほしいです。
このままほっとくのもアレやし、僕もおかんを落ち着かせなあかんわと思って、
「おかんがしっかりしぃや」
なだめようとしたけどおかんが返す刀で、
「このパターン。この前観たダイ・ハードと展開似てるわ。お母さんちゃんと覚えてるし。映画は助かってたけど実際は助からんかも知れへんやろ」
「映画かい!」
おそらく、周りにいた人たちもミリ単位も狂わず同じ言葉を頭に思い浮かべたと思います。
そもそもダイ・ハードでこんなシーンあったか?まぁ、ありそうっちゃありそうやけど。
どっちかってーと、
『SPEED』とか
『新幹線大爆破』とかとちゃいますかね。そんなこんなでやり取りがありましたものの、
その後何事も無く、無事に香港に到着して無事に旅行を楽しんで無事に帰国しました。
というお話でしたまる