今日もイチローのこと。

イチローのなにが凄いって、彼はもともと練習嫌いの人間だったってことだ。
学生時代にチームメイトだった友人達は口を揃えてそう証言する。
彼はもともと野球が好きで、センスも良かったけど、練習嫌いだったから
プロになる前はイチローよりも素晴らしい選手はたくさんいた。
決して鳴り物入りでプロ野球選手になったわけではない。

イチローはよくストイックな選手だと言われるが、そうでもない。
話をするとスラスラとけっこうよく喋る。
面白いし、人に好かれそうで、たぶん何をやっても、
そこそこ成功するようなタイプだと思う。
たまにいるでしょう?
何をやっても覚えが早くて、顔もまぁまぁで、
オール5とまではいかないけど、オール4は軽くクリアしちゃう人。

だけど、もちろん推測なのだけど、イチローはプロになると決めた時に
そういう「そこそこ」人生を捨て去ったのだと思う。
恐らく、オール4的な自分に心の中で苛立っていたのだと思う。
だからプロ野球選手という花形職業の中で最高にバリバリかっこいい選手に
なってやる、と決めたに違いないと勝手に思っているのだ。
そのためには、天性のセンスだけではだめだ。
プロの世界はそんなに甘くない。
イチローの目指すところは単に素晴らしい選手ということでなく、
最高にバリバリかっこいい選手だからだ。

そこでイチローは天性のセンスに「練習から生まれるセンス」を加える
ことにした(のだと思う)。
それは、繰り返し繰り返し練習し、自分の体の準備を整えるということ。
プレイ中に「体が勝手に反応する」とよく言うけれど、
それを「練習から生まれるセンス」と私は言いたい。
当たり前のような話だけど、そのことを何よりも誰よりも重要だと思っている。

ここまではね、まぁいいのよ。

本当に凄いのはここから。
以前、星野が(元オリックスの投手、最後のちょこっとだけ阪神。
現在「すぽると!」にて野球解説者として活躍中)イチローにインタビューをしたときに、
イチローがこんなことを言っていたのを見て、私は感嘆した。

「毎打席、リセットをする」

つまり、良いイメージも悪いイメージも何も持たないで
打席に立つんだ、と。
さっきの打席はこういう球をヒットしたとか、三振したとか
そういうことを考えないという。
スポーツ選手はイメージが大切だとよく言われるよね。
解説なんかでも調子のいい選手に対して、「いいイメージで打席に
立ってるんだと思いますよ」なんて言葉はよく聞く。
でも、イチローは違う。
イメージを持って打席に立つと、そのイメージからはずれた球が
打てなくなるって言うんだよ。

これはねぇ。ほんとスゴイですよ。ゴイスーですよ。
人間だから、体で覚えたはずのイメージでも頭で考えたイメージのほうが
強くなってしまうことがある。
だから、ただただひたすら自分が練習して準備してきたことにだけ
体を預けるためにリセットするんだと思う。
そうなると、調子のいいときのイチローには、バッテリーの配球なんて
まったく意味がないってことだ。

す、すげーーーー・・・・・・。
言うのは簡単だけど、本当にやるのは大変だ。
っていうか、誰もそんなこと言ったこと無いし、イチローにしか
ない発想だと思う。

同じインタビューでイチローはこんなことも言ってた。
「50歳なのにバリバリなの。それで、ものっすごいバリバリでまだやれるんだけど、惜しまれながら引退するの(笑)。」

どうやらイチローの考える最高にバリバリかっこいい選手ってのは、
こんな感じらしい(笑)。
イチローのスゴイ野球人生は、こういうちょっと無邪気でロック的な
発想に支えられてるんだねって思ったよ。