今僕は実家に帰ってきている。
きっかけは妹が子供を産み、姪っ子に会いにいくためだ。8ヶ月ぶりに帰ってきた地元は代わり映えもせず、いつもどおり、ゆっくりと時を刻んでいた。
しかし、ぱっと見は変わらなく見えても、刻一刻と時間は過ぎていることを、祖母のお見舞いに行った時に強く実感した。
8ヶ月前に帰ったときはまだ実家におり、一緒に温泉に行くくらいには元気だったのだが、病室では耳が更に遠くなり記憶も少し薄れてきている祖母の姿があった。幸い僕のことは覚えていてくれたが、肩で息をしている祖母を見て、人間は時には逆らえぬものだと、絶望感に駆られた。
そして実家に帰ると今度は赤ん坊を抱えた妹が立っていた。生まれて半年の乳児だ。そして、自分の孫に愛情を注ぐ父や母を見て、30年前は自分も同じように愛情を注いでくれていたのだろうかと、なんだか目頭が熱くなった。
まだ未婚で子供いない僕よりも先に結婚し、子供を産み育てている妹に先を越された感が、実家に帰る前は強かったのだが、そんな思いはどこへやら、気がつけば父と母がそれぞれ祖父、祖母へとなっていたことへの感動のほうが強くなっていた。そして、父と母の偉大さを改めて実感した。
そして、御歳89である祖母と、生後6ヶ月の姪っ子。30年前、僕が生まれたときは今の父と母の立場と同じところに祖母はいたのだ。なんとも言えない感情に揺さぶられた僕は一人、想いを過去に馳せていた。
僕は東京に住んでおり、仕事も平日休みで不規則なため、なかなか実家に帰る機会も少ないのだが、こうして帰ると様々な思い出が交錯したりと、そこにいるだけで過去を想える不思議な場所なのである。それは生まれ育った場所だからこその、唯一無二だからなんだろう。故郷とは、そういうものなのだろうと、募る想いに背中を押されながらこの文章を書いている。なんともセンチメンタルな日々だった。