僕の高校の先輩で、とても有名なダンサーの人がいました。
その人が所属するダンスチームの名前は「BRONX」
1990年代、一世を風靡したダンスチームなので、
名前を知っている人は多いかもしれません。
その先輩が同級生を集めて作ったチーム「BRONX ROCKERS」で
文化祭のステージでショーを披露した時、あまりのカッコ良さに
メチャクチャ興味を持った僕は、ダンスを始めるようになりました。
始めは見た目のカッコ良さに惚れこんだミーハーな僕も、
次第にダンサーが持っている「魂(ソウル)」ってものに
魅かれていきました。
その当時、「BRONX」というダンスチームは
素人にも分かりやすいダンスでとても人気があったのですが、
その先輩が体育館でとったある行動に、とても感動を覚えたのです。
高校生くらいの時はクラスに1人くらいは
イジられキャラみたいなコがいるものです。
(まぁそのコ自身にも問題はあると思いますが。)
体育館でアクロバットの練習をしようという事になり、
何故かそのイジられキャラのMクンが、
先輩にバク転を教えてほしいと言い出しました。
当然、周りの連中はひやかします。
「お前、絶対やめとけって~(笑)」
「首の骨折って死んでまうぞ(笑)」
僕はその先輩がどういう対応をするかを黙って見ていました。
すると、周りの連中の言葉には耳を貸さず、
「もっと視点を後ろにもってくるとできるで。」
「怖がらんかったら絶対できるから。」
と、丁寧に教え始めました。
周りの連中は、Mクンの失敗を見て冷やかし続けます。
「はっはっはっは、頭から突っ込んでるやんけ~(笑)」
でも先輩は教え続けます。
するとMクンのバク転は、できないまでもカタチが整い始めました。
周りにいる連中も、次第に言葉の数が減り始めます。
そしてMクンのバク転がしっかりとカタチになった時、
周りの連中は完全に黙ってしまいました。
始まる前と後では、空気が一変してしまったのです。
僕はその光景を間近で見た時に、
「あぁ、だから先輩は人気があるのかもしれんな。」
そう思いました。
ダンスがうまいだけの人、同じように技術があるだけでは
人々の心をつかむ事はできません。
人に対する思いやり、そして実力。
この両方が揃っていて、はじめて人の心を打てるのだな、
と強くそう思いました。
あれから10年の月日が経ちました。
あの時の出来事は指導をする立場にたった今の
僕の基盤となっています。
ダンススタジオの管理人として仕事をしている今を
とても不思議に思いますが、
そういう気持ちを決して忘れずに仕事をしていきたいと思います。